私はいつも助けられている~アナハイム2017
どうも、人気投票対象外のストーム久保です。
フランスのRed Bullアスリート選手「ルフィ」が今年から始まった「Capcom Cup2020人気投票」で1位に選ばれて、本選行きの権利を獲得しました。
その記念すべき出来事に久保はいつも通りかこつけて、ここぞとばかりに彼との思い出話(+α)を執筆した次第です。へへっ。
noteに思い出話をまとめた後に読み返して思ったのですが、ルフィが居なかったら私はプロゲーマーになっていなかったかもしれません。
あれは、分岐点だったのかもしれませんね。
エピソード:アナハイム
2017年12月、アメリカ・アナハイム。
スト5の世界大会「Capcom Cup2017」の当日予選へ出場して、負けた後から話を始めていきます。
予選で負けたので、正直アナハイムに居る理由がありません。
だからといっても、帰りの飛行機は予選を突破する前提で予約していたので、すぐには帰れないのが海外大会の辛いところ。
帰国日の3日後までは、どう足掻いてもアナハイムで生活しなければいけません。
「3日間、暇」という、負けたことを間接的に間抜けな形で認識させられる現状の虚しさやたるや。
しかし、せっかくここまで来て時間もあるなら、このまま世界大会の決勝を見て帰ろうと気持ちを切り替えました。
「Capcom Cup2017」最終日。
大会のTOP8以降の試合は、それまで大会会場になっていたヒルトンホテルではなく、アナハイムコンベンションセンターで開催されることに。
この移動先が私、いえ、私たちにとって大きな壁になるとは思ってもいませんでした…
入場料:80ドル
「Capcom Cup2017」最終日と同日、アナハイムコンベンションセンターでは、プレイステーションゲームの展示会【PlayStation Experience(PSX)】が開催されていました。
当時のCapcom Cupには、プレイステーションが協賛していました。
なのでPSXのイベントの一環として「Capcom Cup2017」のTOP8以降の試合が組み込まれていたのです。
世界中が注目する展示会、それに本場ディズニーリゾートがあるアナハイムという土地の場所代から入場料は80ドル。
決勝戦と新作ゲームが見られるなら、決して高くない値段設定だと私は思います!
しかし、この入場料を払うお金が私にはありませんでした...
いえ、本当は払えたはずなんです。
変な言い方だと思われますが、説明させてください。
そのために一旦、私がアナハイムに到着した頃に時を戻してとあるBADイベントの話をしていきます。
私たちが無一文になるまでの物語
アナハイム空港に到着した久保とMOVさん。
さっそく空港から宿泊先へ移動するために外へ出た瞬間、スーツの男に声をかけられます。
『どこに行くんだ?俺のタクシーで連れていってあげるよ』
物腰柔らかで笑顔が似合うその男は、わざわざ私達の荷物を持って車へと運んでくれました。
海外渡航経験のある方や、察しの良い方はわかると思いますが、空港近くで声をかけてくる奴は99.9%「ぼったくりタクシー(白タクシー)」です。
荷物を運んだのも、逃げられないようにするためなので要注意。
しかし長時間のフライトで疲れていた私たちは、白タクシーと疑うどころか
『いや~親切な人も居るもんだ(^.^)』とか言いながら、呑気に白タクシーに乗り込んでしまいます。
そして案の定、目的地間近になると突然普通のタクシー料金の何倍もする金額を要求されることに。
MOVさんが英語で抗議するも、ここまで乗ったなら払えの一点張りで断固として譲らない運転手。
法の外から要求された金額は、2人の手持ちを合わせても払えないほど高額。
払えないと伝えると、わざわざ近くの銀行まで運ばれて、お金の引き出しを強要されるMOVさん。
その間、タクシー内で人質として軟禁される久保。
しかし対応してなかったのか、銀行で引き出せなかったので最終的に久保が泣きます。
その姿に引いた運転手が、2人の有り金すべてで手を打ってようやく解放されました。本当に辛い思い出…
手元に残ったお金の写真があったので、貼っておきます
そんなことがあって、お金がありませんでした。
ぼったくられた後は、なんとかなけなしの貯金を引き出すことに成功しますが、それでも帰りの分のタクシー代を除くと食費も怪しいギリギリの状況...そんな状況で80ドルの入場料なんて、もちろん払えません。
チケット1枚なら2人で出し合えば買えそうでしたが、ここまで苦楽を共にした仲なのに、見れるのは1人だけなのはさすがに気が進みません。
そこで、あるチャンスに賭けることにしました。
出場選手から入場チケットを譲ってもらう大作戦
「Capcom Cup 2017」に出場している選手は、全員アナハイムコンベンションセンターへの入場チケットを運営からもらっていました。
そのチケットを譲ってくれる人がいないか、手当たり次第に当たる作戦です。
もしかすると、決勝の日に帰国する人もいるかもしれない。興味がないから見ない人がいるかもしれない。
僅かな希望を求めて、走り回りました…
思い当たる選手全員に聞いてみましたが、そんな都合が良いことは起きないものです。みんなも1年間頑張ってきた最後の締めに見たいですから。
もちろん返事は、全員No。
もはやこれまで。
このまま決勝戦は宿泊しているボロいモーテルのクソザコwifiを使用して、頻繁にカクつく映像で見るしかないのでしょう。
海外ドラマで逃亡犯とかが根城にしてそう
歩けばすぐ着く場所でやっているのに、ぼったくられたばかりに手が届かず...
