【2つめのPOV】シリーズ 第6回 「しがみつく」 (No.0258) パターンC 〈セルゲイのMIX UP〉
・まばらな人の流れ、男Aはその流れについていくと、そこには安っぽい
真っ白な看板に「接種会場」と書いてある
看板の先には白いテントと車が並んでいる
そこに人々は間隔を空けて並ばされている。男Aもそこへ並ぶ
・牧場の牛たち
・せまい豚舎の豚たち
・ブロイラーの鶏
・袖をまくった腕に刺される針
・首を切り落とされる牛
・発行される安っぽい証明レシート
・牛の耳に直接取り付けられた鑑札
・荒々しくペンキで直接番号が書かれた樹木
・免許証の番号
・学校の合格発表の番号が書かれた看板
・食堂の番号札
・兵隊が首から下げているドッグタグ
・子供が胸につけている名札
・マイナンバーカード
・鉄格子ごしに見える囚人たち
・マグショットの撮影風景
・フェイスブックのアカウント写真、写真、写真、写真、、、
・牛の品評会の写真、写真、写真、、、
・肉塊にされ、フックに引っ掛けられた牛の肉が流れ続けるベルトコンベア
・男Aもテントに入っていく、あと数人で自分の番が来る
・男Aは汗をかいている
・男Aの前にはアステカ文明時代の生贄の姿が映っている
暗い洞窟で沢山の松明を焚き、石の祭壇には裸にされた生贄の男が大の字に縛られ寝かされている
そこへ不気味に着飾った神官がやってきて生贄の胸に手を当てる
すると生贄の胸から光る玉のようなものが取り出される
生贄は恐怖の顔つきでそれを見ながらガタガタと暴れるが縛られているので動けない
洞窟に生贄の絶叫が響く
光る玉を持った神官はその生贄の姿を楽しそうにいやらしく眺めたあと、
その玉を握りつぶす
それを見た生贄である男は大きく目をひん剥いたまま気絶するように
力を失い動かなくなる
・男Aはその光景を黙って見続ける
・生贄は死んだように見えるが目が開いている
しかしその目には光はなく虚ろに虚空を見つめているだけだ
固く握られた手も既に力なく広がっている
さっきまで筋張っていた腕も足ももう生気を失っている
・神官はその姿を見たあと、禍々しい大きなナイフを持ち
生贄の胸に突き刺す
・ナイフを突き立てられた生贄は一瞬反応するが、生贄の表情は何も
変わらない
・顔中から汗が吹き出ているが声も出さない
・その光景を見ている男Aの顔
目の前の光景の恐ろしさに目を剥き汗を垂らしている
・神官は血だらけの胸から心臓を抜き取り、天高く掲げたあとに祭壇の器に心臓を載せる
・男Aの前の人が呼ばれ、白衣姿の医師の前に座る
男Aの前にはもう誰もいない
・男Aは周りに目をやる
・接種の案内板
・顔を見せないスタッフ
・マスクの強制を促す貼り紙
・赤、黄色、青と、原色で強調されたポスター
・雑音ばかりの案内放送
・他のブースでも、捲くられた袖へ次々と針が差し込まれている
・空気圧で発射されたボルトを頭に打ち込まれた馬がドカンと倒れる
・大きな物音がする
・男Aが音の方へ目をやると、パイプ椅子に座っていた接種後の女性が
床に倒れている
・倒れた馬の頭の傷から、蛇口をひねったような勢いで血が吹き出し
屠殺場の床を汚す
・倒れて動かない女性に群がる医療スタッフたち
・もがくバッタに群がるアリの大群
・水着のアイドルを取り囲み写真を撮り続けるファンとカメラマンたち
・半額のシールを貼る店員の周りを取り囲む閉店間際のスーパーの客たち
・新しいゲーム機をワンボックスカーの荷台いっぱいに詰め込む男たち
・百円玉を大量に握りしめる手
・万札を鷲掴みする手
・並べられたワクチンの小瓶
・ニュース映像、5000万回分のワクチンを再度確保したという政府発表
・シャッターの閉められた商店
・血だらけで空洞の胸を曝け出している心臓を抜かれた生贄の男、目と口を開いたまま死んでいる
・倒れた女性を運び出そうとする救急隊員たち
・救急隊員に押しのけられる男A
・押しのけられよろけた男Aは、汗が滲み震える手でテントのポールに
しがみつく
・学生時代の男A、大きなボストンバッグを床に置き制服のまま大盛りの
ラーメン定食を勢い良く食べる
・大きな倉庫でコンベアから流れてくるダンボールの荷物をカゴ型の台車へ仕分けし続ける汗だくの男A
・狭く貧相なアパートでシールの貼られた惣菜や弁当をテーブルに並べ
がっつく男A
・引越し業者の作業着姿の男A
ふらふらしながらダンボールを階段で運ぶ
その後ろから男Aを怒鳴りつけ急がせる先輩
・アパートの部屋で年金の滞納の知らせを読む男A
・アルミ鍋に作られた卵の乗った3人前のインスタントラーメンを
食べる男A
ちゃぶ台の横にあるゴミ箱には滞納の知らせが握りつぶされ
捨てられている
・ポケットの小銭を確認する男A
・カゴに安酒を放り込む男A
・馬券の販売機に千円札を入れる男A
・地方競馬場の寂れたスタンド席で新聞をにらみタバコを吸う男A
・短くなったたばこを足元へポトリと落とす男A
そこには同じようなサイズの吸い殻がたくさんある
・汚いアパートでパチンコ動画を見る男A
ちゃぶ台に安酒の空き缶と惣菜の空き容器と吸い殻の盛られた灰皿がある
