見出し画像

杯を乾す

様々な言葉が存在する世の中で、「乾杯」という言葉がコミュニケーションでは最強の言葉だと思う。

初めて会う人であっても、乾杯を宣言しあうだけで妙に親密になった気になってくる。

1(乾杯)=3(お元気ですか)くらいの効果はあると思う。
            ※()内は単位

これは日本に限ったことではない。

海外で、幾度となく現地の人と飲み交わしてきた。

この時、現地語の「乾杯」を知っているか否かは、その後の展開を大きく左右する。

例えば、中国語では「干杯(Gānbēi)」、クメール語では「Cholumoi」。

これを使うと、異様なくらいにその場が盛り上がってしまう。

確かに、海外から来た人が急に日本語で「乾杯!」、などと叫びだしたら否応なく盛り上がり、お酒を過剰に飲み干してしまいかねない。

一方で、海外での「乾杯」という言葉の力の威力には気を付ける必要もあろう。

あまりの威力に、「乾杯」と発した途端にその宴会の中心に引きずりこまれると同時に、大量の「乾杯」を投げかけられてしまうことにもなりかねないからだ。

過度に上昇した期待は恐ろしい。

あまりの「乾杯」の応酬に、もう飲めない!と拒否してしまったことがある。

そうすると、その言葉がきっかけでなぜか不穏な空気が漂い、現地人同士でなにやら会話が始まってしまった。

何を言っているのかまったくわからない私はどんどん不安な気持ちになってくる。

つれない奴と思われたのではないか、、

悪口を言われているのではないか、、

そうなると、こちらも文句を言いたくなってくる。

「いやいや、こちらとしては盛り上げるためにそちらの母国語で乾杯宣言を出したんですよ? つれない奴とはむしろ真反対のノリノリなやつやん!」

どうせ通じない日本語をつらつらと吐き出し、言いたいことを吐き出せたことに、少しだけ満足感を覚えつつ、酔った足で寝床へと戻った。

「乾杯」ってすごいコミュニケーションツール、ということを話したかったのにとてもマイナスなことを書いてしまった気がする。

基本的には、私にとって「乾杯」は人と親密になるために重要な役割を果たしてきた。

お酒の失敗と同様、「乾杯」にも失敗はつきものなのかもしれない。

失敗があったにも関わらず、「乾杯」を宣言し続けているということは、この言葉にはそれくらい魅力あるということなのだろう。

失敗を正当化しようとしているようでみっともないのでこの辺りでやめておこう。

そういえば、日本では「ドイツビールが最高峰」という風潮があるが、海外で日本のビールが好きという人もたくさんいる。

特にヨーロッパ人。

「キリン Good!!」とか「サッポロ Best!!」などと何度か話しかけられたことがある。

それを聞いて、

サッポロが一番? ラーメンの話、、??

などというしょうもないことを酔った頭で考えていた記憶がうっすらとある。

いいなと思ったら応援しよう!