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はじめまして、STORIAです。

みなさん、こんにちは。特定非営利活動法人 STORIAです。

STORIAは貧困の連鎖を断ち切り、「支えられる人」から「支える人」へと愛情が循環する社会を作る事をビジョンとしたNPOです。

2016年4月から仙台で活動を開始し、経済的困難を抱える子どもたちをサポートしています。貧困とその連鎖を断ち切ることを目指し、貧困家庭の小学生を対象とした「学習支援・食育・体験学習」の複合的な支援を行う居場所を地域と協働で開設しています。http://www.storia.or.jp/

昨年からはSTORIAの活動をより広く知ってもらうため、東京での月次勉強会も開始しました!

今回は6/29(土)18:00-20:30@グロービス東京校にてグラミン日本さんとともに開催した、STORIA初の合同イベントの様子をレポートしたいと思います。

<もくじ>
0 見えにくいから大変なこと、見えにくいけれど大切なこと 
1 組織紹介 STORIAとグラミン日本 精神的・経済的貧困に立ち向かう
2 実際の事例ケースを読んでグループディスカッション
3 みんなでパネルディスカッション
4 懇親会でのこぼれ話 自分を愛して、まわりも愛そう。


0 見えにくいから大変なこと、見えにくいけれど大切なこと 

日々、皆さんが暮らしている日本で「貧困」という言葉を聞いてもピンとこないかもしれません。誰もが同じように生活しているように見えて、実際には「相対的貧困」という目に見えにくい環境で行きている日本の子どもたちは7人に1人と言われています。

経済的な貧困は生きるために必要な力、特に自分自身を愛する力を生まれにくくしてしまうのではないのでしょうか。

貧困も愛も、目には見えにくいものですが、全ての人の周りにある存在です。

だからこそ、あらためて意識して考えてみたいテーマでもあります。


1 組織紹介 STORIAとグラミン日本 精神的・経済的貧困に立ち向かう

まずは東京校とオンライン含め20名の皆様を前に、各組織の紹介をしていただきました。
経済的な困難を抱える子どもたちに精神的なサポートを行うSTORIAの佐々木綾子さん。貧困とその連鎖を断ち切ることを目指し、貧困家庭の小学生を対象とした「学習支援・食育・体験学習」の複合的な支援を行う居場所を地域と協働で開設しています。

http://www.storia.or.jp/ 


経済的な困難を抱える大人たちに経済的なサポートを行うグラミン日本の百野公裕さん。「貧困のない、誰もが活き活きと生きられる社会へ」を理念とし、貧困や生活困窮の状態にある方々に低利・無担保で少額の融資を行っています。こうした方々が起業や就労によって貧困や生活困窮から脱却し自立するのを支援するマイクロファイナンス機関として2018年9月より事業を開始しています。

https://grameen.jp/ 


2 実際の事例ケースを読んでグループディスカッション

組織紹介後、参加頂いたみなさんには、経済的貧困の中にいる4歳の女の子さきちゃんのケースを読んでもらいました。

なぜこのようなことが起き、今後さきちゃんはどのようになっていくか?をテーブルごとにディスカッションしてもらいました。

実はこのさきちゃんのケースは本当にSTORIAに通っていた女の子をベースに作成しています。

会場の参加者からは様々な意見が出ていました。

「このような生活をしているのはさきちゃんのせいなのだろうか?」
「全く違う環境に生まれていたら、もっと愛情のある生活を送れていたはずではないか?」

現在、さきちゃんは中学生になりSTORIAを卒業し、STORIAの現場でジュニアサポーターとして子どもたちをフォローする存在になっています。

合わせてさきちゃんの母親の勤労状況にも介入し支援を行い、さきちゃんと一緒にいられる時間を増やせたことでお互いに心の安定が得られるようになりました。

STORIAの実活動を聞いた上で、さらに参加者からの質問があがります。

Q:さきちゃんはどのようにしてSTORIAに来てくれるようになったのですか?

A:市営団地内にある町内会さんの集会場をお借りし、学校と地域ネットワークを活用させていただいています。

Q:さきちゃんは自分が母の負担になっていると思い、自分を傷つけたり、責めるように考える事はなかったのですか?
A:STORIAに来た最初のころはそう思っていたようですが、STORIAでさきちゃんの可能性を信じて受け止めることで心の安定を得て、好きな事として映画の脚本を作り、他の子どもたちの世話をしてくれるまでになりました。

Q:さきちゃんのような状況では、施設に入ったほうが良いのでは?と他人ごとでは思ってしまうのですが…
A:相談所から見るとこの状況は虐待にはならないため、施設に話は通らないのです。

あらためて、普段の生活からはわからない現状や仕組みを知る事ができたのではないでしょうか。


3 みんなでパネルディスカッション

ここからは山中さんをモデレーターに迎え、佐々木さん、百野さんとのパネルディスカッションに移ります。

山中さん:実例を通して子供の貧困の実態が見えてきたのではないでしょうか。
では実際になにが根詰まりとして起きているのでしょう?
例えば江戸時代で貧しかったら助け合っていましたが、現代はどうでしょう?
現代のメカニズムは簡単に解決できるようになっていないのです。
家庭に負担を強いる予算関係になっており、構造として負の連鎖が回るようになってしまっています

Q:自己肯定感がUPするステップは?みんなそううまくいかないような…。きっかけはどんな感じなのでしょう?

