戦略ファームの面接官が面接時に意識する「見極めポイント」とは?
今や戦略コンサルティングファームは就職先として大変人気な業界です。新卒・中途問わず応募者は高い倍率を潜り抜けなければなりません。
一方、ファーム側にとっては、膨大な応募者の中から候補者を厳選しなければならないため、人材を適切に見極めることが企業繁栄のポイントとなっています。そこで本記事では、コンサルティングファームにおける中途採用プロセスや面接時の「見極めポイント」についてお話します。
既にコンサルタントの方(特に面接担当者)は勿論、コンサル業界を志望されている方はぜひ最後までご覧になってください。
戦略コンサルティングファームの面接官
戦略ファームでは、一定以上のポジションに就くとプロジェクトの仕事に加えてファーム運営における仕事の一部を担うようになります。面接もその一部の仕事に含まれるため、誰でも面接官になる可能性があります。面接に関しては、シニアメンバー含め複数人が面接に関わることで応募者を多面的に見極めます。
当然の事ですが、ファーム側は採用に至った全ての人材に入社後コンサルタントとして活躍してほしいと考えています。そのため、採用活動における応募者の見極めが大変重要となります。実際の面接時には、入社後に活躍している人材の特徴・共通項を念頭に置きつつそれに合致するかという観点で応募者を見極めることがポイントです。
以下では、具体的に戦略コンサルタントとして活躍する人の特徴とその特徴を応募者が持ち合わせているかを見極める方法をお話します。
戦略コンサルタントとして活躍する人材の特徴(見極めポイント)
1.高度な地頭力
コンサルタントとして持つべき素養の最たるものが論理的思考力ですが、この論理的思考力と同様に頻繁に使われるキーワードが「地頭力」です。
では「地頭力」とは何でしょうか。あえて定義づけるとすれば、「これまでの経験や知識だけに囚われず物事を順序だてて考え(論理的思考力が必要)そのプロセスを整理し誰もが納得できる答えを導き出す能力」です。つまり、コンサルタントとして活躍するためには、論理的思考力が培われていることは大前提のうえで地頭力が必要となります。
そして、前述した地頭力の意味「これまでの経験や知識だけに囚われず、物事を順序だてて考え(論理的思考力が必要)そのプロセスを整理し誰もが納得できる答えを導き出す能力」から、地頭力の構成要素として「論理的思考力」の他に「思考スピード」「思考力」の3つが浮かび上がります。論理的思考に配慮した上で「思考スピード」を早めるほど「思考力」は深くなります。例えば、思考の回転速度が早い人は理解力並びに情報処理能力が高いのであらゆる情報を網羅的に把握することが得意です。そのため「思考力」においても優位性を発揮しやすくなり、誰もが納得するような回答まで落とし込むことができるのです。つまり、「論理的思考力」「思考スピード」「思考力」これら3つを重点的に見極めることが、応募者の地頭力を的確に見極める際のポイントとなります。
※「思考力」とは思考を重ねて深める力を指し、「思考スピード」とはインプット、プロセッシング、アウトプットの3つのサイクルにおける回転速度を指します。
地頭力の見極め方
地頭力を確認する手段として、戦略ファームの面接では「ケースディスカッション」が用いられます。ご存じの方が殆どかと思いますが、馴染みがない方もいらっしゃると思うので念のため簡単に説明します。
ケースディスカッションとは、面接官が面接の場で何らかのお題を出し、応募者の回答から地頭力をチェックするものです。出題するお題は多岐にわたりますが、以下のようなお題が出題されます。
・東京都のマンホールの数を試算してください
・アイスの市場規模を試算してください
・A店の売り上げ拡大策を考えてください
上記のようなお題を応募者は5分~10分ほどの時間で考え回答します。答えの正誤を重視するというよりは、「ロジックや思考プロセスが妥当か」「大まか答えに近そうか」といった点を重点的に評価し地頭力を図ります。
2.協調性がある
コンサルティングの仕事はチームで行うため、プロジェクトを完遂させるためには協調性が欠かせません。一人前のコンサルタントとして個人でバリューを発揮することを前提にチームとして成果を発揮することが求められます。
協調性の見極め方
「協調性」と一口に言うと単に人間関係を良好に取り持つコミュニケーションと捉えがちですが、コンサルタントに求められる協調性とは以下のような項目を達成することのできるコミュニケーションのあり方を指します。
・相手の意見を正確に理解し、整理する
・相手に齟齬なく自分の意見を伝えること
・単に互いが気持ちの良いやり取りでなく、時には反対意見を伝え、更により良い物を生み出す
・自分の意見に固執せず、相手の意見を受け入れる
上記項目を達成するコミュニケーションの特性を窺える質問を応募者に投げかけ、協調性を見極めます。
例えば、ケースディスカッションの際に「○○という意見を持つ人居ますが、それについてどう考えますか」といった異なる意見をぶつけることで、指摘や異なる意見の掲示に対してどのような反応をするか、そしてどのように相手に伝えるかを見ることができます。
