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家康公が雲の上で喜びそうなワークショップを。tupera tuperaインタビュー
ストレンジシード静岡のサポートスタッフ、その名も「わたげ隊」。ストレンジシードってどんなフェス? どんなアーティストが出るの? ということを伝えるべく、地元・静岡を中心に活動するわたげ隊が出演アーティストにインタビューする企画。tupera tuperaさんが登場です。
わたげ隊がゆく!
ストレンジシード静岡2023 アーティストインタビュー
ゲスト:亀山達矢(tupera tupera)
聞き手:リョウゴ、ハボ(わたげ隊)
リョウゴ まずは自己紹介と団体名の由来を教えてください。
亀山達矢 『tupera tupera』という名前でパートナーの中川敦子と共に活動をしております亀山達矢と申します。今年で活動20周年です。
ユニット名の由来は「頭のねじが緩むおまじない」として自分で考えた造語です。元々は雑貨ブランドとして始めて、2年ほど経ってから絵本を作り始めました。絵本はこれまでに50冊程出しました。作品によっては13言語で出版しているので世界中に広がっています。
絵本作家として知ってくださっている方が多いのですが、実は絵本は年間2~3冊程出版していて、それ以外は、イラストレーション、様々なメーカーさんと組んでのもの作りや、テレビの番組セットやディレクション・舞台美術等……色々な活動をしています。
「何でも屋」みたいなところがありますね。
ワークショップも18年程やってきて、青森県以外の全ての都道府県でやりました。講演をしたり絵本を読んだり……毎月2~3都道府県はお邪魔して何かしら活動をしています。
きっとどこかで見たことがある、その魅力
リョウゴ 絵本以外のお仕事も多いとのことですがどういう形でお仕事が広がっていくのでしょうか?
亀山 僕らは自分で営業をかけていなくて色々な方が色々な仕事を頼んでくれるんですよね。絵本という大きな柱をもとに、僕たちに色々な可能性を感じてくれて依頼をくださるというか。
演劇に関しても演出や衣装や舞台美術で関わったりしています。「何か面白いこと一緒にやりませんか?」というご依頼が非常に多いのでその人たちにしっかりと応えていく。それを繰り返した結果、自分たちの幅が広がってきました。
リョウゴ すごいですね。僕はこのインタビューをさせて頂くにあたり初めてtupera tuperaさんの絵本やその他の作品に触れたのですが、自分でも実は色々なところで目にしていたんだなと気づきました。
亀山 『tupera tupera』というのがよく解らない名前なので「なんやろこれ?」みたいな感じで目に留めて頂いたりとか。僕たちとしてもそれぐらいが心地良いので色々な方面で幅を広げながら作品を作って共感してくれる大人や子どもに出会えると嬉しいなという気持ちで活動をしています。
リョウゴ なるほど。
亀山 あとは同じようなものは作らないようにしています。絵本もそうですし他の仕事も自分たちがやっていないような新鮮な仕事が好きなので。新しい依頼はワクワクするし、それに応えていくことで広がってきたんだと思います。
リョウゴ 絵本を何冊か拝読してひとつ気になったのが、目が無表情と言いますか少し怖いと感じたのですがこれは何か狙いがあるのでしょうか?
亀山 別に何か意識している訳ではないのですが、強いて言えば、より目とか「可愛さ」に寄せていくのはあまり好きじゃないですね。あとは結構自分の顔に似てるって言われますね。愛想笑いが嫌いで無表情が多かったりもするので。
リョウゴ そうなんですね。
亀山 貼り絵で全部作っているからというのもあるかもしれません。
リョウゴ あ、全部貼り絵なんですね、これ!
亀山 そうそう、貼り絵なんです。僕たちはパソコンを一切使わないんですよ。テレビのセットや空間デザインの依頼も全部イメージ図を書いてみたりセットを描く時も貼り絵で作ったりしています。
リョウゴ では今回ストレンジシードで開催するワークショップも手作業で作られているんですね?
亀山 そうですね。手で作ることが好きなので、ワークショップも「大人も子どももみんなで手を動かしながら、出来上がっていくものを一緒に楽しむ」ということを集まった皆さんと一緒に楽しみたいです。
「フラワー侍」誕生のお話
リョウゴ 今回のワークショップの「フラワー侍」について教えてください。
亀山 ストレンジシード静岡のアーティストブッキングの高橋さんは僕たちが日本各地で行ったイベントや展覧会に足を運んでくださっていて「かおてん.」という展覧会を見ていただいた際に「会期中を通して楽しめる面白い試みをしてほしい」というお話をいただきました。
僕たちは普段単発のイベントが多く、ストレンジシードのように複数のクリエイターが参加して作り上げるイベントに参加する機会は少ないのでどんなイベントなんだろうとワクワクしました。依頼を受けた翌々年になりましたが「参加させてほしい」という気持ちはずっと持っていたので、ゴールデンウィークもずっと予定を空けていたんです。
リョウゴ そうなんですね、ありがとうございます!
