#インボイスRADIO vol.9 参院選SP/元総務官僚・政策コンサルタント室伏謙一さん
2022年6月22日インボイスRADIO vol.9 第一部
元総務官僚・政策コンサルタント室伏謙一さん
ーー本日は参院選スペシャルということで二部構成になっています。第一部は元官僚、室伏政策研究室代表、政策コンサルタントの室伏謙一さんです。
室伏謙一さん(以降、室伏) よろしくお願いします。
ーー室伏さんは元総務省、旧総務庁ですかね。霞ヶ関の内部の話にかなり精通されている方だと思うのですが、室伏さんはそもそもこのインボイス制度について知られたのはいつ頃ですか?
室伏 名前を聞いたのが本当に数年前くらいです。あまりそれ自体がどういう問題なのかは意識していなかったです。それよりも消費税率を上げるということになっていたので、それをいかに阻止するかということばかりを考えていました。
ーー詳しい制度の話などは全然知らなかった、と。
室伏 そうです。僕もよくわかっていなかったですね。今はもう大体わかります。
ーー調べられたりだとかいろいろと把握できたというのはいつ頃ですか?
室伏 インボイスが問題になっているのは聞いていて、STOP!インボイスの皆さんと対談動画を撮る時(下記リンク)に、一応ちゃんと制度論を調べるのは元役員の性ですので、調べてみて、なるほどこうなっているのか、ということがわかったということですね。
(室伏謙一『霞が関リークス』公式チャンネル)
ーーなるほど、ある意味STOP!インボイスがきっかけの一つだったかもしれないということですね。
室伏 そうですね。「インボイスを止めなきゃいけないよね」という話をして、その悪影響はなんとなくわかっていましたが、制度論はどうなんだろうという話をすると友達なんかは、「え? でもインボイスって請求書でしょ?」と、返ってくる状態だったので、「なるほど、そうだよな。じゃあどう違うんだろう」という点が調べた結果わかったということですね。
だから、はっきり言えばSTOP!インボイスの方々の活動は非常に重要で、それがないと、そもそもインボイスを知らないとか、調べるということもないということです。問題は、「インボイス」とだけいうと、「請求書でしょう?」というぐらいの認識の人が非常に多いということだと思います。
ーーそうですね。STOP!インボイス代表の小泉が、21年末に活動を始めた時は、SNSで話題になるのは1日に10件くらいで、「インボイスって何?」という状態でした。
それが最近はSTOP!インボイスのハッシュタグ「 #私たちの未来にインボイス制度はいらない 」がトレンド入りをするなど、認知自体は進んできているのかな、という実感はあります。
室伏 この後も話しますが、はっきり言ってしまうと、インボイスというのは実質的には非課税事業者という制度をなくすということですから、おそらくそう言った方が「これまで俺たち消費税納めなくてよかったんだ」と思っている人たちが「えー!?」と、気がつくと思うんですよね。そこも、財務省の非常にトリッキーなやり方だと思うんですが。
ですので、「STOP!インボイス」と言うのとともに、「これは消費税を売上関係なく、すべての事業者に課税しよういう制度ですよ」と言った方がおそらく反響も大きいのではないかと思います。
ーーなるほど、確かにそうですね。インボイス制度自体は1989年の導入当初から議論には上がっていたみたいなんですよね。当時からインボイス制度をやってみて、いずれ軽減税率になるだろうから、先に入れておこうという話だったらしいのですが、業界団体から「インボイスではなくて帳簿方式でやってくれ」と反対をされたという経緯があったらしいんですね。室伏さんは、当時は官僚でいらしたんですか?
