
AI導入で労働環境改善に成功。1時間の作業がわずか10分に
2023 年初頭から目覚ましい進化が話題となっている大規模言語モデル。いち早く業務へのトライアルを決め、活用しはじめたのが株式会社長野放送です。AI を活用した新たな働き方の中でどんなことに気がついたのか伺いました。
使ってみないことには何もわからない。遊び心とチャレンジ精神からAI導入へ
—— StoryHubを導入した理由を教えてください。
早川 英治(以下、早川)「業界では、人手不足の中でより魅力的なコンテンツを効率的に作り出していくにはどうしたらいいのかという課題を抱えています。そんななかでAIが登場したので、一度AIを活用してみて、自分たちの働き方や業務内容がどのくらい変わっていくのかチャレンジしてみようと思いました。使ってみないことには何もわからないですから。そんな遊び心とチャレンジ精神で導入を決めました」
藤澤 大(以下、藤澤)「使ってみないとわからないですよね。AIのような新しい技術は、みんなわからない所からスタートしています。だから使わずに足踏みしているよりは、活用しながら使い方を理解して、適応していった方がいい。最先端のテクノロジーを使わないことの機会損失は大きいと思いました」

StoryHubは料金体系がサブスク方式なので、チャレンジしやすくてよかったですね
—— チャレンジ精神と遊び心はメディア業界で働く人の大切な気質ですね。
早川「StoryHubは料金体系がサブスク方式なので、チャレンジしやすくてよかったですね。サブスクだから、実際に使い勝手を知った上で判断すればいい。あわなかったら解約すればいいので、まず触ってみましょうと社内でも説明しやすかったです」
藤澤「どんなサービスでも導入にイニシャルコストがかかると、コスト回収の収益シミュレーションが発生します。そこを限りなく低く抑えられたってのは本当に大きいですね」
—— StoryHubでは一ヶ月の無料トライアル期間も設けています。その期間にAIをどう社内の業務に活用していくか、良い共存方法を探ってもらえたらと思います。
進化し続けるAI。活用している間にも、品質向上を体感
—— StoryHubをどのように活用していますか?
藤澤「ARURAという長野県に密着したウェブマガジンで非常に重宝していて、プレスリリースや、ニュースリリースでも活用しています。記事に必要な素材をStoryHubに読み込ませて、StoryHubが提供しているプロンプトを利用して作成します。もちろん内容の事実確認や細かい表現のチェックは最後に人間が行いますが、文章の流れや見出しは非常に良いものがでてきますね。
肌感として、この半年ぐらいで相当アウトプットの品質が上がった印象です。言葉遣いやテンポなども、弊社のARURAの文体に合わせて制作してくれるようにもなりました。おかげで記事制作時間も短縮されて、クオリティーも上がっています。」
早川「語彙が豊富ですよね。以前と比べてかなり成長したと思います。国文学科を専攻している学生さんのような感じがしますよね。こちらで用意した素材を渡してリード文をStoryHubで生成した時も、とてもドラマチックな文章を紡ぎ出してくれて、その表現に関係者一同感動していましたよ」
—— AI将棋と人間のように、メディアの世界でもAIから人間がインスピレーションを受けるような世界がきているのかもしれませんね。
AIで試してみたらできちゃった、ということが結構あるので、考えるより手を動かして試してみるのがいいですね

