【特別公開】≪いよいよ旅立ちだ! 2≫ 『「私」物語化計画』
次代のプロ作家を育てるオンラインサロン"「私」物語化計画"の本編。前回に引き続き、小説の旅立ち=『すなわち1行目を書くということだ』についての講義となっている。タイトルは『いよいよ旅立ちだ! 2』。
サロンの主催、山川健一さんは2011年に東北芸術工科大学芸術学部文芸学科の学科長として以来、ナラトロジー(物語論)と真摯に向かい合ってきた。
今回は小説を書くことと深く関わりながら、しかし実際には「自分探しの旅」のほうにもっと深く根ざしている話をしたいと思う。
これは、大学の教員をやることになり、ナラトロジーを学ぶことになった、僕なりの最新の知見である。
特別公開:いよいよ旅立ちだ! 2 山川健一 より
Webサイト上にテキストの冒頭部分が特別公開されている。以下、山川健一さんによる講義の概要動画とWebサイトのリンクを貼った。まずは、この2つをチェックした上で、わたしの感想を読んでいただければと思う。
以下、この講義を読んでの、わたし個人の感想だ。
わたしの感想
今回の講義はこれから小説を書こうと思っている人たちにとって、かなり刺激に満ちあふれた内容である。Facebookの非公開グループにアップされた講義はオンラインサロン参加者のみが読める。部外者にはその内容を教えられない。もちろん、このテキストで引用することもご法度だ。
残念……。とても残念。
内容に関連することも、このテキストには書けない。なので、別の、といっても微妙に関係することなのだけれど、話題でお茶をにごしておく。それは「宗教」だ。
かつてミックジャガーが「ロックンロールとは、若い連中にとってはちょっとした楽しみで、しかし俺にとってはもはや宗教だ」と述べたが、ナラトロジーとは僕にとってはもはや宗教なのかもしれない。
また、ローリング・ストーンズ? 健さん、変わってないな。というツッコミはさておき。「宗教」について、これまで読んできた本などを挙げながら、ふらふらと書き連ねていこうかと思う。
祖母がお寺に住んでいたので、幼い頃から宗教(仏教)は身近なものだった。また、京都市内にはお寺が多い。地図を見れば、サンスクリット語に由来する卍マークだらけである。なので、日本にずっとへばりついてきた一般ピープルとは少しばかり「宗教」への親しみ感が異なるかもしれない。
「チベットのモーツァルト」
その昔、ニュー・アカデミズムと呼ばれる波があって、代表的な本としては浅田彰の「構造と力」かな。ご多分にもれず、この波にのった時期があった。で、その頃に出会ったのが中沢新一「チベットのモーツァルト」。
内容としてはチベット密教と現代思想をごちゃまぜにしたものだ。頭で考えたものだけでなく、実際の体験(フィールドワーク)を元にしている点が興味深かった。中沢新一さんの著作は何冊も読んだけれど、やはり最初に読んだこれと細野晴臣さんとの共著「観光」が印象に残っている。
「密教の本」 NEW SIGHT MOOK Books Esoterica
宗教に限らず、どのようなジャンルでも、そのジャンルに深く関わる本を読んでいると、知識が足らねえなと感じる。
例えば、ローリング・ストーンズ。1971年にアルバム『スティッキー・フィンガーズ』がリリースされました、ああ、1曲目の「ブラウン・シュガー」かっこいい……だけなら、それはそれでいい。ただ、ジャケットを手がけたのがアンディ・ウォーホルとか、「ブラウン・シュガー」ってアレの隠語だとか、ピアノで参加しているのはイアン・スチュワートといって、など。話を広げていくと、どうしても幅広い知識が必要になってくる。
宗教を体系的に、しかも入門編として役に立ったのが学研から発刊されていたNEW SIGHT MOOK Books Esoterica(NSMブックスエソテリカ宗教書)シリーズだった。「密教の本」がその第1弾。まるで辞書か辞典のような感じで購入していた。さすがにすべてを集めることはなかったけれど、今でも何冊か置いてある。
「日出処の天子」
最後はマンガ。山岸凉子「日出処の天子」。正確にいえば、歴史物に入るんだろう。でも、このマンガの魅力は山岸凉子の繊細な筆力と、厩戸皇子(聖徳太子)を超人に設定してしまったことだ。超能力という言葉で紹介されている場合が多いけれど、あれはどちらかといえば陰陽道だと思う。まあ、超・能力であることは正解なんだけど。この作品の元になった梅原猛「隠された十字架 - 法隆寺論」とあわせて読むのがよろしいかと。
山岸凉子の長編マンガでベストは「日出処の天子」でまちがいない。いや、これはマンガ史に残る大傑作。読んだことがないのは人生少し損をしているというやつ。でも、短編もいい。「わたしの人形は良い人形 」「蛭子」「ハーピー」「狐女」「天人唐草」……。ひとつを選ぶのはとても難しいが、あえて選ぶとすれば「汐の声」。何度読み返しても鳥肌がたつ。文字通りの鳥肌もの。
宗教に興味があるからといって、それは宗教全般やそれにまつわる諸々であって、ひとつの宗教に傾倒するとか、そういうことは今までもそしてこれからもたぶんないと思う。いわゆるカルトやトンデモ系に盲信している人を見かけたりして、「ああ……(ため息)」と残念に感じているあいだはだいじょうぶだろう。
たぶん、たぶん。ほら、人間って弱い心の持ち主だから、絶対なんて言える、言い切れるわけがない。それに、現在当たり前に信じていること(常識)が未来でくつがえされるかもしれないからね。いつも、いつでも一歩引いて、深く深呼吸をして、あらゆる物事を批判的に俯瞰することは忘れないようにしたいなと。
Text:Atsushi Yoshikawa
(注)感想はあくまでも、わたし個人の感想です。決して、"「私」物語化計画"の講義に対する正答や正解ではありません。
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