室伏 いや、消費税導入の当時なんかは、僕はまだ高校生ですから(笑)
ーーああ(笑)、失礼しました。
室伏 でも、あれは一般消費税構想があって、それが潰されてまた消費税というかたちで復活して3パーセントになったんですが、その時にどういう話があったかというのはメディアでも伝えられていなくて、今おっしゃった「インボイスか、帳簿方式か」という話に関しては、実はこれもまやかしというか、財務省的には騙しうる議論なんですよね。要するに帳簿というのは「領収書はどうしますか?」というだけの話になってしまっていますから、一応は適格請求書と保存方式という形で言っています。しかし、その心は何かというと、登録納税者の番号がない、請求書、領収書については仕入れ税額控除の対象にしないということですね。
ということになると、登録納税者にならないと、取引してもらえないかもしれないということで、そこが一番の重要なポイントです。
ーーおっしゃる通りです。
室伏 ところが、それを帳簿にするか、インボイス制度にするかという話にすると、単純に税務事務の話にしか見えないじゃないですか。そこが非常に、ある種汚いところというか、上手いところというか、そういうところだと思うんですよね。
ーー表面的には大きな問題ではないというように見せかけておいて、実は深掘りしていったらやばいぞ、ということは結構ありますよね。
室伏 あると思います。要はそういう危険な部分を概要ペーパーとかメディアに流すプレスリリースに書かないで、実はとんでもない話があるというのは最近の改正法案でも結構ありましたから。
ーーそういう部分を深掘りしていくと、「大袈裟に言うんじゃない」みたいな声もありますけれど、考えていけば、究極に突き詰めればそういう危険性があるというだけで、法案として欠陥があると言えるのでしょうか。
室伏 社会経済の影響からすると、非常に影響があるし、とんでもない法案ということは言えるんですけど、法案の欠陥ということになると、ごめんなさい、実はこれ非常に役人的な話になっていきてしまいますが、法制的な観点から欠陥があるかどうかということになると、それは欠陥にはならないという話になってしまうんですよ。
だから、そういう議論をした時に財務省側としては「法制局の審査を踏まえてこうしてますから」ということになると、議論が噛み合わなくなってしまうじゃないですか。
社会経済に多大な影響があるにもかかわらず、こんな法律を作ったという話と、法制的な観点から法技術的な観点からの中身の話は別に分けて考えなくてはいけなくて。財務省は反対意見を述べる言葉に応じて、上手く上手くすり抜けちゃうので。
ーーなぜ財務省の方々、官僚さんというのはそういう、いわゆるずる賢い、国民のためにならない方向に走っちゃうんですかね。
室伏 不思議でしょうがないですね。ちょっと後でも詳しく話したいと思いますが、結局、税って何かというと、あくまで財源ではなくて、政策調整の一つにすぎないわけです。
これを単純に考えると、個人事業主の方が多いという前提で話をしますが、いつ税金を払うかというと、その事業活動をした翌年の確定申告をして、その後税額が決まって払っていますよね。ところが、それが、例えば令和3年の税金として取れるわけじゃないですか。でも令和3年の事業活動はもう終わっていますよね。「これはおかしくないですか?」と、ちょっとそこから疑問を持って欲しいんです。
消費税だったらそうですよね。消費税は価格の一部を構成するものなので、第二法人税というか、第二事業税ですけれども、それを取られるのもその翌年ですよね。これを考えても税は財源になっていないわけですよね。そこからちょっとおかしいなとまず思っていただきたいんですけど、じゃあどうやって政府って支出してるのかというと、国債を発行して財源にするのが主ではありますけど、短期的には政府短期証券というものを発行して、それでお金を捻出しています。国債のように期間が長いか、数ヶ月かというだけの違いなので、(政府短期証券は)民国債なんですが、それによってお金を作って出しているだけなんです。これが実態です。財務省はこれをやっていますから当然わかっているはずなんですけれども。
