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自動運転レベル3の延長線上に、レベル4はない

今回は、システムのお話。自動運転レベルにまつわるお話をしようと思います。


自動運転のレベル分類

自動車業界で自動運転レベルの話をする場合は、SAE J3016の分類が用いられます。国土交通省の資料にまとまったものがあったので、拝借。

自動運転車両の呼称(国交省資料から抜粋)

2024年現在、CMなどで紹介されている自動運転は、レベル2のものがほとんどです。レベル3の車両は、ホンダのレジェンドが日本唯一です。レベル4は、実証実験としていくつかの場所で行なわれています。

自動運転レベル2と3の違いは、何かというと。運転操作の主体です。レベル2までは、運転者、つまりドライバーが主体です。なので、事故などの責任はドライバーにあります。レベル3では、自動運行装置、つまりシステムが主体になります。ここが大きな違いです。
ただし、レベル3では、システムの作動が困難な場合はドライバーに主体を移す段階です。ですので、ドライバーが常にドライバー座席についている必要があります。ドライバーなしで車両を運航することはできません。

レベル4になると、運転操作の主体は、完全にシステムになります。ドライバーはいなくて構いません。開発者視点だと「ドライバーがいなくても、車両は運行できなければならない」という段階になります。レベル4は限定領域のみで自動運行できれば良いですが、レベル5はすべての場所・状況において自動運行できるレベルということになります。
多くの自動車メーカーは、このレベル4を目指して開発を進めています。

レベル3の先がレベル4ではない理由

自動運転レベルの分類の説明が終わったところで、本題。なぜ、レベル3の先がレベル4ではないか。分類の説明で書いた「車両の運行にドライバーの存在が必要かどうか」が大きく関係します。
レベル3までは、「ドライバーがいる前提」です。なので、車両およびシステム開発者は、「車両またはシステムに何か問題が生じたら、ドライバーに任せればいい」という方針で設計をします。
しかし、レベル4では「ドライバーはいない前提」です。そのため、開発者は「車両やシステムに何か問題が生じても、システムでどうにかしなければならない」という方針で設計をする必要があります。
そう、レベル3とレベル4では、設計思想が完全に変わります。設計思想が変わるので、システム構成も変わります。ハードウェアやソフトウェアの実装の仕方が変わります。レベル3までで積み上げてきたことが完全に無駄になるわけではないですが、それまで積み上げた多くの知見があまり使えない状態になります。これが、レベル3の先にレベル4がない理由です。

レベル3の開発で考えたのに、レベル4では全く使われないものがある

レベル3では、「車両またはシステムに何か問題が生じたら、ドライバーに任せる」ことになります。ドライバーが待機系になるわけです。となると、ドライバーにどのように待機してもらいたいかを、自動運転車両が決めなければなりません。これを考えようとすると「自動操作中のドライバーの振る舞い」を分析して、どこまで許容できるかなどを決める必要があります。
実務でよく出てくるのは、「ドライバーは、ハンドルから手を放している」ですね。これはCMでも見かけますね。あとは「ドライバーは、目を開けているが、自動運行から目を離している」とか「ドライバーは、目を閉じている。ただし眠ってはいない」などがあります。
これらを分析しようとすると、人間工学的なお話になります。平均でどのくらいの時間、目を離すのかとか、目を閉じてから眠ってしまわない時間はどのくらいかとかが分かる必要があります。「ドライバーの振る舞い」をいろいろな状況をいろいろな観点から分析していく必要があります。

しかし。レベル4では「ドライバーがいない」前提になります。ということは。レベル3の開発で考えた「ドライバーの振る舞い」の情報が全く不要になります。なにせ、レベル4は、ドライバーがいない状態で自動運行するレベルですので。「ドライバーの振る舞い」の分析はとても手間がかかったにも関わらず、まったく使われなくなる。そう、「無駄な努力」になっちゃうのです…

レベル3をすっ飛ばして、レベル4の開発をしましょう

同僚がレベル3の開発に携わっているので、大きな声で言いにくいのですが。これが事実ですので、私は「レベル3をすっ飛ばして、レベル4の開発をしましょう」と言い続けております。上記の説明もするのですが、まだピンとくる人は少ないようで。
もう少し声高に言わないといけないかなぁ、と思っているのでNoteに書き残しておきます。

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