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精子提供の現状と今できること
「精子提供」と言うと皆さんどのようなイメージをお持ちでしょうか。多くの方は「何か怪しい」「危ない」というイメージだと思います。つい先日もテレビで精子提供に関するニュースが取り上げられ話題となりました。精子提供者が学歴を詐称していたことによるトラブルです。
これに限らずトラブルは各所で起きており、メディアで取り上げられる機会も増えてきました。それ故に一般の方々にはマイナスのイメージが広まってしまっているように感じます。今回のニュースについても「親として無責任だ」「子供をアクセサリーのように扱っている」といった意見が多く出ており、感情的な批判を含めて多くの反響がありました。
しかしこのような事態になっているのには根深い理由があることを皆さんには是非知っていただきたいです。本記事ではその背景とStork開発に至るまでのきっかけを書かせてもらいます。
1. 誰が精子提供を必要としているのか
まず以下の言葉を聞いたことはありますでしょうか?
・性的マイノリティ(LGBT)
・事実婚カップル
・選択的シングルマザー
・男性不妊(無精子症)
聞き覚えのある言葉もあればそうでもない言葉もあるかと思います。これらに該当する方が子供を持ちたいと思った際に精子提供が必要となってきます。なぜなら生物学的に「女性」同士であれば「男性」の精子が必要となるためです。またパートナーが「男性」であったとしても無精子症と呼ばれ精液中に精子が存在しない方は第三者の精子が必要です。しかしこのような方々が精子提供を受けたいと思っても簡単に受けられないのが今の日本の現状なのです。
※出典:LGBT-法務省(https://www.moj.go.jp/JINKEN/LGBT/index.html)
2. 誰が精子ドナーとして活動しているのか
Twitterで「#精子提供」と検索すると個人で精子ドナーとして活動されている方が多く表示されます。自己紹介や検査結果等を載せている方もいれば、中には自分でHPを立ち上げて活動されている方もいらっしゃいます。
「何でそこまでして精子ドナーとして活動するの?」と思う方も多いかもしれません。身近に困っている人がいた経験から活動を始めた方もいれば、自身は家庭を持つことに興味はないが遺伝子を残したいという気持ちで活動をされている方もいるようです。
しかし包み隠さずに記載しますが、性的欲求を満たすために活動される方も一定数います。人の本心とは分からないもので、パッと見て真摯な印象を覚える人にもこのような方はいます。
(批判は覚悟で)筆者は男性なので敢えて擁護しますが、男性である以上本能としてこのような気持ちは誰しも少なからず持っていることは致し方ありません。このような本能があるが故に人間は種として存続している事実があることを受け入れざるを得ません。問題なのは自身を律することができない方が精子ドナーとして活動し、精子提供活動自体の信頼を損ねてしまう点にあります。
課題① 法整備が追いついていない
現行の法制度の中で精子提供を受ける方法は大きく以下の2通りです。
・公的な医療機関での精子提供(AID)
・海外の精子バンク
しかし残念ながらこれらは限られた人しか活用できないのが現状です。まず公的な医療機関での精子提供を受けるには「婚姻関係にある男女カップル」かつ「男性側が無精子症であることの証明」が必要となります。この時点で同性カップル、選択的シングルマザー、事実婚カップルは対象から外れてしまうのです。加えて精子ドナーとの面談は原則不可です。産まれた子供との面談を希望(出自を知る権利の保証)する提供依頼者が増えていることを受けて登録ドナーの方も減少傾向にあることも事実です。
海外の精子バンクは上記のような制約は比較的少ないです。ただし海外からの輸入が故に、高額な費用がかかってしまいます。加えて日本人ドナーは登録されておらず、原則外国人ドナーからの提供が前提となります。
課題② SNS上での精子提供者探しのリスク
精子提供者探しに限りませんが、SNS上での出会いには一定のリスクがあります。
・別人が来た
・タイミング法(性行為)を強要
・性病を持っていた
・その他個人情報の詐称