ーー2020年の税額全体が確定したのが2021年の7月5日なんですよね。
室伏 そうです。スペンディングファースト、先にお金を使って後から税を払うというのは、そうしないと国民がお金を持っていないから、先にお金を使いなさいということで、これはMMT(現代貨幣理論)などにも書いてあって、当たり前の話なんですけどね。
お金を持っていないのに税金を払えと言っても払えないから、まずは国民経済にお金を供給して経済活動をしてもらって、そこからお金が多くなりすぎたらそれを上手く回収するとか、どこかにお金が溜まりすぎていたら、その偏在を調整するためのものが税なんですよね。
あとは何か特定の行為をさせないようにするための機能としてもあります。
あとは中野剛志さんなんかが書かれているのは、通貨の強制通用力です。日本円だったら日本円、アメリカだったら米ドル、中国だったら人民元ですけれども、それが、要はその国内で、強制的に通用するように税というのは設けられていると。その税金を日本だったら日本円で納めないといけません、アメリカだったら米ドルで納めないといけません、というのがあるので、それが流通すると。そのための機能を税が果たしているんだということを言っています。
要はそういうことなんですね。だから税金を取りすぎるということは、これは国民経済から貨幣を消滅させる行為になってしまうので、経済はどんどん縮小していくんです。
実際に消費税率を上げれば、消費は落ち、伸び率は鈍化します。そして消費税っていうのは取引の度にかけられて、転嫁なんてできていないわけですから、そうなるとどうなるかというと、多くの企業が身銭を切って税を払わなきゃいけないので苦しくなります。
僕が実際に相談を受けた話なんですけれども、優良企業が、消費税を払えなくなって、消費税倒産してしまっているんです。そういう企業がどうなるのかというと、場合によってはどこかの外資に買われてしまったり、その中で「綺麗にする」と称していろんなリストラをするので、雇用が失われてしまったりします。雇用が失われるということはその地域の消費がまた縮小することになりますから、総じて日本という国が縮小するということです。
でかくなりすぎている、お金がじゃぶじゃぶになっていて、消費も物凄くなっていて、とにかく需要に供給が追いつかない、インフレ率がどんどん上がっているという場合には、それに冷や水をかけて、ちょっと冷静になりましょうね、というための手段として税金は良いわけなので、頭ごなしに税金を否定するわけではなく、そのための機能というものがあるので、上手く使いましょうということなんです。けれど、どう考えても今の消費税の在り方っておかしいだろう、ということなんです。
ーーそんな消費税の対象をさらに拡げるのがインボイス制度だと思うのです。
室伏 そうです。先ほど帳簿の話とか、保存様式うんぬんの話がありましたけれども、これは僕の推測ではありますが、結論から言いますと、このインボイス制度というのは、もともと消費税はすべての事業者を課税対象にしたかった。それが、まずは3000万円未満を非課税にしましょう、と。それが気がついてみると1000万円未満に下げてきた、と。今度はもう全部にしてしまえ、と。
しかしそう言うと、また500万円(未満は非課税に)だなんだかんだあるので、そうは言わずに、非課税事業者の仕組みは残したままで、実質的にすべての事業者を課税対象にする、そのためのある種の手段が、このインボイスだということがいえるのではないかと思います。
ーーなるほど。「免税事業者を全部撤廃します」と言うのではなく、選択肢を残すけれども、実質的にはそうではない、という感じですね。
室伏 そうです、そうです。
ーーそもそも免税点制度が3000万円だとか1000万円だとかのラインが設けられていたというのはどういう理由だったんですか?
