ババヒロミさんのこと-2
前回の続き
そっと"ふう"と息をはいてから演奏が始まった。
数小節で唖然とした。
ネックを握る手や指先、押さえたコードで、自分の下手加減、無知無能を思い知る。(なぜか、ババさん、ごめんなさいって心の中で謝った。)
イサトさんのこの曲を弾いてみたいってときに何度かトライして挫折していたのでDADGADは知っていたけど、まさかそれで弾き語りをしてしまう方がいるなんて想像すらしていなかった。
そして歌が、始まる。
ババさんの緊張をこちらも受け取っているのだけれど、曲がすすむにつれ溶けていき、間奏がはじまるころにはなくなった。前の演者よりボリュームが小さくて、大丈夫かなぁなんて心配したのは余計なお世話で、間奏に入る前には気にならなくなっていた。PAさん、さすが。
自分が好きだからそう思ったんだろうって人がいるかも知れないけど、それは違うよ。前の演者のファンや関係者の方々(と思われる)の、ちいさな話し声、しわぶきなんかはすぐに消え、引き込まれていくのがわかる。ついでに聞いてみっか、どりどり、ふ~んって少し斜に構えていたのに、いつのまにかババさん視点で世界を眺めていて、アレ、アレレって感じ。
ババさんの、しっとりして、せつなくて、儚い歌声は、不思議な音色のするコードのメロディライン上を優雅にたゆたっていた。
ババヒロミさんは、すごかった。