佐々木さん:時間はかかってもきっと高まると思っています。そのためには自分が十分に愛されるという経験が大切です。親はなかなか子どもへかける時間がない中、第三者の大人がありのままの子どもたちを受け止める事で少しづつ自分を認めていけるようになっていくと感じています。STORIAでは加えて地域の方々が温かく接してくれるおかげで、子供たちは中学生になると支援する側に向かっていくのです。


百野さん:貧困という言葉は難しい。なぜならペルソナは人それぞれイメージするのが違うからです。シングルマザー、ワーキングプアなどのラベル化がその構造をより難しく見せていると思います。単純にラベリングしてセグメント分けできるわけではなく、ひとりひとりの人間であるだけです。

つまり一つの手段さえとれば解決できるというような構造ではなく、貧困という定義自体が曖昧なのです。構造が多種多様であることをまず理解することが重要です。

負の連鎖という言葉はあれど、逆の好循環とはなかなか言わないですね。
価値のないものをあるものに変えていくことがこれからのキーになるでしょう。
たとえば着物をアレンジして価値を付加していく。働く母親の価値を高めるなど…。
経済的自立というのはグラミンが一番重視していることですが、精神的な自立もセットで考えていきたいです。
また、経済的な自立ができていない人はいろんなことを知る機会も少ないのです。
彼らは普段TVを流しっぱなしですが、情報を浴びているだけで欲しい情報をどう取りに行くかも考えないし手段もありません。情報格差からの意欲格差もあるでしょう。

さらに、特に家族など大切な人にとっての情報は、愛が強い故に意外ととれないものです。

お二人のお話から、貧困は当事者だけでは解決が難しく、第三者を含めた取り組みが必要だと感じます。だからこそ、STORIAやグラミン日本といった団体や共感してくれるみなさんが必要なのです。

引き続き、会場から質問があがります。
Q:お金のない人がお金を持ってしまったら何に使うのでしょう?貧困の連鎖を断ち切りたいが、お金をもったとしても子供や学びに使うという思考がない人もいるのでは?
百野さん:グラミン日本では金融教育もしていて、何を大切にするのか?を本人に問いかけます。それぞれ大切にしたいものが違う中、5人教育でしっかりフォローしていく仕組みです。

佐々木さん:ストーリアは3つの組み合わせで貧困の連鎖を解決しようとしています。
①子どもへのアプローチ…自己肯定感は早いほど育みやすく、意欲は自己肯定感と紐づいています。
②親へのアプローチ…仕事や孤立へのフォローを行います。
③社会へのアプローチ…構造のひずみが貧困を招いているところもあり、ひとりひとりが自分事として理解していくことがまず必要です。


Q:貧困家庭の対象はどこにいて、どう線引きするのでしょうか?親からみたら客観的には貧困といっても当人が認めるかどうか…
佐々木さん:貧困というレッテルを貼りたくはないですが、収入を目安に考える(年間200万円以下)や保護を受けている状態とおきます。アプローチは地域連携、民生委員、行政とのつながりから紹介いただくこととしています。

Q:親と子供の関係性は弱まらないのでしょうか?
佐々木さん:むしろ良くなるようになっています。子と親、お互いの良いところ・成長が見えるようになり、子が親へそのことを手紙で書き伝えると親の肯定感も高まるのです。そしてお互いを受け止めるいい循環になっていきます。

Q:親に介入を拒絶されないのですか?
佐々木さん:もちろん拒絶される場合もありますが遠くで見守りつつ、相手の望む距離を保ちながら信頼をつくっていくことにしています。

Q:養育費踏み倒しのような法の改正など、父親の関わり方も課題なのでは?
百野さん:海外では強制的に天引きできる仕組みですが、日本はそのような法律がないのです。


貧困の現状や実際の対応、法律の関係性など様々な観点で質問があがりましたが、今後の大きな課題について百野さんが語りました。

百野さん:日本は施し支援(手当、保護)、つまり援助を受ける側の能力や意欲を信じていないという形が多いのです。しかし、本来ならば経済的自立を促すマインドセットをしないといけないはずです。18歳を過ぎると子が扶養を外れ、もらえる手当が減り、でも働くスキルのない親が貧困から抜け出せない状況になっています。
このような貧困の状況に対し、日本では自己責任論が多く、支援ムーブメントが起きにくいのが現状です。社会の認知そのものが課題を妨げる姿勢にもなっているのでしょうが、このような理解をどう広めていくのかが大きな課題です。

最後は東京校・オンライン参加の皆さん合わせて、記念撮影を行い、アンケートにもご協力いただきました。

結果として、参加者の半数の方がSTORIA・グラミン日本へ積極的に関わりたいと書いてくださり、とても素敵な時間になったなぁとスタッフ一同嬉しく思います。
STORIAでは今後も定期的に毎月の勉強会や、イベントを開催予定ですのでぜひチェックしてみてくださいね。

4 懇親会でのこぼれ話 自分を愛して、まわりも愛そう。

百野さんは懇親会まで参加してくださり、チャーミングな一面も見えた楽しい時間となりました。その中でおっしゃっていたことがとても心に響いたので皆さんにも共有したいと思います。

百野さん:普段の生活の中で、他人に対して「いいね!」をすることはあっても、自分に対してはなかなかないんですよね。でも、しっかりと自分に対しても「いいね!」をあげるのはとても大事なことだと思うんです。自分に対しても、周りに対しても「いいね!」ができるようにありたいですね。

このお話を聞いて、自分をまず愛し、まわりも愛せるようになったらいいなと感じました。
自分に「いいね!」をすることが最初の小さな一歩だとしても、それがつながっていくことで貧困といった大きな社会課題を解決するきっかけになるのだと思います。

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