室伏 経緯は読んでいないのでわかりませんけれど、おそらく、規模が小さな事業者には負担になるので、結局消費税というのは事業者にとって第二法人税ですから、だからそれはちょっと免税(非課税)にしましょうねという話があったのではないかなと。
当時の自民党というのは派閥の力が強かったので、侃侃諤諤の議論ができたんですよ。間違っている政策があれば、いろんな考え方を持った人間がいますから、止めるんです。そして止められたんですよね。小泉政権以降、今は止められなくなっちゃいましたけれど。
だからそういう中の党内のパワーバランスの結果として3000万円未満というバーが最初にできたんじゃないかと思うんですよね。
ーーインボイス制度でいうと消費税導入の際には、業界からの反発が強くて一回たち消えたようなんですが、ただその後の平成15年、2003年の税制調査会でもう一回インボイスの話題が出てきたようで、ここで「インボイス方式を採用する必要がある」と述べられているんですよね。一回たち消えになったものが復活してきてしまうというのは、室伏さんの見解ではどういう経緯があったと思われますか。
室伏 ごめんなさい、細かい経緯はわからないんですけれど、僕は平成15年には役人をやっていましたが、その時がどういう状況だったかというと、小泉純一郎政権です。その前の前の前の橋本龍太郎政権は財政構造改革法等をつくって、消費税を3パーセントから5パーセントにあげて、超緊縮財政を始めました。橋本さんはそれは間違ってましたということをはっきりおっしゃって、謝罪しているんですけれども、小渕恵三さんがこれではまずいと、財政構造改革法を凍結して、積極財政に行ったんですけれども、残念ながら小渕さんは亡くなりました。あの時の葬儀の時のことを覚えていますが、クリントン米大統領まで来ていて。
結局その後、「日本の財政はやばいんだ」と、単なるシーディングではなく、ということで、平成13年に小泉政権下でプライマリーバランス黒字化目標というのが入れられました。その時にプライマリーバランス黒字化目標を担当する経済財政担当大臣が誰かというと竹中平蔵さんです。はっきり言うとあの人がやりました。
それからですよ。初めは増税なき財政再建と言っていたんですが、徐々に徐々に増税に話がいったということです。そういうことだと思います。
ーー確かに、税制調査会のレポートを読んでいても「将来、複数税率が採用される場合には、適正かつ円滑な施行に資する観点から」と書いてあるんですよね。ということはこの段階で消費税を増税して、なおかつ複数税率を導入するつもりだったんだなというのが読み取れてしまうんですよ。
室伏 おそらくそれは、複数税率の話よりも、増税ありきなんだと思います。「増税、増税」と言うと抵抗があるので、複数税率というかたちを一応形式上はとって、とにかく最高税率としての税率の引き上げを実現しようとしていたということではないかと思います。
ーー中学とか高校の公民の教科書レベルで、「不景気には減税、好景気には増減」ということが書いてあるわけじゃないですか。それでも増税ありきですべてが進んでしまうのはなぜなんでしょうか。
室伏 なんでなんですかね。結局その財務省というのは財政健全化をすることを目標にしている役所ですから、彼らの頭の中では国債発行ではなく、税収によってすべてを賄わなきゃいけないという、根拠なきというか間違っているんですけれども、完全に間違った考えが根付いているというのと、あとはそういう主張でずっと政策を進めてきてしまっていますから、今更あれは間違っていましたというのを言えないというところもあるのかなと思うんですけれども。
「無謬性(むびゅうせい)の神話」といって、役人は絶対間違わない、間違ったことを認めないというのがあるんですけれど、間違っていたらただ間違っていたと認めればいいだけの話で、実際間違っていましたと指摘をして、無くなった政策もあるんです。
そういう役割を総務省の行政評価局などがやっていて、僕は最後そこにいましたが、間違っているということを他の先端組織に言わせ、(政策を)やめるという方法は可能といえば可能なんです。実際にそう言うことがあったんですよ。
しかし税はそういうものの対象外でございますから(笑)。
ーー不可侵な分野なんですかね。
室伏 そうだと思いますね。
ーー本当は財政民主主義といったりして、国民が選挙で選んだ政治家がやって欲しいんですけどね。
室伏 そうなんです。本当は政治家が決断して、その状況に応じてちゃんと的確な判断を下さなければならないんですけど。
今ね、自民党なんか、ちゃんと分かっている議員もいますよ。だけど、全体的に質が低い、レベルが低い、全然政策のことがよくわかっていなくて、それっぽく言うことしかできない。
