朝食を食べると…
「行ってきま〜す」
「ちょっと、ユキちゃん、朝ごはんは?!」
「いらなーい」
家を出ようとしたところで母に呼び止められた。
母は私をリビングのテーブルまで連れて行き、椅子に座らせると、
「もう行くんだけど?」
「これだけ食べて行きなさい」
トーストを指差し、そう言った。
「お腹空いてないってば」
「あのね、ユキちゃん。
朝食を食べないと頭や体に栄養が回らなくて勉強にも力が入らなくなるわ」
「でも…」
「夕飯をヘルシーなものにするから、ね?」
「…わかった」
私は渋々トーストを一口齧る。
カロリーを考えてジャムもバターも無しだ。
そうして1枚食べ終えると、
「じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
やっと母は私を解放した。
「ユキおはよ〜」
「カナちゃん、おはよう!」
通学途中、声をかけてきたのは小学校からの友達、カナちゃんだ。
カナちゃんは私の顔を見て聞いた。
「どうしたの?浮かない顔して?」
「お母さんがね、無理に朝食を食べさそうとしてくるのよ…」
「それはそれは」
「ダイエット中だってのに、困っちゃうよ全く」
「まぁ、お母さんもユキの体が心配なんだよ…」
「なになに?体調でも悪いの?」
その時、背後から男の人の声が聞こえてきた。
振り返るとそこには、
「や、山野くん!」
「田中、池田、おはよー」
なんと山野くんが!
山野くんは去年一緒のクラスで、サッカー部のキャプテンで、成績も良くて…
とにかくすごい人なんだ
「お、お、お、お、おはよー!」
「おぅ!で、どうしたの?田中体調でも悪いの?」
「ううん。朝ごはんの話してだけ!」
「そっか、朝メシ大事だからな〜食べないと元気出ないし!
ちゃんと食べて偉いな!」
「う、うん!」
「じゃ、また学校でな!」
「うん。またあとでね〜」
山野くんはさわやかにそう言うと自転車で颯爽と去っていった。
「よかったね〜」
カナちゃんがニヤニヤ顔でそう言った。
「え?何が?」
「べっつにぃ〜」
そのあと、私たちは笑顔で学校へ向かった。
* 4月8日 出発の日 *
味の素が制定。
四(し)八(はつ)で「しゅっぱつ」の語呂合せ。
新生活のスタートの時期にあわせ、乱れがちな生活リズムを整えるために朝食をきちんと摂るよう呼び掛ける。
引用:今日は何の日(https://www.nnh.to/04/08.html)
[ あとがき ]
始発の日。でもありですね!
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