【2つめのPOV】シリーズ 第3回「仕切り」Part.7(No.0166)
パターンC〈セルゲイのMix Up〉
Part.6のつづき
どこまでもまっすぐに伸びる階段を登る子供
ゴミだらけのワンルームの部屋の締め切られたカーテンを開ける年を重ねた女性
青々とした葉を茂らせた木々が窓越しに見える
窓も開けると明るい日差しと風が入り込みレースのカーテンを元気に揺らす
窓を開けたり部屋の片付けをしている姿を毛布を被った女が部屋の隅で眺めている
田舎道を歩く男
すぐ前まで荷を背負った老婆が迫っている
すれ違う時、男は「おはようございます」と挨拶する
老婆が顔を上げる
その老婆の顔は、さっきと違い挨拶をした男と同じ顔になっている
ヘッドフォンをしてスマホを使いながら歩いている黄色いシャツを着た若い男
ヘッドフォンをしてスマホを見ながらコンビニで買い物をする
店員の顔も見ず、ロクに話を聞くこと無くカウンターに千円を放り投げる
店員の手が引きずるように千円を取ると、カウンターにはドロドロとした黄色い液体が残っている
その液体を見つけ、不快そうにカウンターや千円、そして黄色いシャツの若い男を見る店員
その店員の視線にも気づかずスマホをいじる若い男
お釣りの小銭をそのカウンターの黄色い液体の上に置く店員
若い男はその液体を気にすること無く小銭をさらうように受け取り、無造作にポケットに入れながら去っていく
カウンターには液体でへばりついたレシートが残っている
若い男は駅の改札でスマホを叩きつけ入っていく
そこには黄色い液体が残されている
電車に乗ると、車内には同じ様な黄色いシャツを着て同じようにスマホをいじる若い男が何人も居る
その男たちの手や足元から黄色い液体が垂れ、周りにボタボタと垂れたり、近くの人に付いたりしている
それを不快げな表情で睨む背広の男
別の黄色いシャツの男にも液体が付くが、その男はまるで気にしない
車内は黄色い液体で座席も手すりも床も汚れている
ゴミだらけの部屋が掃除され片付いていく
毛布を被った女は、自分の母親と思しき年取った女性が掃除をする姿を眺めている
フローリングや窓などを雑巾で拭いたり、バスルームなどを掃除をする母親
拭いたあとの雑巾や使い捨てのシートを見る母親
明らかに黄色く汚れている
空を突き進むロケットは、更に燃料を使い終わったエンジンを切り離す
大学の構内に黄色いシャツの若者たちが大勢いる
僅かにいる他の色のシャツを着た若者が、黄色いシャツの若者達の間を逃げるように歩いていく
構内は黄色い水たまりが沢山ある
「おはようございます」
田舎道ですれ違いざまに挨拶を返す老婆
顔を上げて相手を見ると、相手の顔が老婆の顔になっている
片付いたワンルームの部屋で、母親が娘の身体をお湯で濡らしたタオルで綺麗に拭いてあげている
タオルは黄色く汚れる
大学の構内にいる学生の殆どが黄色いシャツを着ている
講義を受けている黄色いシャツの学生は、ノートを取ったりスマホをいじったりしている
黄色いシャツの学生の机も椅子も黄色い液体でドンドンと汚れていく
いじってるスマホも黄色い液体で水没する
教室内の階段に黄色い液体が流れ落ちていく
黄色いシャツ以外の学生が逃げるように席を立ち、教室から出ていく
教室は黄色いシャツの学生だけになる
綺麗な身なりになった娘が、母親と二人で小さいテーブルを囲んで夕飯を食べている
娘は以前と違いとても元気そうに食事をする
母親も嬉しそうに食事を共にする
ベッド横の小さな机の上には、整頓された教科書とノートPCが置かれている
アパートの横にあるゴミ捨て場には、黄色いゴミが沢山入ったゴミ袋がいくつもまとめられている
真っ直ぐに伸びる階段をひたすら登り続ける成人の男
ふと立ち止まり、右手を開いて握っている物を確認する
手の中には赤ちゃん用の黄色いおしゃぶりが握られている
男はそれを振り返って後ろに捨て、前を向き直し、また階段を登り進める
コロコロと階段を転げ落ちるおしゃぶり
何かにぶつかって転がるのを止める
そこには黄色い液体に塗れた赤ん坊の衣服やランドセルやゲーム画面を表示するスマホや指輪や化粧品が打ち捨てられるように山を作っている
パターンC〈セルゲイのMix Up〉
おわり
Part.8につづく