あとはウケが良い方に流れようとする風見鶏のような議員が出ちゃったりだとか、結局それも小泉総裁の時の小選挙区制度が悪いというのもあるんですが、おかしくなっちゃいましたよね。
ーー逆に言えば、国民の声さえ大きくなれば、そっちに流れてくれるっていうのもあるかもしれないですけどね。
室伏 岸田文雄政権って、人の話を聞くという面では世論迎合なんですけれども、世論にすごい大きな反発があれば、インボイス制度も少なくとも実施延期といったことは言うかもしれないです。
ただ岸田さんは財務省にべったりですからね。財務省のワンワンと言うか、言いなりですから。岸田さんに対しても藤井聡先生とかがさんざんレクチャーをして、正しい話をしているんですけど、わからないというか、考えていないんだと思いますよ。
ーー最後に2つほど質問をさせていただきたいのですが、どちらも繋がっていると思います。
1つ目は、インボイス制度というのは、やはりあまりにも国民に対して害が大きすぎる。直接的には免税事業者への実質的な増税、それに加えて、一般の方々にも、例えばもしかしたら好きな喫茶店が潰れてしまうかもしれないだとか、間接的な影響が甚大だと思うんです。さらにいえば消費税の増税に繋がるという可能性もある。そのようなインボイス制度が施行された際の危険性がどれだけあるのかということです。
2つ目は、その危険性を皆に知ってもらって、「インボイス制度を中止にしよう」という世論を醸成するためにはどういうことが必要だと思われますか。
室伏 まず一つ目の危険性については、言っていただいたとおり、いろんなところが潰れてくると思います。
特に中小零細企業中心にどんどん潰れますよ。そうなったら例えば商店街のお蕎麦屋さんとか、ああいうところはだいたい個人事業主の場合が多いですから、そういうところがばたばたと潰れていきます。
そうしたらどうなるかというと、また日本経済が縮小する。そして貧困化が進むでしょう。もしかしたらまた自殺率も上がるかもしれない。そういう状況です。
そこまでして、国民殺して、国民を貧困化、困窮化させてまでやる話なのかということなんですが、ある意味、財務省っていうのは「PB(プライマリーバランス)財政健全化教」という新興宗教の総本山みたいなところなので、ずっとそれを唱えてやっていかないといけないので、是が非でもやると思うんですけれど。
それは同時に何かというと、日本国内の供給能力を落とすことになりますから、さらに需要を縮小するだけではなく、供給能力を落とすことになりますから、この国は自分でいろいろなものを作れなくなってしまうかもしれない。
ということは日本が発展途上国への道を着実に歩んでいるということですが、発展途上国どころか、もう低開発国とか、そこまで至るかもしれないという状況なんです。
その一方で、例えばインバウンドがどうのこうのと言っていますが、それ自体も愚策でしかないですが、そのためにはそれに関わるいろんな事業者がいて、その中には中小零細もいっぱいいるわけです。観光というものを地域のミクロの視点でGDPを見た時には、多くを占めている地域があったとして、そういうところの事業者に大手はあまりいない。そういうところも潰れてしまうかもしれないんです。
そして「供給できません」ということになると、さらにその地域が疲弊するか、潰れるか潰れかかっている事業者を、またおそらく特に中国勢、外資が買いにくる。そしてどんどん日本の富が海外に流出して、日本が貧乏国家になってしまうわけです。
そういうかたちで国がどんどん衰退する、事業者がなくなっていく、自分の国で何も作れなくなっていく、と、とにかく何もいいことがないんです。
財務省がやっているのは、極端な話ではなく、衰退ならまだよくて、滅亡するかもしれないというぐらいのことです。
だからあの役所というのは中国政府の手先なんじゃないかと、思わざるを得ないようなことをやっているわけです。
ーー僕がそれを感じたのは2020年のマスク不足です。マスクが足りなくなったけれども、自分たちの国で生産ができなくて、結局中国に依存するしかなくなって、だけど中国も自国でコロナが出てしまって、マスクを配らなければいけないから、日本への供給を停止して、となった時に、マスクの転売が山ほど沸いたわけじゃないですか。
本当に自分の国で、自分たちが使うものを作るということの重要性が身に染みたんです。だけどインボイスはその真逆をいく。本当になぜこんなものが決まってしまうのか不思議でしょうがないです。
室伏 そもそも論でいうと、この話には時間を結構使ってしまうと思いますが、重要なポイントなのでちょっとトリッキーですが、頭に覚えておいていただきたいです。
