経理担当者向け「インボイス制度」に関する意識調査(2023年9月4日速報版)
インボイス制度を考えるフリーランスの会は、企業の経理業務担当者に向けて、 2023年10月より開始されるインボイス制度についての意識調査を実施し、709名からの回答を得た。
企業経営によって重要な部署である経理部門におけるインボイス制度による影響を報告する。
💁★調査結果のトピック★💁
経理担当者のうち
▶︎ 88% が
インボイス制度は「導入すべきではない」「延期すべき」と考えている
▶︎ 33%が
インボイスによる業務の変化、増加の予想により、
「異動」もしくは「退職/転職」を考えている
● 経理部門の人数構成 ●
経理部4人以内という回答は全体の75%超を占める。
そのうち経理部を1人で担当する のは全体の43%。
日本の企業は営業などの直接部門(稼いでくる人)を重視する傾向に あり、経理のような間接部門(稼いでこないとされるところ)に人数を割かない傾向がある。
● 経理担当のインボイス認知度 ●
「名前は聞いたことがあるが内容を知らない」が1割弱の7.3%。
本来、インボイス制度について理解しておく必要がある経理部門であっても、1割弱の方が知らないということは、この制度の周知が不足していることの現れといえる。
● インボイス制度の導入についての経理担当者の考え ●
インボイス制度について「将来的にも導入するべきでない」「導入時期は延期すべき」と回答した者をあわせると9割弱の88%となった。経理を生業としている大多数が、インボイス制度に反対している結果となった。
「導入するべきではない」「延期すべき」と答えた理由の1位は「事務負担が大きいから」82.9%となっており、煩雑で非生産的な業務(ブルシットジョブ)を、今後ずっと押し付けられてしまうことの危惧が現れていると読み取れる。
● 免税事業者との取引が敬遠されてしまう実態 ●
複数税率の処理は、税率を間違えると納税額も変わり損益実績も変わるので正確さを求められる。できることなら単一税率で処理したいのが経理担当者の本音(イレギュラーは作業効率を落とす)。
システムが経過措置に対応していない場合、免税事業者との取引は手計算になる場合もあり、複雑な制度や経過措置に対応しきれないため免税事業者との取引を諦めてしまう会社が出てくる可能性も懸念される。
● システム改修費と業務の負担大 ●
設備投資のための補助金については、検討していると答えた者は15.2%に留まる。国会内でも度々「IT導入補助金が使える」ということを財務大臣などがアピールしているが、ほとんど活用されていない実態が見て取れる。
1人から4人程度しか経理に人数を割けないような中小企業は、補助金があるといえど高額のソフトを導入したりシステム改修費を工面したりするような余裕が無いのが実情。それは個人事業主も同様である。インボイス制度と電子帳簿保存法に、限られた人員と予算で対応するのは、中小企業や個人事業主にとって非常に厳しい状況といえる。
システムを改修したところで、結局は、請求書や領収書のインボイス番号確認や、免税事業者に対する経過措置などの仕訳入力がとても煩雑になるため、業務工数が確実に増えるという不安の声も多数あがっている。
● 経理担当者の仕事に対するモチベーションを壊す制度 ●
インボイス制度が導入された場合、業務が増えると思っている人は85%。しかし、日本の企業は間接部門を軽視する傾向があることから、制度施行後、人員の増加や給与・手当等が増えるとは考えにくい。
制度が施行され業務が増えることによって「異動」もしくは「退職/転職」したいと考える経理担当者は33%。
そうであれば、インボイス制度は税の三原則のうち『中立』に反していると言えるのではないか。そして、事務負担も増加するのであれば、言うまでもなく『簡素』にも反していると言わざるを得ない。
💁★調査結果より★💁
インボイス制度開始まで一ヶ月を切る中、インボイス(適格請求書)を日常的に扱うこととなる経理業務担当者の大多数が制度の導入に反対していることがわかった。
また、インボイス制度による業務増加は経理担当者の仕事へのモチベーションを阻害し、加えて、円滑な導入を支援する「IT導入補助金」はほとんど活用されていない実態も浮き彫りとなった。
改めて政府には制度実施による負の側面を精査した上で、延期、中止を含めた導入の再検討が求められる。