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ヨシ焼き
ヨシは水辺に群生している背の高い植物です。葦(アシ)と言ったほうが通じるかもしれませんね、元々の呼び名はアシでしたが、悪しにも通じるためヨシと呼ばれるようになったそうで、夏の日差しを遮るヨシズの材料としても利用されています。
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茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県の4県が接するエリアにヨシの群生地があります。4県に跨る広大な湿地、渡良瀬遊水地です。その中にあるハート型の谷中湖、元々は足尾銅山から流れてくる鉱毒を沈殿するために作られた人造湖ですが、近年は様々な目的で利用されています。足尾鉱毒事件に関しては、田中正造、谷中村強制廃村で検索すると詳細な資料が出てきますので、こちらでは割愛します。
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毎年3月中旬頃に、渡良瀬遊水地のヨシ焼きが行われます。大規模な野焼きですが、ヨシの育成促進や、外来種の駆除などが目的です。2012年にはラムサール条約にも登録され、ここでしか見られない貴重な動植物も生息しています。遊水地としては国内最大で、面積33km²、総貯水容量2億m³です。そんな広大な遊水地でいっせいに火を放ち、ヨシ原が燃え上がる状況は地獄絵図のような凄まじいもので、気象レーダーに煙が映るくらいです。
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ヨシ焼きには、珍しい気象現象を見られるという側面もあります。関東大震災や東京大空襲でも発生して多数の犠牲を出した「火災旋風」、煙が作る雲「火災積雲」、煙による光環などが見られます。
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春の風物詩として定着した感があるヨシ焼きですが、ここ数年は世の中の状況を踏まえて見学自粛要請が出ています。昨年は不審火により中止に追い込まれ、2020年以降は少々残念な状況が続いています。今年も3月中旬に開催予定ですが、世の中の状況や天気に左右されやすいため、主催者も苦労が尽きないことでしょう。
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