2050年の自動車産業を予想してみた
未来予想の続き
「2050年って、どうなっている?」で、2050年の状況を想像してみました。今回は、自動車産業に絞って、さらに予想をしてみようと思います。
2050年には、完全自動運転が実現していると予想してますので、その時の産業構造がどのようになっているかに、思いをはせてみます。
前提条件
前提条件として、完全自動運転が実現している状況を設定してみます。完全自動運転を実現するためには、車には高度なコンピューターが搭載されていますし、周辺状況を知るためのセンサーがたくさん付いているでしょう。自動車部品がたくさん付いているので、車両の価格はかなり高くなっているでしょう。そうすると、現在のように平均的な収入のユーザーが所有して使用するという形態は難しいでしょう。
完全自動運転ということは、車は無人で走ることができます。ということは、ユーザーが目的地に着いた後、車は目的地周辺の駐車場にいる必要はありません。前述の通り、車の所有が難しくなっていることを鑑みると、その車は、他のユーザーのところに行って、そのユーザーを目的地まで連れていくという利用形態になるでしょう。無人タクシーのイメージですね。
利用シーンは、以下のようになると思います。
ユーザーがアプリ等で配車を手配する。車がユーザ宅に向けて走り出す。
ユーザーが玄関に出て、到着している車に乗車する。
車が走り出し、目的地まで走行する。ユーザーは、移動の間、好きなことをしている。
車が目的地に到着する。ユーザーが降車する。
車が次のユーザー(または駐車場)に向かって走り出す。
車の台数は大幅に減っている
車は、1台の価格が高くなり、無人タクシーとしてシェアされて使われるようになっているので、販売台数そのものが少なくなっていると予想されます。現在の車は、1日に2時間使われると想定されています。乗用車であれば、職場などとの往復に使われているでしょうから、片道1時間×2という計算になります。1日の活動時間を、通勤(往復2時間)+勤務(8~9時間)+昼休憩その他(1時間)とすると、だいたい12時間と概算します。かなりざっくりした計算ですが、乗用車は現在の6分の1台あれば、職場などへの往復需要を満たせることになります。
2050年にはネットワーク環境も今より向上しているという予想をしていますので、在宅ワークも現在よりも快適かつやりやすくなっているとすると、通勤などの人の移動に必要な車は、さらに減っていることが予想されますね。ざっくり、乗用車は、現在の10分の1になっても不思議ではないでしょう。
商用車のニーズは別途あるでしょう。営業車であれば、無人タクシーがそのまま利用できるでしょう。通勤時間帯以外は、無人タクシーは営業車として利用されるでしょうから、乗用車に取り込まれていると考えられます。
物流用のトラックについては、需要は現在とそれほど変わらないものとします。ただし、人口が減少しているでしょうから、その分必要台数は減っていることでしょう。
2050年の自動車産業
さて、自動車産業の状況を予想してみます。
自動車の販売台数が大幅に減っているということは、生産工場の数は減っていることになります。現在は、各自動車メーカーが国内または海外に生産工場を持っていますが、集約されていることでしょう。半導体では、TSMCのように製造をメインにしている会社があります。生産・製造は集中させた方が効率も生産性もいいですから、自動車も同様になっているでしょう。
生産も、現在の大量生産ではなく、中量~少量生産になっているはずです。となると、モノづくりの仕方は「同じものを繰り返し作る」から「需要に合わせて必要なものを臨機応変に作る」形になっているでしょう。パソコンのように、ある程度のラインナップから選択して組み立てる形になっていることが予想されます。
車種展開も減っているでしょうから、設計を行なう自動車メーカーもいくつかのグループに統合されている可能性が高いでしょう。航空機のように、メジャーなのはボーイングとエアバスの2社とまではいかないでしょうが、全世界で数社になっているかもしれません。
生産に必要な人数も、設計に必要な人数も、現在よりかなり少なくなっているでしょう。現在の自動車産業は、多くの雇用機会を生み出していますが、徐々に雇用が減っていくので、他産業への人材の移転がこれからの課題になりますね。現時点でも、自動車メーカーが工場閉鎖や人員削減を打ち出していますので、その流れが今後も続くと想定しておく方が良さそうです。
こう考えていくと、自動車産業の構造は、現在の航空機産業のようになっている、というかならざるを得ないでしょう。現在の航空機産業では、知識やスキルの移転がうまくいかずに不具合が出るというような状況になっています。となると、2050年の自動車産業も同じ課題に直面している可能性があります。
まとめ
現在の自動車産業は、売上高や雇用の面で経済の中心的な産業です。しかし、2050年では、雇用の面では現在よりもかなり小さくなっていることでしょう。売上高については、現在の販売メインからサブスクリプションのようなサービスメインにシフトしていくことで、ある程度は維持されているか、場合によっては今以上になっているかもしれません。
産業の在り方が、これからドラスティックに変わっていくことになるので、変化に適用できるかどうかが、生き残れるかどうかにかかわってくるといえるでしょう。