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kan__ma
愚公移山と朝三暮四
「愚公、山を移す」は『列子』の説話の中でも有名なものだ。そこで愚公は、「子孫が増えることはあっても、山が高くなることはない。だから、いずれ山を動かすことだって出来る」という理性的な判断をしている。
「朝三暮四」は、その対極にあるように見える。猿たちは結果的に同じであるにも関わらず、朝を4つにして喜んだ。腹を満たすことより、感情を満たすことを優先した結果だろう。
これを踏まえると、『老子』3章の「心を空虚にして腹を満たす」や、12章の「腹を満たしても、目を喜ばせない」も奥深い解釈が出来る。道家が言う無欲とは、我慢ではなく冷静さなのだろう。どうして我慢できるのかと言えば、その後に利益があると信じるからではないか。そうだとすれば、無欲どころか強欲になってしまう。