短編小説 「赤ずきんと白毛のオオカミ」
森は緑が生い茂り、木々の葉は太陽の光を受けてキラキラと輝いていた。赤ずきんはその中を軽やかに歩いていた。手には、特製のラズベリーパイが入ったかごを持っていた。今日はおばあちゃんの誕生日。いつも元気なおばあちゃんに、美味しいパイを届けるための特別な日だ。
森の中を進むにつれて、赤ずきんの心はどんどん軽くなった。鳥のさえずりが耳に心地よく響き、小川のせせらぎが足元で涼しげな音を立てていた。道端には色とりどりの花が咲き誇り、その香りが風に乗って赤ずきんの鼻をくすぐった。
ところが、途中で何かが変わった。風の音が止まり、鳥の声も消え、森が不気味な静けさに包まれた。その時、赤ずきんは背筋がゾクッとする感覚を覚えた。唸り声が聞こえてきたのだ。彼女は立ち止まり、あたりを見回した。
すると、茂みの陰から白毛のオオカミが現れた。その目は鋭く光り、歯をむき出しにしてヨダレを垂らしながら赤ずきんを見つめていた。「こんにちは、赤ずきんちゃん」と低い声で言いながら、一歩一歩近づいてくるオオカミ。その目はまるで獲物を狙うハンターのようだった。
赤ずきんは恐怖で体が動かなくなった。オオカミは近づいてきて、今にも襲いかかろうとしている。彼女の心臓は激しく鼓動し、逃げるべきか、かごを盾にするべきか、とっさに思考が停止してしまった。
その瞬間、赤ずきんは思い出した。おばあちゃんの家はすぐそこだ。全力で走れば、きっと間に合うかもしれない。彼女は勇気を振り絞り、一気に駆け出した。オオカミも追いかけてくる。赤ずきんは必死で走り続け、ようやくおばあちゃんの家のドアを開けて飛び込んだ。
「おばあちゃん!」赤ずきんは叫びながら息を切らしてドアを閉めた。オオカミはドアの外で唸り声を上げながら爪でドアを引っ掻いている。
「どうしたの、赤ずきん?」おばあちゃんは冷静な声で言った。
「オオカミが追いかけてくるの!」赤ずきんは震える声で答えた。
おばあちゃんはゆっくりと立ち上がり、懐から猟銃を取り出した。「心配しないで。おばあちゃんがいるから大丈夫よ」その言葉に、赤ずきんは少しだけ安心した。
おばあちゃんはドアをそっと開け、オオカミが飛び込もうとした瞬間、猟銃を構えて引き金を引いた。轟音と共にオオカミはその場に倒れ込んだ。赤ずきんはその光景を見て驚きと安心が入り混じった感情で立ち尽くしていた。
「おばあちゃん、ありがとう……」赤ずきんは震える声で感謝を述べた。
「何も心配いらないわ。いつでも守ってあげるから」おばあちゃんは微笑みながら、赤ずきんを優しく抱きしめた。
二人は無事にラズベリーパイを楽しみ、おばあちゃんの誕生日は無事に祝われ、赤ずきんは再び森を歩いて帰った。森は再び平穏を取り戻し、鳥のさえずりが響く中、赤ずきんは心に新たな勇気を抱いて歩き続けた。
時間を割いてくれてありがとうございました。