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「輝き」という名の強い個性:ドクター・スリープ

トレインスポッティングはまだ観ていないけれど、ユアン・マクレガーが好きなんです。
何をきっかけにユアンを好きになったかは覚えていないけれど、まだあの、チャームポイントのほくろが健在だった頃から好きだったと思う。

だから公開当初から気になってはいたのだ。
けれど、シャイニングの続編という謳い文句には惹かれるものの、トレーラーを観た感じ、面白そうだとは思えなかった。

話はダニーとその母親が例の惨劇から生き延びた後から始まる。
ホテルは閉鎖されたものの、そこに巣食っていた亡霊たちはダニーの周りに出現しては、彼の力「シャイニング」を貪ろうとする。その亡霊の中でも、良心的なディック・ハロランはダニーに悪き亡霊たちを封じる方法を授ける。
それから数十年後、強力なシャイニングの能力を封じるために、酒に溺れて自堕落な生活をしていたダニーは、心機一転するため、ニューハンプシャーへ移り住む。
そこでホスピスの職を得たダニーはシャイニングの力を使って、亡くなる直前の患者のケアをするようになり、「ドクター・スリープ」というニックネームを付けられる。
また、ニューハンプシャーに移り住んだ頃から、強力なシャイニングの能力を持つアブラという女の子とテレパシーで短いやりとりをしていた。
ある日、アブラから、シャイニングを持った男の子が殺されるシーンを見たというレテパシーが入り、そこで二人は能力者である子供を狙う、古からの組織があることを知る。
殺人現場を覗き見たことで、その組織もまたアブラの強力な能力に気づき、彼女を殺そうと動き出す。

正直なところ、面白いとはあまり思わなかった。
どうしても昔見た、「ミス・ペディグリンと奇妙なこどもたち」という映画を彷彿とさせる内容だったからだ。
書籍的にはドクター・スリープの方が先に出版されているので、源はスティーブン・キングと言えるのかもしれない。

ただ、キューブリックのシャイニングの要素も引き継いでいる部分もあり、後半はその要素を取り入れつつ、ドクター・スリープver.の演出もあったりと面白かったとは思う。
何度見ても思うけれど、やはり、あのバスルームからどうなっているのか分からないような顔と体を覗かせている、腐った老婆のシーンは恐ろしい。

書籍が原作の映画などを見ていて時折思うのは、原作ではどのように描かれているのだろうということ。

映画とは大衆向けの娯楽であり、エンターテイメントにしかならない。
ドキュメンタリー映画なんて、そうそう大きな映画館では上映されないし、話題にあげるのも難しかったりする。
実話ベースでもやはり、脚色されてエンタメ性が誇張される。

ドクター・スリープも見ていてそうなのではないのかと感じた。
どのシーンでそう感じたのかは定かではないけれど、でもきっと、原作ではもっと深く掘り下げたストーリー展開なのではないだろうかと思ったのだ。

それはもしかしたら、ホラーの巨匠、スティーブン・キングの作品がこんな子供向けエンタメなはずがないという想いから派生したのかもしれない。
あるいは、個人的には名作だと思っているキューブリックのシャイニングが作者にとっては駄作で、ドクター・スリープの方が良作というのは、原作の取り入れ方の違いがあるからなのかもしれないと思ったからかも。

けれど1つ、聞いていて素敵だなと思ったのは、シャイニングという言葉だった。
映画のイメージが強い言葉なのだけれど、物語の中では、幾度となく能力のことをいうのに使っていた単語だった。

"We can use the shining..."

そんな言葉から始まる台詞があった気がした。
直訳したら「輝きを使って...」っていう意味になるのだけれど、「普通」と異なる能力を「輝き」という言葉である「シャイニング」と名付けているのが、とても肯定的で素敵だったのだ。

この映画は、奥行きがありそうだけれど、エンタメという巨壁に邪魔され、あと一歩踏み込めない感覚がした。
だからそのあと一歩を踏み込むために、最近はシャイニングを原書で読み始めたのだった。

おしまい

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あきる
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