亀山 ただ演劇の仕事もしているものの僕たちは演劇畑の人間ではないので最初は「何をやればいいのかな?」と思っていました。今年1月半ばに下見で静岡に行って案内してもらった時にフラワー侍の案が生まれたんです。
僕は「歴史好き」と自称できないぐらいの歴史好きなんですよね。歴史が大好きな子どもに会って「亀山さんも歴史好きなんだよ」とか言うともう完全に一発で負けてしまうからあんまり自称しないようにしているんです。
でも大河ドラマが好きだったり学生の頃は歴史のテストだけ得点が高かったり歴史系のテレビ番組やネットニュースを見かけると全部見ちゃう。
京都に住んでいるので家の近くにも歴史的な建物があったりするから、歴史に注目しがちだけど詳しくはないんです。「歴史好き」の方ってもっとすごいから。
リョウゴ たしかに深いですもんね。
亀山 そういうわけで僕は”人並みに”歴史が好きなので、今年は「家康が熱いな」と思いまして。
駿府城公園は徳川家康にとって特別な場所だし世の中の家康熱が高まっているし、あと家康は平和な世の中を作った人物だから昨今のウクライナ情勢やコロナ禍でモヤモヤした日々を過ごしてきた事も考えると「駿府城公園でやるならやっぱり徳川家康をテーマにしたいな」と思ったんです。
それで静岡のスターバックスでブツブツ言いながら家康について調べたんですよ。そうしたら僕も全然知らなかったんですけど家康公はお花が大好きなんですよね。
日本中からお花取り寄せてお庭を作ったりしています。お薬の研究っていう目的もあったみたいですけどお花が好きな殿様で、ガーデニングしてたんですよね。
リョウゴ あっ、ガーデニングしてたんですね!
ハボ いやー、知らなかった!
亀山 僕もそれを知って盛り上がったんですよね。それで駿府城公園の横にある家康が植えたみかんの木を見に行ったりもして。「このみかんが実ったら誰が食べるのかなー」とか言いながら考えたんです。
新緑の季節に家康公が雲の上から喜んで見てくれそうなそういう楽しそうなのがいいなーって。そう思った時にちょんまげをお花にしてお花の裃(かみしも)も着てきちんと正装してみんなで演劇を観る……っていうのが良いなと。
リョウゴ めちゃくちゃ面白いですよね。
亀山 「行列をしたい」とかじゃなくてきちんとちょんまげで正装をしてきちんと座って演劇を観る。それで演劇をやっている人がものすごくやりづらいっていう。
ハボ 結構なプレッシャーですよね。ちょんまげに裃がずらっと(笑)。
亀山 そうですよね(笑)。
皆は家康ではなくて家康にお仕えする家臣たちという設定です。家康本人は5月4日に東御門のところで大きな家康を公開制作して御輿の上に乗せる予定です。
そして5月5日と6日は皆が家臣になる。40〜50名ぐらいだと思いますが駿府城公園を皆で気持ちよく行列して演劇を観に行く。バカバカしくもあり、けれど彩り豊かに不思議な感じで盛り上げたいなと思って考えました。参加者さんにとっても普通に観るより忘れられない記憶になるかなと。
リョウゴ そうですね、とても記憶に残ると思います。
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亀山 あともうひとつ「僕自身も演劇が観たい」というのもありますね。
やっぱり出演者側って(参加するイベントの)観る側を楽しめないじゃないですか。だから今回は僕もストレンジシードを密かに楽しみたいんです。それをたくさんの大人も子どもも交えて一緒に楽しく観られたら良いなと思って。
リョウゴ こうして出演者さんへインタビューをさせていただくとやはり「他のアーティストの演目を観に行きたい」と言われる事がとても多いです。
ハボ ストレンジシードは出演者がお互いの演目を観に行く事がよくありますね。そして近くで上演されているパフォーマンス同士が影響しあったりもしてすごく面白い。
亀山 そのあたりは野外ならではですよね。
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ハボ 『tupera tupera』さんも野外で活動をされることはありますか?
亀山 ワークショップは外でやったりもします。あとは色々な場所を練り歩いたこともありますね。
鳥取の「鳥の劇場」というところでワークショップをやって街を練り歩いたり、恵比寿ガーデンプレイスや多摩川の河川敷とか。その中で結構印象的だったのは浜松の国道を練り歩いた時ですかね。もう何をやっているのかわからなかったですね、ただの国道だし。
山口 そういう時は何か特別な格好をしてたのでしょうか?
亀山 大体全身違う格好です。コスチュームを作ってそれを着て練り歩く。去年は真冬の鳥取の野外で寅のトラックの格好をして、雪の中をみんなで走ったりとか。
山口 寅のトラック??
