【グッドプラン・フロム・イメージスペース】Episode.5 「今から数年後・・・」第10章 : 後編 Part.11 (No.0141)


後編 Part.10のつづき

 新しい教師たちは子供たちの教育に関して、教室や校舎など過去の学校の設備の使用には一切拘りませんでした。


時には雨の日だって校舎を使わずに1日の学習を済ませることも普通でした。毎朝の集合も教室でも校庭でもなく、何処か手頃な道端や公園などが主でした。何故ならそのほうがその後に行う学習には便利だったからです。学習自体は公園や空き地や道端や川や畑などで連日行うことが多かったのです。

中学生くらいの年齢になってもそのような場所での学習が普通でした。

しかしそのくらいの年になると2者面談、3者面談を行い、ひとりひとりの子と長い時間を取って何度も話し合ったりして個人個人の授業スケジュールを作ります。それに合わせて個人がある程度の自由を持って日々の学習を行うので、空き地や道端などの「学校」には来ないで、校舎へ行ったり別の公園へ行ったりなど思い思いの学習生活を送っていました。


過去の学校では決してあり得ないことですが、この教育方法は新しい政府や教師たちがみんなで本気になって人々の知性について話し合い、それを如何にして獲得していくのか、またその為に学校や教育者が出来ることは何なのかを考えた末の一つの結論なのです。


確かにサボったりする子もいることはいます。しかし、ここで大事なのはサボっても話した事と違うことをしても怒らないことでした。


理解を見せる事が大切でした。そしてより大事なのは「何故なのか」ときちんと聞くことでした。


どうしても頭ごなしに決めつけてしまうことが多く、これは新しい教師たちもついやってしまいがちなことでした。
しかし、きちんと話を聞きその子の気持ちや考えに理解を示すように教育方針を切り替え、強く守るようにしたのです。


これをすると、子供達は素直に何でも話してくれるのです。怒られたり一方的に怒鳴りつけられたりしないと解ると、子供達は隠し立てせずにきちんと話してくれるのです。


このそれぞれが見せる態度は、学校の生活の中に嘘や裏切りや騙し合いが無い事を意味するのです。


つまりこれは信頼関係であり、これを築き育んでいくことが教育の枠を越えて人と人との関係には絶対に必要不可欠なことなのです。
これは社会そのものなのです。


特に教師は教える立場ですから、子供達が約束を破りデタラメに日々を過ごしてしまっても、教師たちはきちんと約束を守り通す姿を見せて上げることが大切でした。そのブレない精神がどの年齢の子供達にも強力な安心感を与え、やがては信頼や尊敬に変わり子供達はそれを学ぶのです。


教師だからとか、目上だからといった理由で従ったり言葉遣いを気遣ったりするのではなく、心の底から湧き出る尊敬の念が自分達の中に溢れ、それが自然と教師たちへの態度に現れるのです。


そこまで出来て教育であるのだと、新しい教師たちは本気で思い実行していたのでした。
しかしこのような教育に至るには色々な努力がありました。


こうした、かつてでは考えられないような教育の姿勢を見出し実践に移すまでには、様々な会議や研究や苦労があったのです。


新しい教師たちは、新しい政府や全国の教育機関や教育者たちと幾度も話し合いや研究結果の報告会議などを重ねた末に、やがて行き着いた1つの結論がありました。


それは、教育者達が子供達に望むことは学力の向上などではなく、「成長」だったということでした。


Part.12につづく

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