【楽園の噂話】 Vol.6 『愛の取り引き』 Part.1 「甘さと情とワイルドカードコレクションズ 前編」(No.0044)
今はスマホや携帯ゲーム機にお株を奪われましたが、ひと昔前は数人の人が集まった時にはトランプなどのバトル系ではないカードゲームをするのが一般的でした。
その中でも「ウノ」は広く知られたカードゲームでした。
トランプと違ってゲームは限られるものの、ポップなデザインやダイナミックなアクション性は良く出来ていてルールを知らないからとプレイを嫌がっていた人もすぐに覚えた上にとても楽しめてしまう人気作です。
こういったカードゲームにはジョーカーやワイルドカードの様な何にでも使える「万能カード」があり、勝利や有利な状況に勝負を持ち込む時に使う為に手札に隠し持っておくものです。
情けは人のためにならず、と昔から言いますがその言葉通りに生きている人はなかなか居らず、情にほだされる事も情に訴える事もここ日本では美談として扱われ庶民のストーリーに多用されます。
人の情をすくい取りその思いを叶えてやる事が善意や粋と解釈され人格にも加点されますが「情」とは「甘さ」の事であり、その人の「甘さ」が隙や油断や妄想を産みそこから発展したトラブルに加勢を依頼する時に使われるゲートが「情」と考えて良いと思います。
トラブルを背負った者が解決の為に他者の「情」に通達し、突然自分の「情」に送られてきたメッセージに対してソロバンを弾いた上で手を貸すのです。
ここで大事なのはこの「ソロバン」です。
一見ただ優しさで行っている様に見える行為も、キチンと計算が存在しその場で行ってなくてもずっと昔に出していたり、終わったあとに弾き出した「計算結果」が行動原理として活用されています。
もちろんそれは見返りです。
ただ直接その人からの見返りというものでは無く、「願い」にも似た形のものです。
手を貸したことで叶った他者の持つ「情」と同レベルの自分の「情」を、世間に受け入れさせる権利を得たと解釈するのです。
しかし、当たり前ですがこんなことは当人が勝手に思い込んでいるだけの妄想に等しいため、その通りに叶う保証なんてありません。
これが問題を生むと思います。
「情」をかけた本人は見返りを期待して行った以上は、等価かそれ以上のバックが無いと「損」した事になるのです。
この「損」した気持ちから、さらに産み出される苦しみが「被害者意識」となり、これが人に甘えと情を強力に自己肯定させる「ワイルドカード」に変わるのです。
【楽園の噂話】 Vol.6
『愛の取り引き』 Part.1
「甘さと情とワイルドカードコレクションズ 前編」(No.0044)
おわり
後編につづく