蠍座アキュメン探索物語 ★ちゃぶ台返し★
ちゃぶ台返し 2016/11/17
「こんなこと、やってられるか!!ワァーー!!」
さっきまで一緒に働いていた作業員が、みるみる大きな火の塊に吸い込まれていくのを、新人作業員は怯えた目で見ていた。
「はい、ちゃぶ台返し発生。補充員1名お願いします。人手足んないだから、今度はちゃんとした奴送れや、クソ」
悪態をつきながら本部と連絡を取っていた現場監督に、新人作業員はおそるおそる質問した。
「あの〜、監督。ここにはちゃぶ台とかないですけど、ちゃぶ台返しって何ですか?」
「あ〜、お前新人だったな。クソ研修で説明聞かなかったのか?」
「あの、研修では、絶対に火の粉を被らないよう完全防備で臨むこと。それから普段から毒吐いているようにと言われました。」
「えー、それだけ?最近の研修は手抜きでやっぱりクソだな。あのな、ちゃぶ台返しっていうのはな、、、」と現場監督が説明を続けようとした時に…
「何でこんなことやらなきゃいけねぇんだよ!バッカヤロー!ワァーー!!」
二人の横で働いていた別の作業員が、また火の塊に吸い込まれて言った。
「とても面倒見の良い優しい良い方だったのに」新人作業員は残念そうに呟いた。
「お前ウザいから気をつけろ。ここでは、そういう良い奴に限ってやられんだよ。吐かない毒が体の中に溜まってな。ある日爆発すんのさ。するとあれに吸い込まれんだよ」
現場監督は大きな火の塊を指差しながら言った。
「だからちゃぶ台返しですか」
「そう。そうなる前に毒吐くんだよ。お前イライラすんな」
「熱っ!」
「何やってんだ、新人。トロいぞ。しっかりメット被ってねえと、やられんぞ!その火の粉を浴びてると、だんだん腹立ってくるんだ」
「えー!早く言ってくださいよ!熱っ!熱っ!イヤだー!もう、こんなとこ、いられっかよー!!ワァーー!!」
さっきまで話していた新人作業員もまた、大きな火の塊に吸い込まれていった。
「あいつ、来た早々にやられちまった。トロい奴だな。性格が良過ぎたか。クワバラクワバラ。あ、本部?ちゃぶ台返し連続発生。補充員2名お願いします。クソばっかじゃん。まともな奴送れやー」
現場監督はいつものように、毒を吐きながら本部に連絡を取った。
*アキュメンは蠍の尻尾の毒針にあたります。これにアクセスした時、線香花火のように火がパチパチして、顔が熱くなりました。そして、後からどんどん腹が立って来ました(現実の話です)。みなさん、毒は小出しにして吐きましょう、というお話でした(笑)