静岡の空中に描かれるピカソ Creative Dandiインタビュー
しっかりと安全に
天野 お一人ずつ自己紹介をお願いします。
イ・ランヒ プロデューサーのイ・ランヒと言います。
ファン・ソンタク 「Creative Dandi」代表のファン・ソンタクと申します。今回はテクニカルディレクターもやっています。
アン・ウィスク 私は今作『Woman with Flower』の振付を担当したアン・ウィスクです。
天野 よろしくお願いします。まず、団体名の由来と結成の由来をお聞きしても良いですか?
ファン 「Creative Dandi」という名前は、韓国では〈創作中心ダンディー〉と言います。ちなみにダンディーというのは、韓国の慶尚道(キョンサンド)という南の方の地域の方言で「しっかりしている」というような意味です。私たちは公演をする時にロープを使うんですが、そのロープをしっかりと結んでつないで「安全にやろう!」という意味が込められています。
ファン 2009年に仁川(インチョン)世界都市祝典というのがあったんですが、その時にその祝典でやる必要なコンテンツを、当時私の先生だった方から、フランスの団体と一緒にロープを使った公演を作らないか、と提案されてやることになりました。その後10年間、ロープを使ったパフォーマンスを安全にやってきましたし、今後も韓国で安全にやっていきたいと思っています!
空中は特別な空間。だから楽しい。
天野 皆さん、普段はどういったトレーニングをされているんですか?
アン 普通の演劇の団体とは違って、練習の空間っていうのが決まってないんですよ。本来は壁で練習しなければいけないので普段の練習は難しいんです。何かプロジェクトが決まった時に集まって練習をしていますね。
天野 実際の会場で練習をされるということですか?
アン 一応練習場があるので、普段はそこで練習してます。舞踊の基本的な動作やステップの練習もするのですが、それとは別に、ロープを使った公演なので、壁に吊されると地上で考えたのとは違って見えることがあります。そういう表現の違いや、効果的に見せる方法なども考えたりします。
天野 皆さんが思う、バーティカルダンスに最も必要なスキルって何でしょうか?
アン やっぱりバーティカルダンスの特徴としてロープにぶら下がっているというのがあるので、「自分が安全だ」って思う意識、安全だって信じることが一番重要だと思います。安全だと思えないと、表現したくてもできないんです。あとはお腹の力が大切です。
天野 ちなみに、腹筋のトレーニングでおすすめはありますか?
アン ロープを使ってパフォーマンスをする時に耐えられるような筋肉を私たちは〈ロープ筋肉〉って呼んでるんですけど、やっぱりたくさんロープに繋がれて練習をすると一番鍛えられますね。
ファン あと実は、恐怖感を少し持つことも必要です。
アン そうですね。緊張感があった方が怪我することなく表現できます。
天野 なるほど。緊張感を持って作品に挑むということですね。
アン そうですね。
天野 私は空中でパフォーマンスをしたことがないんですけど、空中にはどういった魅力がありますか?
アン 自分が特別な人間に感じられるというのかな?芸術家や特に役者は自分が特別だと思うことが大事だと思うんですが、空中パフォーマンスをやっていると「自分は特別なことをやっている」と感じられて、より一層自信も出るし、プライドも生まれるんです。あと、私は何事も楽しくないと続かないと思うんですが、空中パフォーマンスはとにかく楽しいです。
新しい芸術を、一緒に感じて。
天野 今回の作品を観たお客さんに、どんな気持ちを持ち帰ってほしいですか?
アン 『Woman with Flower』は、ピカソが自分の絵、つまり芸術を作り上げていく過程から完成させるまでを描いたものです。彼は自分の芸術作品を完成させるまでにさまざまな過程を経て技法や画法が変化したんですね。そんなふうに芸術家が一つの作品を生みだし、完成させていく過程。そこには色々な悩みもあるじゃないですか。そういうものを観客も一緒に感じてくれたら嬉しいです。
天野 お客さんに観てもらって初めて完成するっていう感じですね。
アン そうですね。
天野 今現在はどんな稽古が進められているんでしょうか?
アン この作品は一度やったことがあるので完成してると言えばしてるんですけれども、今回に向けてちょっと内容を変えたりしている最中ですね。
天野 どんなところを変えているっていうのはお聞きしても大丈夫ですか?
