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【特別公開】≪物語論から学ぶ2≫ あなたは『不思議の国のアリス』と『シンデレラ』のどちらが好きですか?

次代のプロ作家を育てるオンラインサロン"「私」物語化計画"の本編。タイトルは『物語論から学ぶ2 あなたは『不思議の国のアリス』と『シンデレラ』のどちらが好きですか?』。2つの有名な児童文学の傑作を物語論(ナラトロジー)に沿って解説されている。

扱うのは『不思議の国のアリス』と『シンデレラ』である。あなたはどちらが好きですか?

引用:物語論から学ぶ2 あなたは『不思議の国のアリス』と『シンデレラ』のどちらが好きですか? 山川健一

Webサイト上にテキストの冒頭部分が特別公開されている。まずは、これををチェックした上で、わたしの感想を読んでいただければと思う。

わたしの感想

『不思議の国のアリス』と『シンデレラ』である。あなたはどちらが好きですか?

断然、『不思議のアリス』だな。

『不思議のアリス』には少なからずの思い入れがある。それほど影響を受けたり、何度も読み返したりしたわけではないのだが、わたしの読書遍歴を語る上で、おそらく欠かせない作品だ。

初めて『不思議のアリス』の本を手にとったのは小学生の高学年ぐらいだった。なぜ、『不思議のアリス』を読もうと思ったのかはまるで覚えていない。佐藤さとるのファンタジー小説を読んでいたからのような気もするが、それ以前に自分の本棚に『不思議のアリス』が並んでいた。記憶は確かではない。あまりに昔なので忘れてしまった。

家にあったのは岩波少年文庫。緑色の表紙にモノクロのイラストが印象的だった。これこれ。これ。ググってみて気がついたけれど、このバージョンは『ふしぎの国のアリス』と不思議がひらがな表記だったのね。

どうして『不思議のアリス』が読書遍歴の1ページに刻み込まれているかのといえば、初めて手にとったときに途中で読むのをやめてしまったからだ。外国の登場人物名が苦手な人もいるらしいが(中学入試で物語文に海外翻訳が出題されると正解率が一気に下がる)、海外ミステリーを愛読していたのでその点は苦ではなかった。

断念したのは物語がぶっ飛んでいたからだ。

岩波少年文庫には読む人の対象学年が記してあった。たしか『不思議のアリス』は中学生向きだったんじゃないかな?ちょっと自信がない。たぶん、本文の文章につかわれている漢字によって対象が分けられていたんだよね。でも、大人向けの文庫本をふつうに読んでいた(知らない漢字は飛ばせばよい)ので、『不思議のアリス』の文章そのものが難しいとは感じていなかった。

もう一度、書く。

途中で放り投げだしてしまったのは『不思議のアリス』の物語がぶっ飛んでいたからだ。

「ぶっ飛んでいた」をもう少し丁寧に説明すれば、その当時の年齢(11歳ぐらい)の想像できる領域を軽々と超えていたのだ。たいていの物語は読んでいる最中に次の展開がどうなるのか?なんて妄想したりする。『不思議のアリス』はその妄想のどれにも当てはまらず、文字を追いながら迷子になって困惑してしまったのだ。

それから数年後、本棚の奥にしまわれていた『不思議のアリス』を読み直した。そのときは最後まで読み切ったはずだ。でも、『不思議のアリス』の世界観を、その世界観が意味することをまったく読み取れなかった。なので、意地になってきて『不思議のアリス』やルイス・キャロルの研究本にまで手を伸ばした。例えば、下みたいな本。もちろん、続編である『鏡の国のアリス』も読んだ。

誤解を承知で『不思議のアリス』がどのような本なのかまとめてしまえば、数学者であるルイス・キャロルが少女アリス・リデルの気を惹くために語った即興の物語を書き直して、彼女に自家本をプレゼントしたら周囲の人に好評で世界中に広まってしまったラブレターみたいなもの。

そういう感じかな。

「アリス」という物語はアリス・リデルの個人的な思惑を遥かに超えた創造性を秘めている。だから、多くの人が「アリス」をモチーフにした作品を残したりする。

映画ならヴィム・ヴェンダース監督の『都会のアリス』。ロードムービーの傑作だ。

そういえば、『都会のアリス』って曲もあった。今はなき佐久間正英さんがプロデュースしたアーバンギャルドの曲。

世界中にどれほどの「アリス」から誕生した作品があるんだろ?

オンラインサロン"「私」物語化計画"の非公開Facebookページ上で会員さんたちがカキコミしているのだけど、『不思議の国のアリス』のほうが断然、人気が高かった。

みんな好きだよね、アリス。

でも、これはやりすぎだと思うけどね。

ひとつだけ『不思議の国のアリス』にケチをつけるなら、それはラストだ。夢オチはファンタジー小説で、よほどの説得力がない限り使ってはいけない。反則技だ。佐藤さとるさんもその点を指摘していた。

ただ、LSDでキメていたアリスが平常に戻ってきたメタファーだと理解すればアリといえばアリかもしれない。

なんて、元本や研究本を読み直したりした10代後半からずっと思っている。


Text:Atsushi Yoshikawa

(注)感想はあくまでも、わたし個人の感想です。決して、"「私」物語化計画"の講義に対する正答や正解ではありません。

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