例の日曜討論で、れいわ新選組の大石あきこさんが「消費税というのは実は社会保障の財源というよりも国債の消化の方にばかり使っているんだ」ということを言って、自民党の高市早苗さんが「嘘をつくな」ということを言いました。
大石さんが言ったことは客観的事実ですし、実は安倍元総理も国会でそのことを認めているので、要するに高市早苗さんは完全に墓穴を掘ってしまったんですけれども、さらにやめておけばいいのに「消費税の使途というのは消費税法の通りに定められています」ということをTwitterで言ったんです。
ーー言っていましたね。
室伏 でもじゃあそれは消費税法にどう書かれているかというと、一条第2項に消費税の消費についてはうんぬん、とあって、「消費税の収入については、地方交付税法に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための政策に要する経費に充てるものとする」と、書いてあるんです。
これは普通に読むと確かに書いているなと思うんですけれども「充てるものとする」というところが非常にトリッキーなんです。
結論としてはこれは「原則としては一応これに充てることにしましょうね」と言っているだけなんです。つまり、これは絶対これに充てなければならないのであれば、「充てなければならない」という風に書かなければならない。
これは技術的な話なんですけれども、それが書いてあるのは第一条の趣旨等というところなんです。第一条というのは目的を書くところで、二条にだいたい定義が書いてあって、三条以降が具体的な話になるので、もし、これが消費税の使途が法定されているというようなことを言うのであれば、三条以下で消費税の使途とそういった形の見出しがある条文に「消費税はこれこれに充てなければならない」と書いていなければいけないんです。
そういう観点からすると、そもそも財源ではないのですが、もともと消費税は社会保障の財源だけに充てるつもりではなくて、いろんなものに使える新しいお財布として作ったということが明らかだと思うんですよね。
始めは直間比率の見直しとかそういうことを言っていたわけで、社会保障と言い出したのは後からです。そこも大きな問題なんですよ。別の言い方をすれば、国民経済から通貨を吸収する通路をもう一つ確保したということですから、つまり国民経済を縮小させるための道具を財務省が得たということなんですよね。
ーーしかもそれが、非常に逆進性の強い消費税だったというのがまた闇が深いところですよね。
室伏 そうです、だからそういうところまで考えると極めて危険なんですよ。
では、これに対してどう戦うべきか(二つ目の質問)ということになるんですが、まずは消費税の危険性、税が財源ではないということがわからない人もいるという話ですが、これは賛成とか反対とかではなく、単なる事実ですから、半信半疑に思っていたとしても、例えば私と森井じゅんさんの対談動画(以下のリンク)とか、最近僕はそういうことを言うので地上波が呼んでくれないのでね。チャンネル桜なんかで話していますから、それをぜひいろいろと観ていただきたいと思うんですが、まずはとにかく事実関係を知っていただく。
(室伏謙一『霞が関リークス』公式チャンネル)
消費税の実態は社会保障の財源でもなんでもなくて、ただの財務省の第二の財布というか、そういうものでしかないですよということ。
であるから、要は日本経済を縮小させるものでしかない。需要を収縮させるものでしかない。ということは、皆さんの生活を貧しく、困窮させるものでしかないということをまず知っていただくこと。
その上で、インボイスという制度がどういうものかということをまず今日お話ししてきましたけど、知っていただくということが第一点。
その上で、そのことをより多くの人に知ってもらうということです。おそらく、インボイスについては関心のある人が本当に少ないと思うんですよ。
ーーそうですね。
室伏 最近、インボイス廃止ということを各党が言い始めました。れいわ新撰組だけでなく、立憲民主も、この後登場する落合(貴之)さんなんかが主導した消費税減税法案なんかにもこれが確か書かれていると思いますから。
ただみんなそういうことを言われてもポカーンという反応だったり、「請求書じゃないの?」としか思っていなかったりしますが、実はインボイス制度とは消費税の課税対象を拡げる、「皆さん全員が消費税を納めろ」という、とんでもない話なんですよ、ということをぜひ広めていただくことです。
そういうことになれば、あらゆる国民がいろんな形で苦悩することになるんですよということです。
そしてこれに反対の声を上げる方向に繋げていかなくてはいけないということですね。
その反対の声を上げ、行動を起こす非常に重要な機会が今回の参議院議員選挙であるということです。
もう40分になってしまいましたが、もうちょっといいですか?
