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950am
「腕が上がらない ケンカなら負けていた」
少し時間を前後する
随分と後の話になる
合宿中、数百名が体育館狭しと円陣を組んで休憩タイムだった
自分ともう一人の職員Sに声がかかる
その中央に立たされた
職員になって数ヶ月、御披露目みたいなものだと思った。
先生に道場生が2名指名される
まだ色帯だ、しかしガッチリしていた。
面構えもよかった
地元ではごんたくれとして有名な奴らだったらしい
もう一人の職員Sも
ウェイトが好きで よくやっていたが それよりは大きい、
四国の大学生で先生の評価も高かった
まずはSから
Sも自信があったのだろう
が、始めの合図と共に一気にもっていかれ押されてしまう
二度目の立ち合い
同じく押され、その上指が目に入り
そのままうずくまってしまい、先生から「何やってんだ 」の叱責が飛ぶ
それでも膝をついて目を押さえたまま。
気持ちは分からんでもないが、それは不味いだろと思った矢先、
気の入った声で自分の名が呼ばれた。
幾分感情の強さを感じる、やはりな。
確かに当たりは強い、
が 動けなくはない
腕を取りにいくが道衣がパンパンで掴めない
何度となく同じ形になっていく、
先生から「やめ!」の声がかかった
後で周りから聞くと
青あざで変色した腕を見せ、腕が上がらない
ケンカなら負けていた。と言っていたと言う
謙虚な言葉 頭が下がる思いがした
気が付くとSが見当たらない
断りなく病院に言ったのだ
大学生の言動を思い起こすと
職員の癖にと腹立たしさと 情けなさがわいてくる