【2つめのPOV】シリーズ 第4回 「波」Part.6(No.0180)


パターンD〈ホロウマンのネガフィルム〉


「全く世の中はどうしようも無い馬鹿ばっかりだ!」

『ほんとに馬鹿な人ばっかりで嫌になる』

「本当に情けないよ。私達でもう世界は終わりだ。ここまでバカばっかりの世の中になるなんて」

『毎日何処へ行ってもすぐに解るよ。あ、この人馬鹿だなって。今までマシだと思っていた人さえもそうだと解るとガッカリするよ』

「私達の世代が一生懸命頑張って汗水たらして築いた世の中を、自分のことしか考えない馬鹿な連中のせいで駄目にされる。それを毎日見せられるこの苦しさがわかるか」

『そういう人達って大抵は50歳を越えたような人達だよね。学校でもそうだし。あ、でも学校は若くても馬鹿な先生ばっかりか。ははは』

「私達がどんなに頑張ってきても、下の世代がきちんと引き継がなければ、すぐに駄目になる。自分達の生活が壊れるっていうのに、その若い世代はといえば自分のことしか考えず好き勝手に適当なことばかりして。注意したってすぐに口答えする。」

『それオカシイですよって言ったって、全然聞いてくれないからな。嫌になるよ。無理やり押し付けてきてさ。間違ってるのに。嫌だろ?悪いことや間違ったことなんて、解った時点で辞めるのが普通じゃん? でも直そうとせずに頭ごなしに怒鳴ってくるんだ。』

「どいつもこいつも自分のことしか考えてない奴らばかりだ!人のことや世の中のことなんてちっとも考えず、毎日毎日何処行ってもスマホばかりイジっている!」

『あの歳の連中ってほんとにテレビしか見ないよね? ビックリするよ。それも酒飲みながら見てんの。 んで何だか解ったような顔をしてウンウン頷いたりしてんだぜ。馬鹿だよなほんと。だって連中だってスマホ持ってんだぜ? 何で自分で調べないの? 調べりゃいいじゃん、検索すればすぐに出てくるのにさ。じゃあ一体何に使ってんだよなホント』

「あんな奴らばかりだ。もう日本は終わりだ。情けない。口を開けば文句だけ。やることはスマホいじり。暑いだ何だで嫌なことはすぐに逃げ出す。まるで根性が無い。」

『一度さ、あんまり理不尽な事言うから言い返した事があったよ。そうしたら相手はなんと言ったと思う? うるさい黙って言うことを聞け! だってさ。 いや、ボクは冷静に話したつもりなんだ、決して挑発するような事は言わなかったのに、反論したら急に切れて怒鳴ったんだ。 あ、これは話は出来ないな、って思ったよ。 言い返したのはそれ一度だけだけど、あの世代から上は大体おんなじような反応すると思うな。だってみんなしておんなじような生活してんだもん。 テレビ、酒、野球、買い物、飯、パチンコ、女、仕事・・・ 大体こんなものじゃない?』

「私はね、自分が可愛くて言ってるんじゃないんだ。皆のことを考えて怒っているんだよ。そういうワガママな連中のせいで苦しむ人達がいると思うと、私はそれが辛いんだ。」

『ああやって自分の楽しみだけに埋没して世間に目を向けないでいる人達はホント身勝手だよな。仕事以外の事は全部無視して好き勝手にやるんだから。だいたいのことはお金で済ましたり、自分より弱い立場の人に押し付けたりして泥を被らないようにして逃げるんだ。ホント少しは人のことを考えてほしいよ。』

「特にね、私が辛いのは、孫だよ。孫に何かあったらと思うと、もう居ても立っても居られないんだ。あんなワガママばっかりの馬鹿な連中のせいで、もし私の孫に万が一の事があったらと思うと夜も寝られん。」

『ホント自分のことだけ。彼らって。よくモールとかに溜まってんじゃん? コーヒーとか飲みながらさ、酷い時には酒飲みながらデッカイ声で朝からずっと話し込んでいるじゃん。一度さ、何話してんのか気になって聞き耳を立ててた事があったんだけどさ。 それがどうしようもない下らない内容だったんだ。 でもさ、ボクが興味深く感じたのは内容じゃないんだ。それはね、彼らの親密さなんだ。 彼らは一日中ああやってベタベタと馴れ合うように溜ってるけど、実は全然仲良く無いんだよ。 それにはすごく驚いた。話が全然噛み合ってないんだ。だから一言話す度にデカイ声で笑う理由が解ったよ。あれはああして誤魔化してるんだよ。話の内容には全く共感も同意もしてないんだ。』

「息子にも、それからあの嫁にもよく言い聞かせているんだが、不安で仕方がない。情けないよ。私が代わりに育ててやれればいいのに。」

『つまりは、ただ群れているだけ。だって暇なんだもん彼ら。すること無いんだ。だから居場所も無い。あのモールのベンチから仲間はずれになったら、もうまる1日家にいて閉じこもっているだけしか無いんだ。テレビ見て酒のんで寝るだけ。どうしようもないね。よくあの世代は趣味について話したりお金使ったりするじゃん? でもあれも本当に好きなわけではないんだよ。結局誰かと繋がったりする為の言い訳でやってるんだよな。周りから弾かれたら困るからね。会合とか飲み会とか、やたら集まるのもそうだよ。その流れに乗らないと不安なんだ。だって自分の中には何も無いから。』

「何がどうなるかなんて解らないんだから、出来ることは最大限にやってやりたいしやるべきだろ? でも息子夫婦もほんとに呑気で危機感がまるで無い。その態度に怒りが爆発しそうになるよ! でも、そんな奴に怒ったって仕方がないから、こっちが大人になって毎日頭を下げてお願いしてるんだ。 屈辱だよ。でもしょうがないだろ? 孫のためだから。 テレビだって政府だってキチンとした解決策を言わないんだぞ⁉ だったら自己防衛するしかないじゃないか!」

『科学的根拠なんかじゃないよ。仲間はずれが怖いだけ。』



だからマスクが大事なんだ




【2つめのPOV】シリーズ 第4回

「波」


パターンD〈ホロウマンのネガフィルム〉

おわり



Part.7につづく


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