上の日記念日
「ねぇ、まだ行かないの?」
「そうね、まだねぇ」
「あとどれくらい?」
「そうねぇ、どれくらいかしらねぇ」
おばあちゃんとこんなやり取りを始めてから約3時間。
僕は窓の外を見ながらソワソワしていた。
今日は僕にとって一大イベントの日。
家でじっとなんてしてられない。
「ねぇ、もうすぐかなぁ?」
「そうねぇ、もうすぐかもねぇ」
おばあちゃんは僕の質問に飽き飽きしながらも一応笑顔で答えてくれる。
その時、
プルルルルルルル
おばあちゃんの携帯電話が鳴った。
「あ、お父さんからよ」
「え?パパ?!」
どうやら電話の相手はパパからのようだ。
おばあちゃんはパパと少し話をすると、
「和くん、行くわよ!」
そう言って僕を家の外に連れ出した。
大通りでタクシーを拾い、おばあちゃんと2人で乗り込む。
僕はタクシーの窓から外を見つつ、なるべく平常心を装ったが、内心ワクワクとドキドキでたまらなかった。
10分ほどでタクシーは病院に到着。
お金を払ってゆっくり降りてくるおばあちゃんの手を引っ張って僕は中へ急いだ。
ロビーに着くとパパが出迎えてくれた。
そして、上の階に連れて行ってくれたんだ。
看護師さんに案内された部屋でしばらく待つと、白い毛布を抱えた看護師さんが現れた。
そして、
「おめでとうございます」
そう言って毛布を見せてくれたんだ。
僕たちはその毛布を覗き込んだ。
中には…
「か、かわいい!」
生まれたばかりの赤ちゃんが。
顔はしわくちゃで、手はちっちゃくて、なんだかふにゃふにゃしている。
僕は初めて見る赤ちゃんの顔に笑顔になって。
「初めまして、弟くん」
そう挨拶した。
* 3月7日 弟の日 *
姉妹型、兄弟型の研究で知られる漫画家の畑田国男氏が1992(平成4)年に提唱。
引用:今日は何の日(https://www.nnh.to/03/06.html)
[ あとがき ]
うちは弟はいないのですが、きっとお兄ちゃんはこんな気持ちだったんだろうなぁと思いつつ。。。
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