アン まず、構成を前よりもっと盛りだくさんにしてます!今回は日本で発表するので、ちょっとアップグレードもしてますね。
今まではピカソの「絵」だけが描かれる内容だったんですけど、今回はピカソ役の男性が登場するので、絵が少しずつ完成していく様子を表現しようと思っています。
長月 今回の演目を選んだ理由は何ですか?
イ ストレンジシード静岡は野外のフェスティバルですよね。最初は空中でできる大規模な作品を上演してもらいたいという問い合わせが来ました。
「Creative Dandi」の作品の中に、『Promise of the Moon』という、大きな構造物を使った作品があって本当はそれをやりたかったんです。
イ 構造物をクレーンで吊り上げるのが内容の核となる作品なので、クレーンを使える空間かつ、みんなが集まって観るようなことができる場所を手配することは今回は難しいという事になりました。
なのでクレーンを使わないで、かつ、空中のスペクタクルで、観客に新しい芸術作品として魅せられる作品は何だろうか?という事を考えて、今回の作品を推薦しました。
山口 いつか見てみたいですね。ムーンの方も。
天野 場所を探しておきます!
壁にピカソの絵を描くように
長月 そもそもピカソの演目が生まれたきっかけってありますか?
アン まずはバーティカルダンスならではの作品というのを作りたかったんです。当時はまだバーティカルダンスだけで構成された作品がなく、私たちがやっているものを効果的に見せられる作品をやりたいと考えたんです。
それで、みんなでアイデアを出し合っている時、壁で踊るのは絵を描いてるみたいだねっていう話になり、じゃあ画家は誰がいいかなと考え、観客の皆さんがより理解しやすい画家ということでピカソが浮かびました。
長月 面白いですね。
山口 ピカソを選ばれたということは「Creative Dandi」の作品には、分かりやすさであるとか、ポップであるとか、お客さんへの伝わりやすさみたいな事を意識されているのかなと感じました。お客さんに「どうしたら伝わるか?」というのは強く意識されていますか?
アン 私よりも作品の意図をわかりやすく伝えてくださってありがとうございます(笑)
まずピカソっていうのをモチーフに持ってきたのは、芸術が生まれてから完成するまでのその過程っていうものを表現したかったのがまず一つあります。
バーティカルダンスというのは、サーカスのように華麗な技術やパフォーマンスに目が行きがちなんですけれどそれだけでなく、この作品では壁の上という空間で絵のようなものを表現したかった。そのような努力をしたということも分かっていただけると嬉しいです。
山口 (大道芸ワールドカップなど、大道芸に触れる機会が多いので)静岡の人は大道芸は見慣れている方が多いと思います。なので、静岡の人たちに、技とかスキルだけではない、こういった作品性の高い皆さんの作品を静岡の人に見ていただけるのがとても嬉しいです。
イ ありがとうございます。私たちも楽しみにしてます!
やっぱり富士山!
天野 皆さん静岡の町は見られましたか?
アン この三人で下見に行きました!
天野 静岡の印象はいかがでしたか?
アン 正直全然観光できなかったので、あまりイメージがありません…。でも少し散歩した時に、公園とか道の雰囲気とかがとても綺麗で、静かでありながら余裕があるような印象を受けました。
天野 静岡に来てパフォーマンス以外で何かやりたいことってありますか?
アン 団員たちに聞いてみたら、一番は富士山でした。富士山を見ながら温泉に入りたい(笑)あと、やっぱり美味しい食事をとても期待してます。
天野 静岡はお刺身がとても美味しいので、ぜひ食べて欲しいなと思います。
アン 今回初めてこのフェスティバルに参加するので、観客の方々がどんな風に私たちのパフォーマンスを見てくれるのか、どんな風な反応を示してくれるのか。実際に観客の方々と触れ合うのが静岡に行ったらやってみたい事ですね。
天野 静岡ではこういったバーティカルダンスというのはとても珍しいものだと思うので、みんな驚くと思います。
アン ありがとうございます。
天野 皆さん当日はいらっしゃいますか?
三人 行きます!
天野 私も当日スタッフで伺うので、お会いできるのを楽しみにしています!
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