・パチンコをする男A。足元にはドル箱が2つある
・チェーン店の居酒屋で呑む男A
・倉庫に到着したトラックのコンテナからダンボールの荷物をパレットへ
下ろす男A
・汗だくで苦悶の表情の男A
・作業着の男A
男性用小便器の前で呆然として便器を見つめている
・血で染まった小便器
・アパートでパソコンをいじる男A
・病院のサイト
・サプリメントの通販サイト
・病気の口コミ
・糖質ダイエットの動画
・筋肉トレーニングの動画
・スポーツジムのサイト
・物置のようになったテーブルに放り出されている健康保険の滞納の知らせ
・電気を消して布団に潜る男A。頭まで布団を被って丸くなる
・ドラッグストアで半額のパンをカゴから戻し、サプリメントを買う男A
・真夏の昼
強烈な日差しの中で作業着の男Aはダンボールの荷物を運ぶ
・ダンボールに垂れた男Aの汗が滲む
・樹木の肌にしがみつくセミ
・ダンボールを運ぶ男A
・一歩一歩の足取りが重い
・怒鳴り声が響く
・男Aの顔中から汗の粒が垂れ続ける。
口が開いたまま身体を丸め、抱き込むようにしてダンボールを運んでいる
・樹上を移動するセミ
・男Aの背中を怒鳴りつける社員
・荷物を抱きかかえたまま足が動かず止まっている男A
・さらに強く怒鳴りつける社員
・大きく口を開け、顔中から汗が吹き出ている男A。
激しい呼吸で身体を震わせている
・男Aを怒鳴る社員
・男Aの持つダンボールが地面に落ちる
・樹に止まったセミが地面にポトリと落ちる
・背中を丸めた男Aが熱せられたアスファルトの地面に倒れる
・街中、子供の頃の男Aと両親が横に並んで歩いている
小さな手は両親に握られている
・小さな部屋で家族でこたつを囲んでいる子供の頃の男A
3人で鍋を食べている
・鍋をよそう男Aの母
よそう母の手を見つめる子供の男A
その指を飾る指輪の鈍い光が目を奪う
・アスファルトの上に倒れるが持っていたダンボールが腹にあたりゴロンと転がって仰向けになる男A
夏の日差しに照らされた横顔
目を大きく開けているが意識は薄い
・同じ作業着の仲間や社員たちが彼を囲み叫んでいる
男Aの顔へ名前を呼びかけているが、彼は自分に呼びかけるものに目の
焦点が合わせられない
男Aは手を伸ばそうとするが、震えて上手く動かない
・地面に落ちて仰向けになったセミ
足をジタバタを動かす
・男Aの視界は夏の日差しで激しく照らされ、眩しくて焦点もぼやけ
人の顔も見分けられない
男Aはそれでも震える手を必死に伸ばそうとする
・必死に足をバタバタを動かすセミ
仰向けになったセミの足は空を切り続ける
・仰向けで倒れ込む男Aの周りで、作業着の男たちが囲むように
立ち尽くしている
皆声を掛けたりするが手を貸さない
・必死に足を動かすセミ
その藻掻く足に何かが触れる
・震えながら手を伸ばす男A
その手を誰かがしっかりと掴む
・藻掻く足に触れた何かにしっかりと全ての足を絡ませしがみつくセミ
それは誰かの指だ
・仰向けの男Aの視界に覆いかぶさるようにして顔を近づけ必死に
声を掛け続ける女性
男Aは焦点を合わせようと頑張ると、それは知らない妊婦の女性だった
・しっかりと指に掴まったセミはゆっくりと持ち上げられる
その指は、持ち主である小さな男の子の顔先に来る
男の子はそのセミを母親と思しき女性に見せる
そしてその男の子は自分の居るバス停近くに生えている木に
そのセミを移してあげる
・男Aの手をしっかりと掴み必死に声をかける妊婦の女性
彼女の必死な声に周りの作業員たちは動き始め、電話をかけたり男Aを
日陰に移動させたりし始める
・テントの手すりを必死に掴む手
・救急隊員の処置に対して激しく痙攣を起こす倒れた女性
・男Aの手で握りつぶされている予約票
・アステカの生贄
・ギロチンで首を切り落とされた男
・絞首刑台から足場が落とされ首がつられた男
・南洋で一列に行進するガリガリにやせ衰えた兵隊たち
・ブルドーザーでかき集めれる骨と皮だけの大量の死体
・男Aの恐怖した顔
・巨大なライフルで撃たれ、頭が吹き飛び前足から崩れ落ちるアフリカゾウ
・地面に埋められ首だけが出ている鶏
・派遣会社のCM
・畑に山と積まれた大量のキャベツが耕運機で破砕される
・男Aの前をストレッチャが通過する
そのまま追うように振り返ると、そこには大量の順番待ちの人で溢れている
・男Aの番号を呼ぶスタッフ
・男Aの目の前にはズラリと並ぶ人たちの列が作られた道と、人気の無い
狭い道が見える
・男Aの番号を叫ぶスタッフ
・電光掲示板には男Aの番号が点滅する
・男Aはその狭い道を見たまま、手に持った予約票をポトリと落とし
ゆっくりと吸い寄せられるように歩き出す
後ろの男たちは彼を指差す
・男Aの足取りは少しずつ早くなる
・テントから出てきた白づくめの沢山のスタッフたちが男Aを捕まえようと走って追いかける
・男Aは走り出し、その狭い道へと入っていく
【2つめのPOV】シリーズ 第6回
「しがみつく」(No.0258)
おわり
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