そう考えたら心の底から悲しくなって、ホテルのロビーで項垂れて、最後は伏していました。
しばらく伏していると、突然誰かの声が聞こえました。
???『kubo…?』
名前を呼ばれたので、顔をあげてみるとそこに居たのは
2020年人気投票1位の男「ルフィ」
当時のルフィと久保の関係性は、正直薄かったです。
大会や対戦会で何度か対戦したことがありましたが、直接的なコミュニケーションは数回も無かったと思います。
そんな間柄のルフィが突然、伏してる私に声をかけてきたので驚きました。
思い当たる選手全員に書きましたが、思い当たらなかった選手には聞いていません。
ルフィもそのうちの1人だったので、ダメ元でチケットの件を訪ねてみることにしました。
すると、ルフィから思いもよらぬ返事が。
『俺は見れないと思うから、チケットをあげるよ』
そう言うとルフィはすぐにチケットを持ってきてくれて、私に手渡します。
そして、何の見返りを求めずに『Enjoy!』と言い残して去っていきました。
チケットをもらった時、まさに感謝の言葉もなかったです。
どうにか拙い『thank you』くらいは言えたと思いますが、それ以外にお礼はできていません。
助けてくれた理由が同じゲームコミュニティーの仲間だからなのか、伏していた久保があまりにも可哀想に見えたからなのか。
それとも、本当の優しさには理由が無いのかもしれません。
こうしてルフィの優しさでチケットをそろえることができた私達は、無事にアナハイムコンベンションセンターへと足を踏み入れられました。
「Capcom Cup 2017」決勝の舞台は、まさに豪華絢爛。「たかがゲーム」とまだ言われていた時代では考えられないほどの煌びやかさを放っていました。
比喩表現無しに「ゲームをやり切った者の夢の舞台」だったと思います。
しかも当時まだ無名だったドミニカの選手「MenaRD」が予選ではウメハラさんを倒して、TOP8入りを果たしていたのも夢を感じられるポイントでした。
MenaRDがもしも日本の強豪選手だらけのTOP8で優勝したら、私は来年夢を追って頑張れるはず...!今からでも遅くない、夢を見せてくれ!
そう言って、ドミニカ勢の近くに移動して応援していました。
そして、決勝戦でMenaRDは当時から最強と言われていたときどさんを倒して「Capcom Cup2017覇者」となります。
あの瞬間は、思わず関係ないけどドミニカ勢と一緒に壇上に上がってハグしそうになりました。(MOVさんに止められる)
2017年のアメリカ・アナハイムは、ルフィから優しさをもらって、MenaRDからは夢をもらった特別な年だったんです。
あの時があったからこそ、翌年に私は全力で人生を捨てゲーする覚悟で挑んで、今はプロゲーマーとして生活しています。
ありがとうルフィ、ありがとうMenaRD。
夢の舞台を見せてくれてありがとう。
特にルフィの人気投票1位は、納得の結果だと私は強く思います。
まだ返せてない分の恩は、いずれまた必ず。
以上、アナハイムのエピソードでした。
こんなあったかいエピソードを持っているなら、人気投票の投票受付期間中に公開するべきでは?と、疑問に思われた方がいらっしゃるかもしれません。
まぁ、あれです
誰かに肩入れすると、角が立つと思って傍観してました…
罵ってください!存分に!