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眼帯の少年とコロナビール
最近たまに来る、とあるお客さんが気になっている。
彼はおそらく20代前半、童顔でとてもかわいい顔をしている。高校生だと言われても驚きはしない。
私が彼を気になる理由はいくつかある。
まず、左目に眼帯をしていること。
少し前に来た時には、眼帯をせずに女の子と来ていたように思う。
しかし、最近はひとりで、さらに眼帯をして来るようになった。
なにかしらの病気なのかもしれない。
もしそうであったら申し訳ないのだが、彼が童顔であるがゆえに、どうしても中二病を患っているようにも見えてしまう。
そして退屈を紛らわすために妄想が膨らんでいく。
彼の隠している左目には、なにか闇の力が込められているのではないか、、
もしや、彼女との別れが左目を、、、
ほとんどのお客さんが生ビールを頼む中、彼は店に来ると、必ずコロナビールを頼む。
眼帯とコロナビール。それだけで少し変わった人だなという認識だった。
一本目を飲み終えると、二本、三本とコロナビールを飲み続け、数本飲むといつも会計をし、帰ってしまう。
そんな彼が来たある日、事件が起きてしまう。
いつものように彼はコロナビールを飲み干し、もう一本頼んだのだが、コロナビールの在庫が切れてしまっており、出すことができなかったのだ。
「すいません、もうコロナ切れちゃったんですよ。」
私がそう言うと彼は少し考えてこう言った。
「そうですか、、、。あ、大丈夫です!じゃあキリンビールの中瓶ください!」
そしてこうも付け加えた。
「グラスいらないです!」
、、、え? いや、どうやって飲むの?小瓶じゃないんだよ?
心の中でそう思いながら持っていくと、彼は当然のように、コロナビールを飲むかの如く、瓶のまま飲み始めた。
失礼ながら彼から見えないところでにやけてしまった。
闇の力、おそるべし。
彼は、若干重そうにキリンビールの中瓶をラッパ飲みし、遂には飲み干してしまった。
変わった人がいるもんだな、、、。
私はそんな彼を見て、ひそかに考えていることがある。
彼なら、その左目に隠す、なんらかの力でこのコロナ危機を吹き飛ばしてくれるのではないか。
拝啓 勇者コロナ様、当店では大量にコロナビールを仕入れておきました。
ですので、なにとぞ。
次のご来店を心よりお待ちしております。
文・写真:cab3ne_co