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【特別公開】≪小説と僕らの人生のプロット2 ≫ 「モラハラ男との恋愛」

次代のプロ作家を育てるオンラインサロン"「私」物語化計画"の本編。タイトルは『小説と僕らの人生のプロット2 「モラハラ男との恋愛」』。前回の講義をふまえ、プロットとストーリーの違い、プロットとはどういものなのかを具体的な例を挙げて説明している。

まずリマインドです。

「エピソード」→物語の中で起きている事。お話。
「ストーリー」→エピソードを時間軸に沿って並べたもの。
「プロット」→エピソードを因果関係をベースに再構成したもの。
プロットについて考えるのは、技術と言うよりはむしろ姿勢の問題なので、簡単な具体例に沿って説明しようと思う。

小説と僕らの人生のプロット 2 「モラハラ男との恋愛」 山川健一

Webサイト上にテキストの冒頭部分が特別公開されている。まずは、これををチェックした上で、わたしの感想を読んでいただければと思う。

わたしの感想

Webサイト上に特別公開されている一文を引用する。

小説を書く場合、多くの人がまずエピソードを思いつく。もちろん僕もそうです。これをつなげて、ストーリー化しようとする。するとプロットが置き去りになってしまい、リアリティーが失われる。こういうパターンが非常に多いのです。

イテテ……アイタタ……前回に引き続き、耳の痛い話だ。

さて、ここで、わたしの恥を晒そう。

時は2011年1月7日。オンラインサロン"「私」物語化計画"の主催、山川健一さんから返信のメールをもらった。まだ、健さんがアメーバブックスの編集長だった頃の話だ。わたしが自作の小説を送って、その感想というか、さまざまなアドバイスをいただいたのだ。細かい経緯は特に関係ないと思われるので、ここには書かない。

そのメールの一部を少し改変して、ここに貼ってみる。オンラインサロンでの内容を外部へ漏らすのはご法度だが、これなら問題ないだろう。抜粋なので意味がわかりにくいところがあるかもしれないが、その点はご勘弁いただきたい。

……は「曖昧さ」を好むところがあり、 以前読んだ『海燕』の候補作にも、それは感じられた。しかし、やり過ぎはよくない。

アドバイスを箇条書きにします。

描写が圧倒的に不足してます。端的に言って、「情景描写」「心理描写」「リアルタイムの会話」を加筆していくと、この小説は3倍の分量になるは ずです。

○……の箇所が説明っぽくなってしまっているが、こういう箇所をサボってはだめ。ストー リィに組み込む形で、主人公の視点で記述すること!

○この作品のテーマである部分に、主人公がなぜガツンとやられてしまったのか。もっとリアルに詳しく書くべきです。

○モノローグが多すぎて、読者は疲れます。なるべくリアルタイムで、会話もちゃんと書いたほうがいい。父や母と話すシーンなども、リアルタイムに すべきです。

……。

これはほんの一部だ。実際のメールはもっと長い。気になった点を太字にした。曖昧さ、描写が圧倒的に不足、サボってはだめ、もっとリアルに、なるべくリアルタイムで。つまりは、書けていないってことだ。

何を?

それは頭に描かれている小説以前のものを、小説という形に造形しきれていない。そういうことだ。小説の読み手は、書き手の脳にあるものが見えない。もし、見えたとしたら超能力者だ。ふつうの人に見えるはずもない。だから、書き手は言葉と文章で、頭に描かているものが目の前に見えるかのような細工をする。

それが小説のマジックだ。マジックにはタネがある。仕掛けもある。客席からどのように見えるか、どのように感じるか、そんなことを綿密に考えながら一挙手一投足を1ミリ単位で動かしていく。マジシャンに手抜きは許されない。手抜きすれば、マジックは魔法でなくなってしまう。完全に失敗だ。

プロットとは設計図だと言われる。いい加減な設計図ではまともな建物がつくれない。プロットの甘さはネジの緩みと同じだ。曖昧なプロットでつくられた小説は土台から崩れていく。読み手の想像に依存しすぎた小説は書き手の手抜きだ。いや、そのようなものを小説と呼ぶのが間違っているのかもしれない。

メールを読んだとき、そんなことを思っていた。

アドバイスをもらった小説がその後、どのようになったのかは別の話として、このメールをもらって以降、小説に対しての、小説というものの捉え方が明らかに変わった。常に第三者の視点を意識し、自分の描きたいものが目の前に文章に落とし込まれているか気にするようになった。

やっぱり、耳が痛いメールだわ。この文章をコピペするだけでも身が引き締まるよ。ピシッとね。

1万人のアマチュアに読んでもらうよりは1人のプロ、読み手のプロフェッショナルに読んでもらったほうが自分にとって良い場合がある。そんなことに気付かされたメールでもあった。何事をやるにもメンタルって重要だよ。


Text:Atsushi Yoshikawa

(注)感想はあくまでも、わたし個人の感想です。決して、"「私」物語化計画"の講義に対する正答や正解ではありません。

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