Episode 018 「お弁当が”ゆで卵1つ”だった彼を見て、子供なりに感じた事」
子供とは実に純粋である。ある日、ぺニントンプライマリースクール(Episode014参照)のクラスの友達に「シンゴはブルースリーの真似ができるか」と訊かれた。どうやらテレビで放映されたブルースリーの映画を見たのだとか。「シンゴはアジア人だからカンフーとかできるんでしょ」と、いう具合に。まるで、我々日本人が、黒人の人たち(しかも「黒人の人たち」と一言で言っても国も何十国とあり、大陸さえも異なる)に対し「リズム感はバッチリで、ダンスとか上手でしょ?」という先入観を持つ様に。彼らヨーロッパ人からみた我々アジア人は、香港でも韓国でも中国でも日本でも区別ができないのであろう。しかしながら、彼らを責める事は出来ない。仮に、今、目の前にスペイン人、ギリシャ人、イタリア人、ポルトガル人が並んでいて、容姿だけを頼りに、誰がどこの国の人なのかを間違えずに言い当てて下さい、というクイズがあったとしても、うまく正解を導き出すことができる自信はない。因みに、「シンゴは日本人だし、ブルースリーの真似ができるか」と訊いてきた彼に対し「先ず、ブルースリーはアジア人であるが日本人ではないよ」という事を丁寧に伝えたが、しっかり伝わっていたかどうかは定かではない。
ランチの時間になると、それぞれ各自サンドウィッチであったり、ホットドッグを売店から買ったりと様々だったが、私は母親に用意してもらっていたおにぎりを持って行っていた。もちろん、おにぎりの存在などオーストラリアにいる人々は知らず「その黒いの(海苔を指して)・・・何?!」となるわけだ。少なくとも、今から27年前の1997年はそうだった。その度に、「これはね、海苔だよ、海苔」と説明していた。尚、海苔という食べ物を言葉で説明されても、その味を連想できているとは限らない。おそらく、世界を見渡した時、海苔を食べない国の方が食べる国より遥かに多いと察する。ベトナム人のクラスメイトであるアン(そう、私のゲームボーイを盗もうとした(Episode014参照)彼である)という男の子は、ゆで卵のみをお昼ご飯として持ってきていた。ゆで卵を、一つか二つ、皮を剥いて、新聞紙に包まれた塩と胡椒を付けながら食べていた。なかなか渋いお昼ご飯である。それぞれの家庭にはそれぞれの事情があるのかと、子供ながらにそう思ったりした。非常に複雑な気持ちになったことを思い出す。
因みにマリンコ(Episode015参照)はホットドッグを毎日売店で購入していた。そのホットドッグが異様に美味しそうに見えて仕方がなかった。ただ、私は売店で食べ物を買うのができなかった。なぜなら「○○を下さい」というフレーズを英語で言えなかったからである。例えば、夏になると売店で氷アイスを買って子供たちは食べていたのが、そのアイスの名前が分からず、どうしても食べたかったのだが、買えなかったというそんな苦い思い出もある。もちろん、仮に、どうにかアイスの名前が分かったとしても、案の定、「(アイスの名前)をください」のフレーズが英語で言えないのである。このように、「言いたいけど、言えない、なら我慢しよう」という姿勢や考えが、子供ながらに定着してくるのである。果たしてこれが、良いのか悪いのかはわからない。しかし、我慢する力がついた、と前向きに捉える様にはしている。(尚、2024年、約27年ぶりにこのアイスの名前(ネットで調べて)が判明した。「Zooper Dooper」だ)
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