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【インボイス制度の個人情報の公表・商用利用に抗議する声明文】#私の名前はコンテンツじゃない

インボイス発行事業者として登録した個人事業主の本名と登録番号が、商用利用可能な「コンテンツ」として国税庁HPから全件ダウンロードできる問題に対し、税理士、当事者の団体で抗議声明を発表しました。

一個人の名前は、経済活動のために消費される「コンテンツ」ではありません。
徴税や経済利益のために、個人の尊厳・プライバシーがないがしろにされるインボイス制度に対し、改めて強く反対します。

連帯してくださる団体・個人事業主の皆さんは、以下にご記入お願いします(名前の公表なしで賛同のみもできます)。

今回、声明を発表した俳優、アニメーター、ライター等のフリーランス・個人事業主は、「本名バレ」によって生活を脅かされかねず、強い危機感からこのアクションをとりました。
 
インボイス制度による個人情報の公表・商用利用に関する問題についてはこちらにも詳しいです。
https://note.com/stopinvoice/n/nd760002bdd50
 

以下、抗議文全文です


【インボイス制度の個人情報の公表・商用利用に抗議する声明文】


インボイス制度の個人情報の公表・商用利用に抗議する声明文

 
インボイス制度の中止を求める税理士の会
インボイス制度を考えるフリーランスの会
協同組合日本俳優連合
「フリーランスアニメーターの未来を考える会」世話人 西位輝実
「フリーランスアニメ演出家の未来を考える会」世話人 ヤマトナオミチ
「フリーアニメプロデューサーの未来を考える会」世話人 植田益朗
 
 
今般、国税庁が、2023年10月1日から開始されるインボイス制度において、適格請求書発行事業者として登録した個人事業主について、登録番号及び氏名を国税庁ホームページ(HP)上で公表し、それらデータの一括ダウンロード及び商用利用を可能としていることが明らかになった。既に12万件超の個人事業主の登録がなされ、これら登録事業者のデータを誰でも入手できる状態となっている(2022年6月末時点)。かかる国税庁の方針は、個人事業主のプライバシーを著しく侵害するものであり、強く抗議するとともに、直ちに公表を停止することを求める。
 
 フリーランス・個人事業主という業態は、その名の通り「個人」と「事業」が分かちがたい存在である。自宅と事業所が兼用となっているケースも多く、居住地のプライバシーを守るため、取引先の住所などを「間借り」する事業者もいる。また、作家や俳優、漫画家など、芸名・ペンネーム・屋号などで活動をしている者も多く、公に本名を明かす必要はない。
 
 しかし、23年10月からはじまるインボイス制度で適格請求書発行事業者になると、国税庁の「インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」で本名と登録番号が必ず公表される(住所・屋号については任意で公表対象とされる)。一度登録をすると、登録の取り消しをしても7年間は公表サイトに情報が掲載され続ける。また、国税庁HPでは、これらの情報を一括で、誰でも簡単に全件ダウンロードできる仕様になっており、商用利用も可能とされている。
 一方、登録申請書の書式には「国税庁ホームページで公表」される旨の記載はあるが、記入した個人情報が「一括ダウンロード」可能な状態に置かれ、「商用利用」されることの記載はなく、個人情報の取り扱いにおいて最も尊重されるべき「個人の同意」が軽視されていると言わざるを得ない。
 
 さらに、これらの情報を公表する必要性自体も極めて疑問である。
 公表サイトの「運営方針」には、「公表サイトの目的」として「(請求書等に)記載された『登録番号』が取引時点において有効なものか(適格請求書発行事業者が取消等を受けていないか)を確認すること」という記載があり、「偽インボイス(適格請求書)」の流通を防止することが公表の目的と推察される。しかし、ペンネーム等で活動をし、当該ペンネーム等で請求書を発行している個人事業主については、国税庁HPで公表される登録番号と本名では、請求書上の名義と一致せず、チェックの役割は果たさない。チェックを可能とするためには、屋号として当該ペンネーム等を登録し、国税庁HP上で当該屋号(ペンネーム)も公表することが必要となるが、そうなれば一括ダウンロードにより、誰でもペンネームから本名を検索することが可能となり、個人事業主が本名を隠すことは不可能となる。
 
 そもそも、登録番号の真偽を確認するためであるなら、公表サイトで「一括ダウンロード」と「商用利用」を可能にする理由はなく、「商取引をする個人事業主」という広範囲で莫大な個人情報を世間に流出させる必要性は全くない。このような情報を公表することにより、本名等を知られたくないという個人事業主の意向はないがしろにされるだけでなく、個人事業主がDV等の被害者である場合、加害者が被害者の情報を検索できる状態になり、居所等を知られる可能性も否定できない。
 いずれにしても、国税庁HPにおいて登録番号と本名を(加えて希望する場合には住所と屋号まで)公表し、さらには一括でのデータダウンロード及び商用利用まで可能とする国税庁の措置は、個人事業主のプライバシーを著しく軽視し、配慮を欠いたものである上、その有効性も極めて疑問であると言わざるを得ない。
 
 したがって、我々は、フリーランス・個人事業主のプライバシーを侵害する国税庁の本件措置に強く抗議するとともに、かかる方針を直ちに撤回し見直すことを求める。
 
 最後に。
公表サイトの「利用規約」では、事業者が登録した個人情報は「コンテンツ」と呼ばれ、誰でも自由に商用利用もできると記載されている。しかし、一個人の名前は、経済活動のために消費される「コンテンツ」ではない。徴税や経済利益のために、個人の尊厳・プライバシーがないがしろにされるインボイス制度に対し、改めて強く反対する。
 
 
 
 
 
 
【参考】
※利用規約
https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/terms-of-use.html
 
※適格請求書発行事業者公表サイトの運営方針(「公表サイトの目的」の記載)
https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/aboutweb/index.files/invoice_houshin.pdf
 
※「適格請求書発行事業者の登録申請書」(国内事業者用)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/kansetsu/1806xx_2/pdf/01_1.pdf
 
※「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/invoice_shinei11.pdf

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