亀山 寅年になるタイミングだったので。「トットラ」っていうの。
「TOTT-TORA (トットラ)」完成記念式典の模様です。
— tupera tupera (@tuperatupera) December 25, 2021
最後に目を入れて、今回の為に作ってもらった曲「おいらトットラ、トラック野郎」を演奏していただきました。
詞 髙橋等 曲/演奏 武中淳彦#tuperatupera #ツペラツペラ #鳥の劇場 #とりぎん文化会館 #髙橋等 #武中淳彦 pic.twitter.com/ttV5KmFDir
山口 楽しそうですね!
亀山 基本的にはそんなに練り歩きたい人間ではないんですけど、やっぱりコスチュームを作ったら披露したいと思うので。だからファッションショーみたいなことをやったこともあります。自分はどちらかというとインドアタイプなんですがたまにそういう風に外を楽しんでいます。
静岡の美味しいものが楽しみ
リョウゴ 5月に静岡に来ていただく際にストレンジシードを観る以外で何か静岡でやりたいことってありますか?
亀山 芹沢圭介が好きなので美術館に行けると良いなと思っています。
基本的にお酒と美味しいものが好きなので今静岡の美味しいものを掘り下げたいです。
静岡は東京方面への仕事へ向かう時には大体通るし、イベントで磐田や浜松に行ったこともあるけど、なかなかしっかり楽しむ時間はなかったので。
ハボ わたげ隊のInstagramで静岡の美味しいお店を紹介しようという企画も準備していて、これから色々と発信予定なので、是非そちらも参考にしていただければと思います。
リョウゴ 今ちょうど桜えびとシラスが旬なので、是非召し上がってください。
亀山 とても楽しみです。ゴールデンウィークの静岡はとても賑やかになりそうだし。もうちょんまげをして日本酒を飲みたいと思います(笑)。
山口 ありがとうございました!
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tupera tupera
亀山達矢と中川敦子によるユニット。絵本、イラストレーション、工作、ワークショップ、舞台美術、アートディレクションなど、様々な分野で幅広く活動している。絵本に「パンダ銭湯」「かおノート」「やさいさん」など、著書多数。海外でも様々な国で翻訳出版されている。NHK Eテレの工作番組「ノージーのひらめき工房」のアートディレクションも担当。「しろくまのパンツ」で、マルセイユ 子どもの本大賞 2014 グランプリ、「わくせいキャベジ動物図鑑」で第23回日本絵本賞大賞。2019年に第1回やなせたかし文化賞大賞を受賞。武蔵野美術大学油絵学科グラフィックアーツ専攻 客員教授、大阪樟蔭女子大学 客員教授、京都芸術大学こども芸術学科 客員教授。
WEBSITE
ストレンジシード静岡2023
いえやすんぷ プロジェクト
『フラワー家康といっしょに ちょんまげ行列』
tupera tupera
ファシリテーター:亀山達矢、中川敦子
tupera tuperaによるフラワー家康公開制作
[日程]2023年5月4日(木・祝)10:00-完成まで
どなたでもご覧いただけます。
[会場]駿府城公園エリア[お城]
ちょんまげ行列ワークショップ【事前応募・抽選】
ちょんまげ・裃(かみしも)作りワークショップを行った後、それを身に着けて、フラワー家康公を担いで駿府城公園内を行列し、みんなで観劇します。
※両日共に同じ内容のワークショップとなります。
[日程]2023年5月5日(金・祝)、6日(土)
[スケジュール]☆両日とも同じスケジュールです。
9:30 受付開始
10:00~12:00 ワークショップ
会場:駿府城公園エリア[フェスティバルgarden]
12:00~13:00 各自昼食休憩
13:00~14:30 フラワー家康とワークショップ参加者一行で行列
(行列をした最後に、一緒にちょんまげ姿でストレンジシードの演目を観劇をします。)
会場:駿府城公園エリア[お城]集合
[参加方法]=事前応募・抽選=
事前に応募フォームからご応募ください。参加者は抽選で決定いたします。参加可否について抽選後、4月26日(水)ごろにメールにてお知らせいたします。
[募集人数]各日42名
[対象年齢]6歳~大人
☆大人のみの参加も歓迎です。
※6歳未満(未就学児童)の参加も可能ですが、保護者の付き添いが必要となります。
[応募フォーム]https://forms.gle/6Fd1zrUf6f2qZdfD7
応募締切:2023年4月25日(火)22:00
詳細はこちら
https://strangeseed.info/
インタビュー:リョウゴ、ハボ(わたげ隊)
記録・テキスト:momo(わたげ隊)
編集:天野(わたげ隊)、小野あすか
ストレンジシード静岡 事務局:山口良太、草野冴月