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【泡沫のユークロニア】凍玻璃は天空の城ラピュタにみせかけた貴族が思い描く理想の監視社会だった件

乙女ゲーム
泡沫のユークロニア
感想・考察

友人から譲り受けたゲームがとんでもなかったので、
noteに記すことに。



矢代√

事前情報で記憶喪失と言われていて、何も分からなかったから、
その部分にかなり期待してしまったんだけど、記憶を取り戻すまで、もしくは取り戻した後の葛藤が見られるのかと思いきや、そうではなかった。
記憶喪失は嘘で東瀛から来た間者だと、他のルートであっさりバラしていて、じゃあ自らのルートでは他にも何かヤバいことを隠してるの?ってさらに期待したんだけど、特にそういうわけでもなかったと。。

矢代が東瀛のいい家の愛人の子で、人から愛情を受けずに育ったのは分かったけど、、物足りなさすぎるから何か設定が欲しかった。
本当はかなり冷酷な性格で全部演技でした、とか矢代の過去とか使命をもっと深堀して欲しかったし、なんなら雛菊のことを憎んでいたとか、壮絶な裏切りとか前世からの繋がりが〜とか何か展開が欲しかった。今後のFD等で明かされるのか??
矢代ルートで一番大切そうな東瀛の風景とか全体像がわかるイラストがない!なんで!?
あと矢代と雛菊が惹かれていく過程がよく分からなかった。。
矢代は感情がない〜という描写があったけど、かなり能動的に動いているシーンもあったので共感ができなかった。
物語の終盤は少年漫画みたいな展開で、これが見たかったわけじゃないんだけどな、となった。
メインキャラの中で1番ストーリーが浅いと思った。
あっけなく東瀛のことも裏切っていて、移民として凍玻璃で働くエンドに疑問しかない。

帷√

帷の性格はとても良かったのだけど、さすがにストーリー後半からいろいろな人たちに裏切られすぎて、かわいそうになった。
そういうキャラクターだから仕方ないと思うのだけど、良い人だから利用される場面が多くて、攻略キャラクターだから一歩先を行くような展開が欲しかった気もする。
雛菊との恋愛は信頼関係を徐々に深め、お互いに好意を持つという一番納得のいくルートだった。
物語の中で帷が、東瀛とは取引を行っているが、地上の話をするのは良くないとされており、それは一般的な常識と考えられている〜みたいなこと言ってたけど、これ、明らかに言論統制されていると感じる。
また、帷の寿命に関わる注射で思い出したけど、この凍玻璃においても西洋医学で何とかしようとするのか、、とは思った。疑わずに騙されるのは日本人をモデルにしているのかなと。正直、そのことに関しては憤りしかない。日本人は明日は我が身かと。根が深すぎるルート。
そして、帷のBESTエンド後の立場がよくわからない。花街の顔役兼、大樹の友人みたいな感じ?しかし、身分差は存在しているという印象。
BADは悲しいけど綺麗で悔しい。

淡雪√

淡雪は主従関係なのに距離が近すぎるという、理解しにくいキャラクターだったなぁと。彼は、自己主張が強いという特徴があったのもギャップを狙ってのことだったと思うけど、悪手だった感じがする。
物語の流れとしては、依との婚約という話から徐々に淡雪のことを意識していって、本当にお互いに好きなんだけど伝えられないという、もどかしさを描きたかったのかなぁ。
しかしながら、雛菊が淡雪のことをいつ好きになったのか、守ってもらったシーンからなのか??よくわからない。もっと分からないのは、淡雪がいつから主人公を異性として意識していたのか、ということ。
出会った時からではないとして、女性として成長するにつれてだったのか?信頼関係を深めて人間的に好きになったのか?それを見せてほしかった、と感じる。雛菊も淡雪のために変化があるとなおよかったかも。
表現の問題だと思うけど、淡雪が自分の居場所はここだと感じた〜って言ってたけど、その思いに至るまでの見せ方が弱い。雛菊が必要としてくれたからという理由だけでは腑に落ちない。
待遇も良さそうだし、平民だけど近侍でいいのでは?と思ってしまう。
もういっそのこと、近侍をしていた時に裏切られすぎて、人を信じられなくなっていて、雛菊のことも最初は信じられなかった。だけど、あることをきっかけに信頼を置くようになった等の展開の方が良かったのでは。。

