コンサルティングファーム出身者のキャリアパスとは?元戦略コンサルタントによる考察
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企業の経営企画や事業戦略の立案、ITシステムの導入など、コンサルティングファームでは多様な案件を抱えています。そこで働くコンサルタントが習得できるスキルは、高い分析力や俯瞰的な視点、事業推進力など、様々なものが挙げられます。
そのため、コンサルティングファーム出身者のキャリアパスも広範にわたります。さらに、コンサルティングファームといっても、戦略系や総合系、シンクタンク系、業界特化系など、複数に分けられ、主軸とする案件もそれぞれ異なります。したがって、属していたファームによっても考えられる転職先が左右されるといえるでしょう。
今回は、コンサルタントの転職後の多様なキャリアに関して言及・考察していきます。
戦略系コンサルタントのキャリアパスとは?
まずは、マッキンゼー・アンド・カンパニーやBCG、ベイン・アンド・カンパニー、A.T.カーニーなどに代表される、戦略系コンサルティングファーム(以下「戦コン」)出身者のキャリアについて言及します。
①事業企画
戦コン出身者の転職後のキャリアとして、「事業企画」に携わるケースが最も多く見受けられます。転職者の半数以上が選択するキャリアといっても過言ではないでしょう。具体的な転職先として、以下が挙げられます。
・別のコンサルティングファーム
・事業会社
・上場前後のベンチャー企業
・大手外資系メーカー
・大手日系メーカー
戦コンにおける代表的な案件として、中長期経営計画が挙げられます。3~5年程度、同一の案件に従事した結果、クライアント企業が属する業界に特化した、または強みのあるファームへの転職を図るケースがみられます。それに加え、単純に自身が興味のある業界に強いファームへ転職するケースもしばしばみられます。大枠の業務内容を変えることなく、給与水準が大幅に下がるリスクも低いことから、同業界でのキャリアチェンジは戦コン出身者の代表的なキャリアパスの1つであるといえるでしょう。
反対に、コンサルタントとしての観点から、戦略策定に長期間従事した結果、自身がプレイヤーとなり、経営や事業運営に携わりたいと考えるようになる人も少なくありません。そのため、コンサルタントから、クライアントである事業会社への転職をするケースも頻繁にみられます。また、事業会社だけでなく、上場前後のベンチャー企業へ転職して、役員や社長をはじめとした幹部や事業部長、営業部長などに就任する道もあります。コンサルタントとしての事業経営や戦略策定に関するノウハウを有している点が大きな強みとなり、より多角的な視野をもつ即戦力人材として評価されます。携わることのできる業務範囲は広く、代表的なものとして、経営環境の分析や目標設定、事業戦略の立案、運営などが挙げられるでしょう。
また、事業会社だけでなく、外資系消費財メーカーや外資系コングロマリット企業、外資系IT企業にて、部門マネージャーや経営企画部門に従事するケースもあります。これまでは、コンサルファームからメーカー企業へのキャリアチェンジを行う場合、「より積極的に中途採用を行なっている」「年収水準低下のリスクが低い」「世界規模でネームバリューがある」「ジョブローテーションがなく、希望職種でのキャリア形成がしやすい」などの要因から、比較的外資系企業を選ばれる方が多い傾向にありました。しかしながら、日系メーカーのIT化への注力や、海外進出などを通して、事業拡大を図るようになったということから、最近では完成車や製薬をはじめとした、日系大手メーカーの経営企画や事業立案などのポジションへ転職するケースも見受けられるようになってきました。
②金融系専門領域
戦コン出身者のキャリアチェンジにおいて、事業企画に続いて多く見受けられるものは、投資銀行やPE、VC、などをはじめとした金融系の専門領域です。上述の通り、コンサルタントとしてこれらの業界に携わるべく、同業界での転職を行う方も多いですが、業界を変えて事業者として従事する方も一定数います。
具体的な転職先として、以下が挙げられます。
・投資銀行、外資系投資銀行
・FAS
・監査法人
・税理士法人
・PEファンド
・VC
・バイアウトファンド
・外資系企業のファイナンシャルアナリスト
戦コンから投資銀行へのキャリアチェンジは、比較的若手のコンサルタントが第二新卒として入社するケースが大半でしょう。というのも、投資銀行では、金融に関する多くの専門知識が求められるため、コンサルタントとしてのスキルは、他の道と比較してもそこまで重要視されないことが理由として挙げられます。