3.行動力・度胸がある
戦略コンサルタントの仕事は、あらゆる手段で情報を稼がねばならないため行動力が必要です。筋の良い情報を収集するには要点を掴み効率良く情報を収集することも重要ですが、それ以上にあらゆる情報源に対してフットワーク軽く動くことが極めて重要となります。
また行動力の他に、度胸が多くの場面で求められます。例えばクライアントとの意見が対立した場合などが該当します。そのような場合では、客観的な視点のもと自身の意見が正しいと考えているのであればしっかりと主張しなければななりません。したがって、面接官はこれらアクションを実行できそうな行動力と度胸のある人材を高く評価するのです。
行動力・度胸の見極め方
行動力や度胸の有無における見極めは、プライベートの行動を問う質問で行うことが効果的です。例えば「仕事以外のプライベートで取り組んでいることはありますか?」「大学時代に学業以外で打ち込んだことは何ですか?」などです。これら質問が有効な背景としては、中途採用面接において前職での業績及びそのプロセスについての質問が頻出されるためです。応募者は上記の質問について答えを準備してくるため、応募者本来の姿が見えにくくなります。そのため、プライベートについての想定外な質問をすることで、応募者の突発的なアクションを伺うことができます。
ただし、行動について質問する際にはその行動の目的などを分析する必要があるので、必ず「実際になぜその行動を起こしたのか」を深堀するようにしましょう。
4.コンサルタントとしての強い熱意
戦略コンサルタントとして結果を出す人材は、コンサルティングに対する熱意を強く持っています。入社時点では、高いポテンシャルを買われて期待されていた人材が、自身のモチベーションをキープできずわずか1年程で退社に至るケースが多くあります。一方で、それほど注目されていなかった人材が強い熱意のもと素晴らしい成長を遂げるケースもよく見られます。
そのため面接時には、コンサルタントに求められるスキル面以外にモチベーションのありどころが明確かを判断できる質問を投げることが重要です。具体的には、「自身のキャリアプランの中で戦略コンサルタントになることをどう位置付けるのか」を応募者が深く考えているかを見極めることがポイントとなります。さらに、具体的にどの仕事をすることが自身のステップアップに繋がると考えているかを聞き出すことで志望度の強さやコンサルティング業務に対する熱意を確認すると良いでしょう。
面接官が面接中に心得ていること
・応募者の普段の姿を引き出す
面接官の職務は応募者が自社とマッチするか見極めることですが、応募者の本来の姿を引き出せないようでは正確な見極めができかねます。
面接当日の応募者は、理想とする人物像に近づけている状況で面接会場に赴いています。また、想定される質問の回答は既にほとんど準備しているでしょう。そこでいかに応募者の普段の姿を引き出し、本質的に人物像を捉えられることができるかは面接官の腕の見せ所です。
・深堀をする
エントリーシート提出時の段階と実際の面接時での正確や能力に相違が見られる場合には、「なぜ?」を繰り返すことで、応募者をより本質的に見極めることができます。また、過去の実績があり優秀と思われる応募者の場合でも、思考を捉えるために実績を残すことができた要因やモチベーションなどを深堀することが重要です。表面的にでなく丁寧に応募者と向き合うことで入社後のミスマッチを減らすようにしましょう。
・魅力付けをする
面接官の役割は応募者を見極めるだけでなく、応募者に自社で「仕事をしたい」と強く思ってもらえるよう面接を行うことが重要です。自社がどんな会社なのか理解をしてもらい、かつ今回応募する職種が魅力的であるという動機付けをしていかなければ実際に応募者が転職に向けた一歩を踏む出すことがなかなか難しくなります。
入社後もミスマッチを防ぐためには、良い側面だけでなく応募者にとって離職に繋がりそうな側面についても話し理解してもらうことも大切です。そのうえで応募者の入社意欲を確認するようにましょう。もしその段階で迷いが生じる応募者がいれば、プラスアルファで動機付けをしていくことも面接官の大切な役割です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
面接官は応募者の能力や人柄を見極めねばならない難しい役割を担います。慣れないうちは、自分の質問の意図を候補者への質問に反映できず想定外の解答をされてしまい戸惑ってしまうことも多くあると思いますが、経験を重ねていくうちに技量は上がってくものです。ぜひ今回ご紹介した4つの観点で応募者をチェックしていただけると良いかと思います。
日常業務だけでも忙しい中、面接官の依頼をされると断りたくなることもあると思いますが、良い機会と捉えてできるだけ面接官を引き受けてみることをお薦めします。面接で応募者の本音を引き出すことができる力は日常業務でクライアントの本音を引き出す力にも繋がるはずです。