従者と見せかけて年上の態度が大きい同居人だったのかも。
肝心のストーリーは自らの疑を晴らすために真犯人を探す展開で納得した。
士官学校時代からの依との因縁があり、淡雪がとても戦闘に強い設定は良かった。
最後にまさかの一夜をともにするスチルがあり、イラストは綺麗だったけれど、プラトニックな関係で幕を閉じる方がよかったのでは?
このスチルではなく、幼少期の雛菊と若い淡雪のイラストをみたかった気もする。

依√

性格が悪いという次元を超えている気がする。サイコパスだなと。
嘘をつきながら雛菊とデートをしていて、裏では人を生きたまま斬殺しているから、その点を許せるかどうか。
乙女ゲームというよりサスペンスドラマとしては、楽しむことができるかと。BADは昼ドラのような泥沼展開。
貴族だからかBESTエンドは、ほぼお咎めなしで日常を過ごしている部分にご都合主義を感じた。
兄の石蕗の方が乙女ゲームしていたような気がする。
石蕗は度々、雛菊に出会ってひそかに思いを寄せているシーンが良かった。
依ルートは、ゲームを進めるにつれて石蕗の方が雛菊の結婚相手に相応しいと感じてしまい、それでも依と結婚できますか?という展開は、本当に意見が分かれると思う。あと依が雛菊のことを、本当に好きだとわかるシーンがまさかのハンカチで、ここはもっと他の表現方法がなかったのかと頭を抱えてしまった。

露草√

雛菊のことを好きになった理由が、幼少期からの一目惚れっぽいのはいいとして、逆に雛菊が露草をいつ好きになったのかよくわからない。
この露草ルートと淡雪を通して感じたけど、昔からの関係性から描く恋愛描写が微妙というか、なんというか。。
昔から好きだけど、さらに好きになる展開だとか、主人公が恋心を自覚するシーンを丁寧に描いてもらいたかったかも。
露草が物語の終盤で自分の言動を決めるのが〜ということを言っていたけど、今までも自分で決断してきたシーンが多々あり、共感できず。。
なぜこの場面をクライマックスに持ってくるのか、理解ができなかった。
恋愛というより、2人で事件を解決するようなストーリーだった。
身分は、一番保証されていると思う。大樹の双子の片割れで、
しかも一般人に紛れて生活している。
攻略対象の中で唯一、障害がないルートに思えた。

真相√

「真相ルート」とのことでしたが、一体何をもって真相としたのか、疑問がかなり残ります。

凍玻璃の街並みを見た時から、空に浮かぶ大きな木がある空中都市は、
まるで「天空の城ラピュタ」だと思っていましたが、まさか本当にそうだとは思わなくて。。
鳴神さんがオートマタでヒヒイロカネが凍玻璃の動力になるなんて。これはまさしく「ラピュタのロボット兵」と「飛行石」ではないでしょうか。もっと他のアイデアは思いつかなかったのでしょうか?それとも、この設定にしてくださいっていう上からの指示ですかね。。
矢代と雛菊で凍玻璃をバルスして貴族を消し去り、平民と共に地上の世界に行くのかと一瞬考えましたが、残念ながら、そんな展開はなく(笑)。。

枸橘のようなスパイが政府の中枢にいるというのは、本当に危険な事態なのに、それを許す大樹。普通に考えて許されないかと。
凍玻璃のガスで苦しんでいるという東瀛の民は見捨てられてしまうのか?



主人公について

雛菊に関しては、外見は非常にかわいいのですが、性格はピオフィのリリィの受け答えの方が好みだった、という感じです。
男性には受けそうなキャラクターだと感じましたが、無自覚で小悪魔なところが若干あると思います。そこが可愛いと思う方もいるでしょう。
けれども、語尾が「~もん!」なので、女性の方は苦手な人も多いかもしれません。箱入り娘ゆえなのか、思いやりが欠けている言動があるため、そこもまた賛否両論かも。また、公式ブログで成長すると記載されていましたが、特に成長を感じさせるシーンはなかったと思います。
あと雛菊が役に立たなさそうであるのに、現場に向かう場面が共感できなかったなぁと。逆に雛菊が行かざるを得ない状況だったら納得できたと思います。
基本的に人は同性に厳しく、異性には甘いという本能的な部分があるため、もう少し女性からも好まれやすいキャラクターにしてもよかった気がします。プレイしている大半が女性なわけですし。
また雛菊は、凍玻璃は大樹様のおかげで、事件は起きないという教育を受けています(また暴力事件なんて以ての外という世界観だったはず)が、実際に起きている出来事に対してあまり驚いていない印象です。あっさり受け入れてすぎていてこちらが拍子抜けしました。