また、外資系投資銀行に加えて、Big4(KPMGやEYTAS、デロイト、PwCアドバイザリー)でのFAS事業への転職を目指す方も少なくありません。近年増加傾向にあるM&A案件ですが、戦コンにおけるメイン業務は、経営や事業戦略の立案であるため、資金調達など、より具体的なアクションを取る機会は頻繁にはありません。そのため、M&A等で発生する、財務面での業務により特化して従事したい方が目指すべき道として、FASへのキャリアチェンジが挙げられるでしょう。
PEファンドやVCへの転職に関しても、外資系投資銀行へのキャリアチェンジと同様のことがいえるでしょう。とくに、難易度の高いPEファンドへの転職を狙う場合には、戦コンファームにおける事業DDやバリューアップ案件での経験が有利にはたらきます。コンサルタントとしての経験を積みながら、金融領域における専門的なノウハウ、MBAなどを取得することで、PEファンドへの転職がグッと近づきます。
PEファンドの中でもとくに、バイアウトファンドへ転職するケースでは、戦コンファームでのマネージャークラス以上の経験がある方が多くみられます。バイアウトファンドでは、案件開拓から投資実行、そして投資後の合意形成など、業務範囲が広いため、コンサルタントとしての経験値が高い人が求められます。そのため、マネージャー以上のクラスの方で、事業DDや中計など、幅広い領域で経験を積んだ方の転職先として選ばれることが多いです。ただし、実際にファンドへ入社した後も、M&Aや財務など、ファイナンスの中でも専門性の高い領域に関する知識を主体的にキャッチアップしていくことが求められます。
PEファンドやバイアウトファンドなど、異業界への転職後は、在籍者と同じ土俵に立つまでに、一定の時間を要します。
そのため、金融に関する専門知識やMBAの習得だけでなく、転職における明確な目的をご自身の中で設定する必要があるでしょう。
③専門領域特化
戦コン出身者の中には、投資や財務をはじめとした金融における専門領域以外のプロフェッショナルの道を選択される方も少なからず見受けられます。具体的な転職先は以下の通りです。
・デジタル
・人事、組織
・ヘルスケア
戦コンにおけるクライアント業務の中で、クライアント企業の特定の事業戦略立案などに従事した結果、外資・日系問わずメーカーの事業部長などへのキャリアチェンジを図る方もいらっしゃいます。コンサルタントとして身につけた俯瞰的な視点やマネジメントスキルと、業界に精通した知識を掛け合わせることで、ご自身の興味のある領域にて高いパフォーマンスを発揮することができるでしょう。
(戦コン出身者のキャリアパス・まとめ)
以上からもわかるように、戦コン出身者のキャリアパスは多岐にわたります。事業立案や経営計画策定など、戦コンファームで培った知見を活用して、事業経営や推進をはじめとした事業に引き続き携わるケースがほとんどです。
ただし、投資銀行やPEファンド、その他専門領域でご活躍されている方も一定数いらっしゃるように、より専門性の高い領域への転職を目指すケースも見受けられます。どちらにせよ、戦コンファーム所属時に担当した案件により、その後のキャリアが大きく左右されることは間違いありません。
コンサルタントとしてのスキルに加え、語学やMBA、その他の資格などを積極的に習得することで、幅広い領域でのキャリアアップが可能になります。
総合系ファーム出身のコンサルタントのキャリアパス
つづいて、デロイトやアクセンチュア、PwCコンサルティング、ベイカレント、アビームなどに代表される総合系コンサルティングファーム出身者のキャリアパスに関して言及していきます。
総合系コンサルティングファーム(以下「総コン」)は、幅広い領域の案件を抱え、近年ではデジタルトランスフォーメション(DX )の流行により、とくに急成長を遂げています。総コンファームの特徴の1つとして、クライアント企業の各階層に向けたワンストップのコンサルティングが可能な点が挙げられます。ファームとしては、1つのプロジェクト全体を俯瞰的に見ることができます。そんな総コン出身者に多くみられる転職先は以下の通りです。
・外資系コングロマリット企業
・外資系メーカー
・事業会社
・ベンチャー企業
・戦コンファーム
・各社IT部門
コンサルファーム出身者に人気な転職先として、外資系企業が挙げられます。とくに、外資系コングロマリット企業やメーカー企業では、経営企画やマーケティング部門への転職が目立ちます。総コンファームで培った、プロジェクトに対する俯瞰的な視点や、事業推進力を活かすことができるという点が要因として挙げられます。
より事業推進に注力したい方、ご自身がプレイヤーとしてプロジェクトを動かしていきたい方の場合、事業会社やベンチャー企業へ転職するケースも多くみられます。なかでも、これらの企業にてプロジェクトマネージャー(PM)としてキャリア形成を行うケースがほとんどです。コンサルタントとしての俯瞰的な視点や事業推進力に加え、業界に精通した知識が重宝されます。
