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天気にまつわるエトセトラ

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天気と文化、地域に伝わる伝承のまとめです。
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#気象

シーズン終わって思うこと

2024年のストームチェイスシーズンが終わりました。ご支援、ご声援いただいた皆様、ありがとうございました。今年は例年になく雷が多い年でしたが、事故無く無事に活動を行うことが出来ました。 毎年シーズン終了後にはあれこれ考えます。真っ先に思い浮かぶのが、四六時中天気に振り回される生活は今年限りで終わりにしたいということ。昼夜を問わずにやって来る雷を追うことは心身共に疲労しますし、金銭的な不安もあります。無事に乗り切ってシーズンオフを迎えると、ドッと疲れが出てもういいかと思うわけ

ディープな積乱雲の世界

白くて大きくてモコモコした雲、それが雲の王様「積乱雲」です。十種雲形・下層雲のひとつで、激しい雷雨や突風を発生させることもあるため雷雲とも呼ばれます。遠くから見ている分には雄大で、写真の被写体としても人気がある雲です。 積乱雲の発生条件はズバリ強い上昇気流です。上空に寒気が入ったり日射による地上の昇温など、上空と地上の気温差が大きい時や、前線や低気圧の周辺などに発生します。天気予報で使われる「大気の状態が不安定」がキーワードになります。短時間に急発達するため、大きな雲だな~

突風は竜巻だけじゃない

5月下旬から6月中旬にかけて、上空寒気の影響で関東地方の各地で荒れ模様でした。季節の変わり目には天気が荒れますが、今年は特に激しかったように感じます。5月27日には群馬県南部の太田市、邑楽郡邑楽町、邑楽郡千代田町、邑楽郡明和町、館林市で現象区別不明の突風が、同27日に茨城県筑西市でダウンバーストまたはガストフロントによる突風が発生しています。大粒の雹による被害が多発した6月2日には、埼玉県北部の深谷市、大里郡寄居町でダウンバーストまたはガストフロントによる突風が発生しています

SNSで拡散される天気の誤認識

天気に関して間違った認識のまま世間に広がっているものがいくつもあります。特にSNSでは間違った認識が訂正されずに拡散する傾向があり、気象関係の方々が苦労されている姿を度々目にします。 台風から変わった温帯低気圧今日現在台風14号が東進中であり、タイムリーな誤認識です。一般的に台風が温帯低気圧に変わると弱体化したと勘違いしている人が多いですが、それは大きな間違いです。単に性質が変わっただけで、危険なことに変わりありません。台風は中心付近で風が強く、内側にパワーを溜め込んでいる

夏の天気急変対応ガイド

梅雨末期に大荒れになった本州ですが、本格的な夏に向けて気を付けたい雲やシビアな現象のまとめです。まずは基本的なことからおさらいです。雷雨や豪雨をもたらす積乱雲、キーワードは上空の寒気です。ただし、寒気だけでは積乱雲は発生しません。湿った空気の流入や日射による昇温などが重なってはじめて積乱雲は発生します。天気予報でよく聞く大気の状態が不安定というワードを聞き逃さないことです。お天気アプリや気象レーダー、コミュニティFM受信アプリなどを導入しておくと役に立ちます。 世間一般に言

積乱雲のおなら

積乱雲の下では度々激しい現象が起こりますが、夏の北関東でよく起こるのが、落雷、ダウンバースト、ガストフロントです。その中でも被害が広範囲に及ぶダウンバーストは厄介です。 私がダウンバーストという言葉を初めて聞いたのは、忘れもしない1996年7月15日に地元の茨城県下館市(現筑西市)から栃木県小山市にかけて発生した国内最大級のダウンバーストでした。当時のスケールでF2、60m/sを超えるような突風です。被害幅は1,500mから3,000m、被害域は2.5kmから4km、住宅被

竜巻注意報ではない

発達した積乱雲が近づいてくる時に発表される「竜巻注意情報」ですが、相変わらず竜巻注意報や竜巻警報という人が多いですね。あれだけ言われているのに周知されないのですから、気象関係者も頭を抱えているでしょう。 そもそも竜巻注意情報とは何なのか、そこから説明します。*竜巻注意情報は、積乱雲の下で発生する竜巻、ダウンバーストなどの激しい突風(以下「竜巻等」)に対して注意を呼びかける情報で、雷注意報を補足する情報として発表します(*気象庁ホームページから引用)。つまり、注意報や警報の類

筑波ナライと砂埃

茨城県南東部から千葉県北部で、冬季に筑波山方面から吹いてくる冷たい北西風を「筑波ナライ(筑波おろし)」と呼びます。実際には吹き下ろしの風ではなく、いわゆる西高東低、冬型の気圧配置が強まった時に吹く風のことです。筑波ナライが吹く時は乾燥した晴天で、対象地域から筑波山が良く見えることから、そのような俗称が付いたのでしょう。ナライ、おろし(颪)と呼ばれる風は山越えの冷たい風のことで、赤城颪(上州空っ風)や六甲颪などがあります。筑波ナライは、日本海側から関東北部の山を越えて入ってくる