凍玻璃について

プレイしてみて、凍玻璃は現在の日本の状況によく似ているなと感じました。
凍玻璃は大樹の名の元に、貴族が黒鶴を使って自由に操作している監視社会だったと思います。一度、罪を犯した平民は二度と這い上がれない。しかも末裔まで。という本当に嫌な世界です。
設定を空に浮かばせて箱庭にしたのは、おそらくこれから実現したいスマートシティのためだと思います。しかもゲームの中で、貴族と平民は遺伝子レベルで異なる存在になっています。まあ、遺伝子に影響を与える方法といえば、もうアレしかないですが、気づいた人はほとんどいないでしょう。帷ルートが全てを物語っています。矢代が平和ボケしている〜ようなことを言っていましたが、まさにその通りで、今の日本の状況と似ていますね。
またこれも意図的なのかもしれませんが、凍玻璃が東瀛より豊かだという描写がありますが、資源はあまりなさそうですね。多くの人が日本も豊かだと思っていますが、実際には輸入に大きく依存しており、自国の資源はほとんどないのが現状です。

凍玻璃の民が大樹様を信用しすぎているのも、権力に同調しやすい日本人らしいなと思いました。大樹様がきっと何かしてくれる〜という考えを教え込むのは結局のところ、自分で考えることができず、命令に従順な思考停止人間を作る政策かと。
これに関しては、依がもっともらしいことを言っていて、「ここの世界の人々は〜〜まるで人形だ」というのは、全く自分で考えていないという意味だと思いました。

凍玻璃の仕組みを変える=法を変える
法改正につながる思想を促しているようにも見えて、本当に嫌だなと思いました。
というか、このゲームが言いたいことってそれなのでは?と。
続編なりFDで法を変えるということにつながるのであれば、露草が言ってたプロパガンダになりますよね。。

ゲームはだいたいある目的のために制作されていますが、乙女ゲームも例外ではありません。そんなまさかと思う人が大半でしょうが、これからはもっと露骨になると思います。そういう意味では、2019年以前に発売された乙女ゲームの方が、より楽しめるかもしれません。


デザイン・BGMについて

フォント。読みにくい。文字の大きさも小さい。
なぜこの書体にしたのか、まったくの謎です。
この書体のせいで切ないシーンなどにうまく感情移入できないことが多々ありました。
たくさんの文章を読ませようという気がなさそうです。END後に追加される掌編の書体はまだよかったです。

イラストはとても綺麗なのですが、メインキャラの服のデザインが良いとはちょっと思えませんでした。日本らしく和装と洋装をどちらも取り入れた結果、ああなったと思いますが、強いていうなら不知火の帷の衣装と、黒鶴の制服がかっこよかったです。矢代などは、正直かっこいいとは思えませんでした。この服は何なのか?と始終思っていました。
タイトルのロゴに、水模様が多く使用されていたから水関連で物語本編に何かあると思ったのですが、昔は水害に見舞われていた。そして東瀛が水の街ということ。だから水模様なのかな?やはり東瀛の風景イラストがないので、連想しづらいというか。。それとも泡沫の儚い恋という意味で水模様だったのか。。
今後FDなどで、東瀛のことを明かすつもりで最初から制作していると思うので、そこを通してタイトルロゴデザインは納得できるものかもしれません。
また、OP・EDは非常に良かったのですが、アクションシーン向けのBGMに関しては、もう少し何とかできなかったのかと。。。


最後に

ピオフィオーレの晩鐘が大好きだったので、期待しすぎたのかもしれません。攻略対象の年齢はもう少し上にして、品のある大人の駆け引きをする恋愛が見たかったのが本音です。
恋愛面はかなりあっさりしていて、舞台となる世界観の説明が多かったです。
ただ日本は、今まさに西洋医学(注射)で苦しんでいる人々が多いにもかかわらず、それを逆手にとって攻略対象にして金をとるなんてヤバすぎます。。
そのことに大半の人は気づいていないかもしれませんが、今後、気づく人が一人でも増えることを願っています。
以上です。


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