ベンチャー企業、とくに上場前後であれば、経営陣として企業経営に携わることも可能です。コンサルティングファームでのあらゆる経験を活かし、比較的若手のコンサル出身者の活躍もみられます。事業推進者として、企業そして社会の課題解決に従事できるというインパクトの大きさが特徴として挙げられるでしょう。
また、コンサルタントとして事業戦略立案や経営企画に従事したいという方で、戦コンファームへ転職するケースも少なくありません。ITコンサルなど、大きなプロジェクトの一部分に加担するケースが多い総コンファームと比較して、戦コンファームでは、企業の経営に関する課題により主体的にアプローチすることが可能です。また、少数精鋭である戦コンファームでは、コンサルタント一人一人がより幅広い範囲の業務を経験することもできます。そのため、戦略コンサルタントとして、より経験値を積みたい方にとって、戦コンファームへの転職がおすすめできるでしょう。
また、総コンファームでのITコンサルタントとしての経験を活かし、ITのより専門領域に特化したキャリアチェンジを行うケースもみられます。新卒で総コンファームに入社すると、IT部門へ配属され、プログラミングの習得からはじめ、ITシステム導入など、徐々にプロジェクトへ参入し、ITコンサルタントとしてのキャリアを積んでいきます。これらの経験で培った、ITに関する知識とコンサルタントとしての視点をもって、日系大手・外資系メーカーでのIT部門などへの転職を図ることが可能です。
ただし、ITコンサルタントとしての最低限の知識は有しているものの、システム設計、開発、実装など、ITスキルの欠如がみられることも少なくありません。そのため、IT部門であっても、システム企画や構想、ITマネージャーなど、IT領域における事業推進者としてキャリアを形成することがほとんどです。
以上からわかるように、総コン出身者の代表的なキャリアパスは、PMをはじめとした事業推進が挙げられます。様々な分野での活躍が見込まれる戦コン出身者と比較すると、キャリアの幅が狭いことが実態としていえるでしょう。
総コンファームでは、ファームとして幅広い案件に携わることができますが、一コンサルタントとして従事できる業務範囲は限られてしまっています。実際に、総コンファームでのITコンサルタントであれば、クライアント企業によって事業戦略やITベンダーは既に決定されていて、それに基づいて、コンサルタントとしてシステム・ベンダーの導入のみを実践するというケースも少なからず存在します。そのため、転職市場では、総コン出身者であれば事業推進というイメージが定着してしているといっても過言ではありません。
総コン出身者こそフリーランス
上述の通り、戦コン出身者と比較して、総コン出身者の転職先は限定的であるといえるでしょう。そこで、コンサルタントとして、ご自身の興味のある案件に従事するための手段として、「フリーランスコンサルタント」が挙げられます。
フリーランスとしての業務内容は、ファームに所属するコンサルタントと大差ありません。しかしながら、フリーランスコンサルタントであれば、クライアント企業の課題に対する幅広いアプローチや、専門領域への特化が可能になります。ご自身のスキル次第で、獲得できる案件の幅が広がる点も特徴として挙げられます。
フリーランスコンサルタントを目指すうえで必要なこと
コンサルティングファームより独立し、フリーランスとしてのキャリアを形成するうえで必要なこととして以下が挙げられます。
コンサルティングファームより独立し、フリーランスとしてのキャリアを形成するうえで必要なこととして以下が挙げられます。
①高い専門性やスキル
フリーランスコンサルタントとして案件を獲得するために、自身のブランディングを行う必要があります。というのも、案件獲得を図るうえで、他のフリーランスコンサルタントに加え、ブランド力の高い大手コンサルファームもライバルとして挙げられるからです。
そのため、特定の専門領域に関する豊富な知識や、コンサルタントとしての高い分析力は、競合性の高い市場にて、案件を獲得するための必須条件であるといえるでしょう。
②高いオンラインリテラシー
フリーランス案件を獲得するうえで、オンラインリテラシーを高めることも絶対条件となります。というのも、オンラインツールを使いこなせることで、クライアント企業の幅広いニーズに応じることが可能になります。さらに、フリーランス案件を確実に獲得するためには、クライアント企業が属する業界への深い知見が必要になります。そのため、常に徹底した情報収集を行う必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。コンサルファーム出身者のキャリアパスは、多岐にわたりますが、総コン出身者のみに着目すると、転職先は限定的になってしまいます。
そこで、出身ファームにかかわらず、ご自身の興味のある案件に、コンサルタントとしてアプローチする手段として、フリーランスコンサルタントが挙げられるでしょう。