真摯な気持ちで活動されている方が大半でありますが、一部の方がモラルを欠いた対応をすることで全体のイメージが下がってしまうことは残念です。希望の条件にあった方を効率よく探せるメリットとのバランスを考えながら最終的には自己責任で活動を行う必要があります。
課題③ 精子ドナー側のリスクもある
精子提供に関わるトラブルの事例を見ると「男性側が必要な情報を隠して精子提供をしている」と感じる方も多いのではないでしょうか。確かに実際に精子ドナーとして活動されている方の大半は顔写真や本名は伏せています。やましいことをしている訳ではないのに何故?と思われるかもしれませんが、情報をできるだけ公開したくないと思う男性側の心理にも深い事情があります。
それは生まれた子供の法的な位置付けが曖昧であることです。性的マイノリティに対する理解も十分進んでいない日本では、生まれた子供に対する精子提供者の位置付けが明確に定義されていません。そのため母親側が養育費を請求してきた場合にも、ケースバイケースでの判断が下される立場にあります。そのため男性側は万が一に備えて身元を十分明かさない、もしくは依頼者の経済力を事前に確認する、といった対策を取られる方が多いのです。
3. 根本的な解決策
多くの人が主張されているように国が制度を整えることに尽きると思います。国が精子バンクを運用して、精子ドナーの安全性を担保するシステムを医療機関と一緒に構築することが一番であることは言うまでもありません。
ただし何事もそうですが国の制度を変えるには時間がかかります。本件も多くの人が声を上げていますが一朝一夕では物事が進まない可能性が高い状況です。一方で子供を望む方には多くの時間は残されていません。ただ待っているだけでは時間切れになってしまうのです。そこで現状の仕組みの中で少しでも安心安全な精子提供が実現できるようなサービスを提供できないか?というのがStorkを開発することになったきっかけです。
4. "今できること"の一つとしてのマッチングサービス
前述の通り根本的な解決策は国に仕組みを整えてもらうことです。しかし待つだけでは時間だけが過ぎてしまいます。現行の仕組みの中で自分たちでもできることをやっていくしかありません。
SNS上での精子提供者探しの最大の課題は「公開情報が正しいかどうかを裏付ける手段がない」点にあります。普段からSNSを利用する方なら分かるかもしれませんが、個人が発信する内容にはどうしても「自分をより良く見せよう」という気持ちが生まれてしまいます。その裏付けとしてプロフィールに自身の欠点を記載する方はほとんどおりません。
SNSという性質上、これは避けられないと思います。ただし精子提供という大事な選択においてはそれでは済ませられません。少なくとも以下の情報は第三者の確認が入った状態で活動されることが求められると思います。
・本人確認(18歳以上であることの確認)
・基本的な身体情報
・性病検査
・精液検査
・学歴確認
現状Storkでは「最低限これだけは」をカバーする意図で本人確認と身体データの入力を必須としております。これら以外にも第三者の認証が必要な項目があるという声は当然あるかと思います。Storkでも近々のアップデートで精子ドナーに依頼する認証項目を更に拡充していく予定です。
5. 最後に
Stork以外にも精子提供マッチングサービスは数多くあります。それぞれで運営に対する理念や考え方は異なると思いますので、登録を検討される際はご自身の考え方に合ったものを選ぶようにして下さい。
Storkに関して言えば、まず登録に電話番号が必要となります。なりすまし等を防ぐためです。更に精子ドナーとして登録される方には前述の通り、数多くの負担をお願いするものとなります。これも本記事で書いてきた背景を基にした運用なのでご理解いただけると幸いです。その上で精子提供を取り巻く環境の改善に向けて協力していただける精子ドナーの方がおりましたら是非ともご登録をお待ちしております!
<Android版>
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.surap.stork2
<iOS版>
https://testflight.apple.com/join/pOk0I70t
<公式HP>
https://www.storkbaby.jp/