—— ARURAでは、OAした番組の読み物記事も掲載されていますね。
藤澤「そうですね。今までは、人間が番組のオンエアチェックして書き起こしをやってたんですけれども、StoryHubを活用する他局の方から「StoryHubにナレーション台本を読み込ませたらいいものができた」と聞きました。そんなことできるわけないと思ってやってなかったんですけど、やってみたらできてしまって(笑)。
それ以来、StoryHubにナレーション原稿を読み込ませて読み物記事を制作しています。AIで試してみたらできちゃった、ということが結構あるので、考えるより手を動かして試してみるのがいいですね」
—— 試してみたらできちゃったことは、他にもありますか?
藤澤「Web記事以外の使い方でものすごく重宝した事例があります。私たち企画推進部ではイベント後にアンケート集計をする仕事があります。手書きのアンケートなので、癖の強い手書き文字を解読するのが大変で……」
—— なるほど……。
藤澤「一度はあきらめかけたんですけど、試しに手書きのアンケート用紙をPDFにしてAIに読み込ませたら、完璧とはいかないものの、一瞬で解析してくれたんです。しかも、アンケート結果を報告書にまとめてくれました。今までの人間の仕事は何だったんだろうと思ってしまいましたね(苦笑)」
—— StoryHubではアンケート結果をAIがグラフしてくれる機能もあるので、ぜひ活用してみてください。
1時間の文字起こしがわずか10分に! 残業時間が減り、労働環境の改善に繋がった
—— StoryHubを使い始めてから、社内でどんな変化がありましたか?
早川「報道部では残業時間の削減が大きな課題になっています。StoryHubを文字起こしに使うことが多いのですが、報道部ではこれまで文字起こしにかなりの時間を費やしていました。大体、夜のニュースが終わった後、文字起こしのために残業することがすごく多くて。StoryHubを導入してから、文字起こしのための残業時間が削減されたので、労働環境の改善にも繋がっています」
藤澤「文字起こしだと、今まで1時間くらいかかっていたものが、StoryHubを使うと10分ぐらいになりましたね」
—— その10分間はAIの処理時間なので、人間はお茶を飲んだりして一息つけますよね。
早川「以前は、制作部から同録と台本だけもらって、土曜日に出社して、4、5時間かけて記事を一本作ることもありましたからね。それでも、土日にがんばっても2本しか作れませんでした」
藤澤「これまで、台本のテキストを見て、オンエアVTRを何度も巻き戻し視聴しながら、耳で聞いたのを手入力していたんですよ。テキストにする時に映像から行間を想像して表現を足したりもしていました」
情報量が多ければ多いほど、AIのアウトプットのクオリティーは高くなると思います

—— AIが作る成果物のクオリティーについてはどう思いますか?
藤澤「情報量が多ければ多いほど、AIのアウトプットのクオリティーは高くなると思います。一度、情報量が少ない状態で記事を書かせてみたら、誇張しすぎていたり、無理して書いてる感じのアウトプットがかえってきました。だから使い方に気を付けないといけないかなとは思うのですが、業界的には少ない情報から記事を作るのではなく、たくさん取材して、豊富な素材をぎゅっとまとめることの方が多いので、今の所支障はないです」
早川「AIに、作り手である人間の意思を反映させるとより良くなる感じがしますね。どういう方向に持っていきたいのか、どうまとめたいのかをプロンプトにこめて伝えるのが大切だと思います」
—— AIに渡す情報の品質や、プロンプトにこめる意思などで成果物に大きく差がでると思います。取材を行ったり、成果物の方向性を決めたりするのは人間にしかできない仕事です。そこで、人間の能力が大事になってきますね。

将来的には、社会的に意義のある分野でのAI活用に期待
—— 今後、AIを活用して挑戦したいことや期待していることはありますか?
藤澤「今、AIによるテキスト生成がここまで充実しているので、画像生成の進化に期待しています。番組テロップや、デザイン性の高いフォント、ロゴが簡単に生成できるようになったら大きなインパクトがありますね」
早川「番組編成の立場から言うと、バリアフリー的な部分に活用できるといいなと思っています。生放送における字幕の付与であったり、緊急時の自動音声であったりですね。例えば、緊急時にアナウンサーがスタジオ等に到着するまでの間、デスク一人しかいないような状況でも、書いた原稿があればAIが自動で読み上げてくれるとかですね」
—— バリアフリーや、緊急時の対応は、費用対効果の問題で導入に悩んでしまうこともある分野ですよね。そういった社会的意義が高い部分でAIの活用が進んでいくと、私たちもとても嬉しいです。
インタビュー実施日時:2024年8月28日
<※2025年3月3日に当社は社名・プロダクト名を「StoryHub」に変更しました。名称変更に伴い、旧社名・旧プロダクト名を「StoryHub」に修正し再公開しました。 2025年3月3日 社内編集部>
お話を伺った人
編成業務局長 早川英治さん
企画推進部 副部長 藤澤大さん
株式会社長野放送

2024年で開局55周年。「NBS みんなの信州」や「土曜はこれダネッ!」などの人気番組を通じて地域に密着した情報を発信し、スポーツやコンサートなどのイベントも積極的に企画している。地域で最も愛されるテレビ局を目指して、信州の情報や文化を「わかりやすく」「丁寧に」発信することを心がけている。