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【幕間・掌編】心の居場所
(画像は生成AIによるイメージ映像です。)
(「心の架け橋」から続くシリーズの短編です。)
ずっと居場所を探していた。
幼い頃、それは父母と暮らす『家』だった。
でも、会社をリストラされた父が一念発起・起業したものの借金を抱えた挙げ句に失踪して、単身で苦労していた母が男の人に騙され酒におぼれて怠惰な生活を送るようになってからというもの、ボクは『家』を見失ってしまった。
そんな家庭の事情を知られたくなかったから友達と距離を置くようになって、学校にも身の置き所がなくなった。
それからずっと、ボクは自分のことが嫌いだった。父にも母にも見捨てられるような自分には価値なんてないと思っていた。そんな風に自分のことを否定してたから、誰かに肯定して欲しかった。でも、そんな人はいなくて、どこにも居場所を見つけられずにいた。
そんなボクにも、今では落ち着ける場所が出来た。行く宛もない小娘のピンチを救ってくれて、強引に転がり込むのも受け容れてくれた人がいたから。もっとも、その段階では物理的な居場所でしかなかったかったのだけど。
最近になって、ようやくボクの生い立ちを全て打ち明けることが出来て、母に対する憎しみと愛情とがドロドロに混じりあったアンビバレンツなボクの心も『そのままでも良いんだ』って言って貰えて…
そうして、ここがボクの新しい『家』になったんだ。
そんなボクが考えてるのは、もちろん色んな考え方の人がいるんだとは思うけど、『心の居場所』って、外に求めるんじゃなく自分の中につくるものなんじゃないかなってこと。
そのままでも良いんだと言ってくれる人に出会えて、今では自分のことが前ほど嫌いじゃなくなって来た。まだ堂々と『好き』とまでは言えないんだけど。
別に、仕事や勉強やスポーツとが出来たり、美人だったり可愛かったり、血筋が高貴だったりお金持ちだったり、そんな特別なところがなくたって良いんだ。上手く出来ないことが沢山あったって、失敗ばかりしてたって。
そんなダメな自分を、ボク自身が、そのままで、ダメなまま受け容れてあげる。そんな気持ちになることが出来たから、わざわざ外に求めなくても自分の中に『心の居場所』が出来た。
だから今は、どこに誰といたって『ここは自分の居場所じゃない』って疎外感を感じることが少なくなった。もちろんゼロじゃないけどね。以前を100だとしたら、30くらいまで減ったと思う。これは大きな違いで、まるで世界が変わったみたいに感じている。
ボクにとって大事だったのは、自分の良いところを感じられる『自己肯定感』じゃなく、誰かに凄いねって誉めてもらう『承認欲求』でもなかった。ありのままの自分を、そのまま受け容れてあげる『自己受容』だったんだよね。
そう気づけたのは、びぃくん のおかげなんだよ。
本当にありがとうね。
・ ・ ・ ・ ・
「随分と奇麗に纏めたな? 言いたいことはそれだけか?」
地獄の底から響くような声で、びぃくん がそう言った。
「いや、だって、いい話に聞こえた… でしょ?」
「ああ、オマエの気持ちが良ぉく分かった。」
「なら… 許してくれる… よね?」
「あのなぁ、いくら『ダメな自分を受け容れる』ことが大事だって気付いたからって、それで『腐っちまったこと』がまるっと許されると思うなよ? そりゃ、別に何が好きだって、誰かに迷惑かけない限り自由だ。けど、漫画やアニメのキャラじゃなく、リアル同居人をモチーフにして掛け算に励むのはダメだろ? いや、ダメダメすぎるだろ? 」
「それはね、『愛』ゆえに、なんだよ?!」
「それで誤魔化せると思うなよ? よりにもよって、男体化した新人と部長と俺との愛憎渦巻く関係とか勘弁してくれよ。どうして俺の周りの女の子達は、こう腐っちまってるんだか… 」
実は先ほど、ボクがこっそりと書いてた小説が見つかってしまったのだ。ノートを日記風にカモフラージュしてたんだけど、うっかり目の前で落としてしまい、不幸なことにクライマックスを迎えたページ(ラフスケッチ付き)が開いた状態で。その内容を悟った びぃくん がドン引きして、しばしの後に我に返って、こうして説教されているというわけである。
とほほ…
「あれっ? 女の子『達』って言った? 他にも誰か『同志』がいるの?」
「『同志』って… はぁ~~~~
オマエが男体化した、その新人当人だよ。被ってる仮面を剥ぎ取ってみたら、腐ってる上に口を開けば下ネタばかり飛び出すような奴だった。本人曰く、女子校時代の称号が『歩く18禁』だったそうだ。」
「『被ってる亀』とか、ひわいだよ?」
「アイツと同じこと言うなっ! それって、腐った乙女に共通した芸風なのかっ?!」
「ゲイWhoooo!とか… (/// 」
「 …もういいや。
まぁ、どうせ駄目って言っても止まらないんだろ? なら、せめて俺の目に触れないようにってことだけは注意してくれよ? さすがに見たくないわ。」
「隠れてするのなら認めると?」
「認める訳じゃない、見ないフリをするだけだ。」
「言質とったどー!!」
こ う し て
妙 子 の 趣 味 は
保 護 者 公 認 と な っ た
「いや、そんな字幕風の演出は要らないから。」
--- FIN ---
今回は、以下の企画への参加を兼ねております。自分の創作キャラに、自分の思いを代弁して貰いました。
おふざけ色が、かなり強く出てしまってますが、前半が『心の居場所』についての自分なりの解釈で、後半では、どんな自分でもありのままで受け入れてあげようと云う一例、かなり極端ですが。
勿論、十人十色の様々な考え方があって、そこに正誤も優劣もないのですが。
なお著者自身は、そうとは思いながらも、まだ文中の境地にまで至ることが出来ておらず、日々、悶々としております。