【グッドプラン・フロム・イメージスペース】Episode.5 「今から数年後・・・」第9章(No.0105)

 それでもなおマスコミは、エキストラを使い通行人に仕立て上げ偶然を装ってインタビューし、その何気ない意見をまるで市民の心の声の代表の様に持ち上げて、都合の良い世論を作り上げていました。

しかし、この頃にはマスコミ自体が人々の観察対象になっていましたので、その撮影現場を人々は撮影し、録音していました。

また、インタビューや出演の依頼があった人も、一見快く応じながらもその一部始終を全て撮影録音したり、ライブ放送をしたりしました。

この企画はユーチューバーに気に入られ、マスコミの言うがままに従いつつも、その全てをライブ放送し、マスコミが自分たちの都合に合わせて演出する現場を人々に晒して再生数を稼いだりしました。

この事実はマスコミを激怒させました。

彼らは今までさんざん同じ事を人々にやってきたくせに、一度自分たちがされると偉そうに法だ権利だと騒ぎ立てました。

しかし新しい政府は、そのような批判をするくらいなら、初めから誠実に報道すれば良いのだと言い、マスコミの主張を退けました。

こうしてマスコミは、時折河川に現れるアザラシやイルカのように人々から追い掛け回される存在になりました。

未だに過去のギミックに固執しているマスコミは、もう珍獣の域でした。

マスコミ関係者もかつてのような羽振りの良い生活は出来なくなりました。

彼らは若いうちから大変な厚遇を受けて生活していましたから、愚かな贅沢が身にしみ付き、一般の常識的な生活は出来なくなっていました。

ですからこの僅かな間に経営が崩壊に向かう事で、彼らはパニックを起こし内部で争いが勃発しました。
そしてそれもまた人々は観察し、情報を発信しあいマスコミが壊れていく様を記録し続けました

また彼らの通っていたようないかがわしく法外な値段のお店などは、とっくに新しい政府と市民により死滅していましたので、マスコミ関係者は自分たちのオフの時の居場所さえ失いました。

ヤケになって普通の方たちが家族でも使うようなお店に入っても、周りのお客さんと態度も風貌もまるで違う不健全な連中な為に、瞬時に浮いてしまいました。
決して一般の方たちに紛れ隠れる事は出来ませんでした。

ストレスを発散出来ないマスコミ関係者たちは、集団でも個人でも問題を起こすようになりました。
この頃にはお酒も社会から遠ざけられていた為に、かつての10倍は出さないと飲めませんでした。

それでもマスコミ関係者はお酒無しには生きられませんから、高いお金を払って飲みました。そして暴力沙汰や自動車トラブルを起こし次々に逮捕されました

最初に現場レベルの人間が連日逮捕され消えていきました

その度に責任者は矢面に立たされ、昔では考えられない程に批判をされ、重い罰金や刑罰を科せられました。たとえ外注のバイトが起こした暴力事件でも、経営陣が人々の前に並ばされ謝罪を直接言わされました

そうなると今度はプロデューサーやディレクターなどの現場責任者に強烈なプレッシャーがかけられました。
もう既に現場には仕事を日々回すだけの人間は揃えられなくなっていました。

スタッフは次々に捕まる上に業界の悪事が全て白日の下に晒され、人々からは珍獣扱いされレストランでもサービスを断られる始末でしたから、誰も入社して来ませんし派遣会社にも断られました。新しい政府が徹底的に派遣会社を厳しく監視し、裁いていましたから派遣側もマスコミのようなブラックな現場には誰一人派遣してくれませんでした。

今まで週に1、2回現場に顔を出すだけで仕事は何もせずに年収何千万も稼いでいたプロデューサーたちが、自分たちでADがする雑用をする羽目になっていました。

しかし今まで左団扇で遊んでいたので、全然仕事は出来ませんでした。彼らの不手際が更にトラブルやクレームを引き起こしました。
彼らはアッという間に頭がおかしくなりました

そして現場はもう一切回らなくなり、再放送を連発したりコンテンツを高い金額で借りたりして放送枠を埋める日々になりました。

このプロデューサーたちの起こす問題も、もちろん経営陣が徹底的に責任を取らされました。
彼らも今まで過ごして来た王様の様な生活はもう全く送れなくなりました。

財産はすぐに底を付き不動産も差し押さえられ、隠して来た資産も見つかりました。見つかった者はすぐに牢獄に入りました。やがて死んでしまいました。

経営陣もどんどんと追い込まれましたが、とっくに老人で何も出来ない連中でしたからこの自分達の問題を解決する為に動く事も直視する事も出来ず、ただひたすらに頭を下げ嘘をつき、また批判され狼狽し、個人個人に重い罰金が科され借金を背負い豪邸を追い出されました

家族はとっくに心がバラバラでしたが、いよいよ物理的にも離れ離れとなり、彼らの元には誰一人として近づきませんでした。そして死んでしまいました。

築いた砂山をもっともっと高くして尖らせようと削っていくうちに、頂上は狭くなり細く脆弱になり、やがて根本から全て崩壊したのでした。


【グッドプラン・フロム・イメージスペース】Episode.5

「今から数年後・・・」第9章(No.0105)


第10章につづく



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