ーーはい、もう少しお願いします。
室伏 「(インボイス制度が)どうやって決められているんですか?」というのがお題としてあったのに、その話が全然できていなかったので、手短に話をしますけど、自民党の与党の税制調査会が一番力を持っています。ここで決まってくるんですね。
ここに各業界からの要望をさまざまな部の長が取りまとめて、部会経由でそれを説明して報告をして、そこから決まっていく›んですけれども、自民党の税制会長、税制調査会の会長というのは物凄い権限を持っているのです。
今そこに誰が就いているのかというと今はというかだいたいそうなんですが、元大蔵官僚が就いています。宮沢洋一さんという方なんですが。
その下にいるのも野田毅さん、この前の衆院選で落ちちゃいましたけど。あの方も元大蔵省でしょう。要するに自民党のメンバーを見ても、元大蔵官僚って多いんですよ。西田昌司さんみたいなまともな人もいてそういう人がストッパーにはなっているんですけど、いかんせん緊縮増税、かつ元財務官僚の人が多いので、なかなかそう簡単に西田さん一人では、横を通り過ぎていってしまうということがあるんですよね。
自民党内で積極財政派の人たちが頑張ってはいるんですけれども、結局決まるのはインナーという4人ぐらいで決まってしまうので、そこには口出しができないという状況になってしまっているというわけなんです。
公選法の話もあるのでぼやかして言いますけど、ぜひそういうド緊縮、増税推進派の議員を今回、落ちていただかないと。党派問わずですが、立憲民主の中にもド緊縮増税派がいますからね。誰とは言いません。千葉の方の衆議院議員ですけれども。そういう議員はもうできる限り落ちていただくという方向で、皆さんに頑張っていただくということしかないのかと思います。今回に関しては。
参院選全然関心が高まっていないんですけれども、それでもTwitterでこういうところを聴かれている方々って関心があると思いますし、実際今日ちょっと聴きたかったんだけど仕事や用事で聴けなかったという人がいると思いますから、是非そういう人にね。
これは聴き逃し視聴とかはできるんですか?
ーーはい。録音と、YouTubeアップされます。
室伏 そうですか。ぜひそれを拡散してもらって、問題意識を高めてもらう、まずはそこからかなと。しかも今回は参院選挙で コストプッシュインフレで皆さん困っている状況ですから、そういう意味でいうと、逆に関心を高めやすいというか、注意喚起に反応しやすい状況だと思いますから、是非そういうかたちで戦っていければなと思います。
ーーありがとうございます。これまでのSTOP!インボイスにはないなかなか刺激的な話がたくさん聞けたと思います。室伏さんありがとうございました。
室伏 時間をオーバーしてしまってごめんなさい。
ーーいえいえとんでもないです。ありがとうございました。
●この回の音声アーカイブ(YouTube)
●「インボイス制度」反対へのオンライン署名
Change.org のサイトから、簡単に署名ができます。ご賛同頂ける方は、ぜひリンク先からご署名ください。10万筆、20万筆と積み重ねることで、国を動かす大きな力になります。