
「やり慣れた方法」を効率化する。テレビ愛媛が目指す、AIと共存した働き方
日本のAI利用率は決して高いとはいえません。そのなかでAIツール「StoryHub」を導入してコンテンツ作成しているテレビ局の一つが、株式会社テレビ愛媛。
AIとの共存を模索しながら、地域に愛されるローカルメディアを目指す道のりについてお話を伺いました。
生成AI活用は17.3%にとどまる 半数以上が人材・ノウハウ不足に懸念
StoryHubはメディアが使いやすいよう特化していて、セキュリティ面でも安心
—— StoryHubをどのように活用していますか?
武市知大(以下、武市)「オンエア原稿を読み物記事化する時によく利用しています。すべてしゃべり口調になっているので、StoryHub導入前は記事にするために手打ちして修正しなければいけなくて大変でした」
—— StoryHub導入の決め手はなんでしょう?
武市「StoryHubはユーザーが入力した情報をAIの学習に使わないモデルのみを採用しており、情報漏洩のリスクを最小化するための堅牢なシステムを構築しているのが良いですね。最終的には複合的な判断で決めたのですが、やっぱりメディアに特化していて、こちらの要望を受けてカスタマイズしていってくださるっていうのが一番ですね」

SNS投稿文からリーガルチェック、データベース化まで。原稿の記事化以外の場面でも、AIをフル活用
—— 記事作成以外だと、どのような場面で利用していますか?
武市「記事作成以外だと、SNSの文章作成で使っています。あんまりSNS得意じゃなくて。SNS向けの文章って、自分じゃなかなか書けないですよ。StoryHubは絵文字や、ハッシュダグまでつけてくれるのでいいですよね。うまいこと改行もしてくれて。YouTubeのタイトル・概要作成でも使ってます」

武市「社内のデータ整理にも活用しています。例えば過去のCM考査事例の回答集っていうのがWord形式で大量にあるんですけど、今までうまく扱えていなかったんです。広告周りの仕事も手がおいつかなかった部分があって。それをStoryHubでCSVにして、データ構造化できました」
—— 日々の業務の効率化ではなくて、やりたかったけど未着手だった部分でしょうか。
武市「そうですね。今後、StoryHubで情報を整理して、色々データベース化して活用していけたらいいな、と思っています」
—— 情報整理は、AIの得意分野でもあります。
武市「契約書のリーガルチェックも得意だなと思いましたよ。契約書の内容で不利な条件があれば教えてください、と指示すると、気になる点を箇条書きで示してくれるので便利でした。リーガルチェック自体は法務がやってるんですけど、その前に私もチェックしたいなと思って活用しています」
—— 原稿作成などでのAI活用が「攻めのAI活用」だとしたら、契約書レビューは「守りのAI活用」ですね。先月新しくStoryHubに実装された画像生成の機能は利用されてますか?
武市「実用化には至っていませんが、遊び感覚で使っています。デザイナーにイメージを伝えるためにAIで色々画像を作ってもらったり。今まで口頭で伝えてたけど、それだと頭の中に浮かぶものって人それぞれ違うじゃないですか。こんな感じなんだよね、とAIで作成した画像を見せるとイメージを共有しやすいなと思います」

要約や文字起こし、情報収集に便利と、アナウンサーにも好評
—— 社内でどのような方が活用しているんでしょうか。
武市「使っているのは、若い人が多いんじゃないでしょうか」
—— アナウンサーの方にもお使いいただいているそうですね。
リサーチ、原稿の推敲、要約にStoryHubを活用しており、大変助かっています。例えば、花火大会についての情報をまとめる際に活用し、情報収集の効率化を図っていました。長い文章を簡潔に要約する機能は、ニュース原稿の作成時に非常に重宝しています。

特に助かるのが、専門家のインタビュー動画の文字起こしです。文字起こしが素早くできるので、業務のスピードアップにつながっています。その分、より深い取材や調査に時間を割けるようになりました。

—— 様々な場面でご活用いただいてますが、StoryHub導入時に感じた壁はありますか。
武市「スムーズに利用できましたよ。私はChatGPTが話題になり始めた頃に触っていたので、そこでAIとの対話のコツを掴めたのかも知れません。こういう質問は得意だけど、こういうのは苦手なんだな、というのがわかっていたところが大きかったのかも知れません」
—— いきなりマウンドに立つんじゃなくて練習用のグラウンドでAIとキャッチボールするみたいなことですか。
武市「キャッチボールする感じで遊んでみると、すごさや面白いポイントがわかってきたりします」
AIを活用するのは、長い間培ったノウハウを形にすることでもある
—— 日本ではまだAI利用はあまり浸透していないといわれていますが、どのような部分にハードルがあると思いますか?
武市「やっぱり、長い間やり慣れた方法っていうのが皆さんありますので。それをAIを使って、新しいやり方でやることにハードルを感じる人は多いと思います。
ただ、AIを活用するって、それぞれが長い間、暗黙のうちに培ってきたノウハウを形にすることでもあると思うんです。AIにプロンプトで指示を出すということは、自分の細かいこだわりやノウハウを文章化して指示をするということです。AIを使っていると、これまでのやり慣れたやり方を効率化しているなと感じます」
—— プロンプトでAIに指示を伝える時って、「自分たちってどんなことにこだわって仕事してるんだろう?」と考える機会になりますよね。まさに、日頃、無意識のうちにこなしている仕事の内容を言葉にして解き明かしていく作業だと思います。
武市「プロンプトを出す時に、仕事をどんどん分解していくっていう作業が発生しますね」
—— StoryHubに改善してほしい点はありますか。
武市「携帯電話でもっと使えるようになったら嬉しいですね。例えば、取材現場でスマートフォンを使って録音した内容を、帰社する間に文字起こしし、原稿の下書きまで完成させるといったワークフローができたらいいなと思っています」
—— まさにスマホで使えるようリニューアル予定なので、楽しみにしていてください!
※ 2024年9月1日にスマホ対応完了
「持続可能な愛媛」を有言実行にするために
—— 最後に、ローカルテレビ局として今後地域にどのような貢献をしていきたいですか?

栗田洋一「地域の情報流通の担い手であるローカルテレビ局として、良質な地域情報を届けることで街への愛着を育み、「持続可能な愛媛」を達成したいと考えています。創立55周年を機につくった「つながるっ!」というキャッチコピーのもと、テレビに加えて、動画、SNS、記事など様々なメディアを活用して、県民と一緒に地域を盛り上げていくつもりです。
地域の情報を積極的に取材・発信し続けるためには、コンテンツ制作の効率化・高品質化は非常に重要な課題。StoryHubは強力な「相棒」になると考えています」
インタビュー実施日時:2024年8月13日
<※2025年3月3日に当社は社名・プロダクト名を「StoryHub」に変更しました。名称変更に伴い、旧社名・旧プロダクト名を「StoryHub」に修正し再公開しました。 2025年3月3日 社内編集部>
お話を伺った人
執行役員 編成局長 栗田洋一さん
デジタルプロモーション部 兼 技術局技術部 武市知大さん
アナウンサー 鈴木瑠梨さん
アナウンサー 正本健太さん
株式会社テレビ愛媛

2024年12月10日で開局55周年。新たに掲げた「つながるっ!」のキャッチフレーズには、街・ひと・地域を繋ぎたいという思いが込められている。『つながるときっと楽しい』、『つながるとワクワクする愛媛が見えてきた』と思ってもらえるような放送、配信、事業活動等に一層邁進していく。