目まぐるしい愛と美と醜悪さ
優しさって何だろうか。他者をありのまま認めるってどういうことなのだろうか。
強固な殻で自分を覆っても、より強力なものが次々と襲ってくる。考えている暇などない。
アカデミー賞受賞で話題の映画「エブリシング・エブリウエア・オールアットワンス」を観た。巷ではエブエブと略すらしい。
目まぐるしい展開
まず思ったのは、とにかく情報量が多く展開が早いということ。主人公のエブリンはADHD気味でいつも何かに追われているような生活を送っている。そのような心が疲弊するような生活は、彼女が過去に選択した一つ一つの決断によって災いとして降りかかっている。とはいえ、それら一つ一つの決断が間違いであったかどうかなど誰にもわからないし判断もつかない。いつか幸せになれば良いと考える人もいれば、極端な話、人生が終わる時に幸せであったと感じられれば良いと考える人、今が大事であって現在の状態で幸せを感じているかどうかに価値観の重きを置いている人もいる。
ADHD的な目まぐるしい変化が起きているのは現実の社会にもあてはまる。この映画のコンセプトを社会に置き換えて考えることもできると思う。社会の姿をわかりやすく易しい言葉に置き換えて納得することを求める人もいる一方で、社会の複雑性をあるがまま複雑に理解しなければならないと考える人もいる。でも、結局のところ大事なのは優しさやユーモアだったりもする。
中学生レベルの下ネタやジョークに思考がストップしてしまう人もいるかもしれないが、多面的なコンセプトで描かれる本作を様々な感じ方で楽しめれば良いのではないでしょうか。
とか抽象的なことばかり書いていて何だかわからなくなってきたが、とりあえず観ることをおすすめします。
あと、言うまでもなくキャストが素晴らしい。ここまでの満足感を覚える映画に出会えたことは純粋に嬉しい。今後も2020年代を象徴する映画として評価され続けるのではないかと思う。