Story 7 ダンゴムシの初デート
マルデンネン婆さんは孫娘のマルリータがそわそわ、うきうきしているのを見逃しませんでした。
「マルリータ、いやにそわそわしているじゃないか。何があったんだい?」と聞きました。
マルリータはドキッ!
「何にもないよ、おばあちゃん!おばあちゃんの気のせいよ。」と何とかごまかしました。
マルデンネン婆さんは疑いつつも「そうかい。」と言って大好きな布団にもぐりこんで寝始めました。
「おばあちゃんたら変に勘がいいんだから」とマルリータはほっと一息。
マルリータがソワソワしているのには理由があったのです。
なんと、明日は大好きなダンプリオとの初デートの日!デートのことを考えるとウキウキが止まらなくなるのです。
「明日はどこに行くのかしら。ダンゴ山でハイキングなんて素敵ね。ダンプリオさんと足をつなぎながら山登りなんていいわね。きゃー。足をつなぐだなんて…。」とマルリータはその姿を想像してうっとり。
「でも…ダンプリオさんも私も足がいっぱいだから足をつなぐと、こんがらがって大変なことになるわ。こんがらがっているうちに大きな丸いかたまりになってしまって、ダンゴ山のあの坂から転がり落ちてしまったらどうしよう!」
「ダメだわ。山に行くのは危険、危険。」とマルリータはダンゴ山に行くのはやめなくちゃと思いました。
「そうだわ。ダンゴ池に行くのはどうかしら。ダンゴ池でネラレンターノ博士が作った葉っぱボートに乗るなんて素敵だわ。初デートにぴったり!ダンプリオさんと二人っきりでボートに乗るなんてワクワクしちゃう。」とマルリータはその姿を想像してうっとり。
「でも…もし風がピューっと吹いたらどうなるのかしら。葉っぱがひっくり返ってしまったら、ダンゴ池にボチャンよ、ボチャン。私もダンプリオさんも泳げないもの、池に落ちてしまったらどうしよう!」
「ダメだわ。池に行くのは危険、危険。」とマルリータはダンゴ池に行くのはやめなくちゃと思いました。
「そうだわ。ダンゴ草原に行くのはどうかしら。今の時期なら美味しい草がいっぱいはえているはず。美味しいものを食べながら語り合うなんてロマンチックだわ。」とマルリータはその姿を想像してうっとり。
「でも…もし草を食べるのをやめられなくて、ガツガツ食べてしまったらどうなるのかしら。私は草が大好きな食いしん坊。きっと草を食べるのをやめられなくなるわ。動けなくなるまで食べてダンゴ腹になってひっくり返ってしまう!ダンプリオさんがそんな姿を見たらどう思うかしら!」
「ダメだわ。草原に行くのは危険、危険。」とマルリータはダンゴ草原に行くのはやめなくちゃと思いました。
マルデンネン婆さんはそんなマルリータを布団からこっそりのぞいていました。
次の日、マルリータの家にダンプリオがやってきました。
「おはよう、準備はいいかい?」とダンプリオが聞くと、マルリータは、「ええ、いいわよ。それで今日はどこに行く?」と聞きました。
ダンプリオは「どこに行こうか考えていたんだけどさ、ダンゴ山でハイキングはどうだい?」とマルリータに聞きました。
「ええっ~!だめよ、だめ。ダンゴ山はだめよ。転がり落ちるのよ!」とマルリータは答えました。
ダンプリオはマルリータが何のことを言っているのかさっぱりわかりません。
「嫌なのかい?それじゃあ、ダンゴ池はどうだい?博士の葉っぱボートに乗ってみないかい?」と聞きました。
すると「ええっ~!だめよ、だめ。ダンゴ池はだめよ。ボチャンよ、ボチャン。」とマルリータは答えました。
ダンプリオはマルリータが何のことを言っているのかやっぱりわかりません。
「ダンゴ池もだめなのかい?それじゃあ、ダンゴ草原はどうだい?今は美味しい草がたくさん生えているからきっとお腹いっぱい食べられるよ。」とダンプリオは言いました。
マルリータは「ええっ~!だめよ、だめ。ダンゴ草原はだめよ。ダンゴ腹でひっくり返るのよ。」とマルリータは答えました。
ダンプリオはマルリータが何のことを言っているのか本当にわからなくて目が点になりました。
「ダンゴ山もダンゴ池もダンゴ草原もダメ。今日はやっぱりやめておきましょう。」とマルリータが言うと、
ダンプリオはとっても悲しそうな表情で、「わかったよ。それじゃあ、今日は帰るよ。」と言って、トボトボ帰っていきました。
ダンプリオが帰った後、マルリータは、「あ~、良かった。どこも危険だらけだから危なかったわ。」と言いました。
それを聞いたマルデンネン婆さんは、「マルリータ、危険はどこにあるんだい?」と聞きました。
「そこら中にあるわよ、おばあちゃん。ダンゴ山もダンゴ池もダンゴ草原も危険だらけよ。」とマルリータが言うと、
マルデンネン婆さんは、「いいや、危険はマルリータが作ったものさ。それにもし危険があったとしてもそれをダンプリオに言って2人で話し合わないとね。見たかい?あの悲しそうな顔を。初めてのデートを楽しみにしてたのにかわいそうなダンプリオだよ。」
「あんなにしょんぼりさせたんだ。お前が振られる危険の方が大きいんじゃないかい?」とマルデンネン婆さんはニヤッと笑って言いました。
それを聞いたマルリータは、「ダンプリオさ〜ん!」とダンプリオを追いかけて行きました。
「ダンプリオさん、ごめんなさい!今日のデートをとっても楽しみにしてたの。それで頭の中であれこれ考えていたんだけど、そうこうしているうちに転げ落ちたり、ボチャンってしたり、腹ダンゴでひっくり返ったりしたらどうしようって考えてしまったの。ダンプリオさんとお出かけするのが嫌だったわけじゃないの。今からでも一緒にお出かけできるかしら?」とマルリータは聞きました。
「もちろんさ。さあ、行こう!」とダンプリオは喜んで言いました。
ダンプリオの笑顔を見たマルリータは嬉しくてたまらなくなりました。
「大好きな人との時間を大切にすることが大事なことだったんだわ。それにしてもおばあちゃん、どうして今日が初デートの日って知っていたのかしら!?」
おしまい
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※毎晩息子に読み聞かせならぬ語り聞かせをしています。内容をどんどん忘れていくので書き留めていくことにしました。
「ダンゴムシのデート」はClubhouseというSNS内のお部屋「ゆりかごの歌クラブ」の中で「ダンゴムシ」シリーズが発展してできたお話です。とある方のデートのお話がとっても素敵でデートのお話を作ってみたくなりました。
「おやすみダンゴムシ」、「おはようダンゴムシ」もあわせてお読みいただけると幸いです。