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国民民主の金融所得課税30%に対する所感
今回は減税派として人気を集めている国民民主党が、金融所得の分離課税を20%から30%に上げるなどことを検討しているという件について、国民民主党の税制案とそれに対する所感というテーマで書きたいと思います。
YouTube版もありますので、よろしければそちらもご覧ください。
玉木氏のポスト
Xのポスト
まず、2025年2月2日の玉木氏のポストは以下のとおり。
確認した上でのコメントは以下のとおりです。
— 玉木雄一郎(国民民主党) (@tamakiyuichiro) February 2, 2025
昨年12月24日、国民民主党が、「金融所得課税については分離課税を30%に上げ、総合課税と選択できるよう目指します。」との方針を取りまとめたことは事実です。…
Xのポスト全文
ポスト全文は次のようになります。
昨年12月24日、国民民主党が、「金融所得課税については分離課税を30%に上げ、総合課税と選択できるよう目指します。」との方針を取りまとめたことは事実です。
私自身、こうした自党の政策について十分把握せず、Xで反論をしてしまったことをお詫び申し上げます。
確かに、衆院選の公約でも、格差是正の観点から「金融所得課税の総合課税化」や「富裕層や高所得者層の課税強化」を訴えてきたことは事実です。
今回取りまとめた方針は、こうした方向性に沿ったものと理解していますが、ただし、総合課税化の実現は「目指す」べき将来的な課題と整理されています。
なお、総合課税を選択すると、現在の分離課税の税率20%より低い所得税率の所得階層(例えば10%の平均税率が課せられる所得階層)にとっては減税になりますし、平均税率が30%を超える所得階層は、総合課税に比べて低い税率である分離課税30%を選択するでしょうから、結果として、30%は高所得者層にのみ適用される税率になります。
よって、当面は、暗号資産課税も含め、金融資産課税について20%の分離課税としながらも、将来的に「高所得者層」には 30%の税率を課すことを検討していくことになると考えられます。
その際、その対象となる「高所得者」をどの程度の所得階層とするのか、現時点の案だと1,500万円〜1600万円を超える所得階層が対象になりそうですが、現役世代の資産形成や貯蓄から投資への流れを阻害しないかなど、さらに党内の議論を深めていきたいと思います。
要約
党が分離課税を30%に上げる方針をとりまとめたのは事実
自党の政策について玉木氏は把握してなかった
24年の衆院選の公約で金融所得の総合課税化や、高所得層の課税強化を訴えているのは事実
総合課税化の実現は目指すべき将来的な課題
累進課税20%以下の層は減税
累進課税30%以下の層は分離課税30%の方が優位
当面は暗号資産を含め20%の分離課税を目指す
高所得者層は将来的に税率30%を課す方向
原本は公式サイトからご確認ください。
税制案の深堀り
金融所得課税の強化
![](https://assets.st-note.com/img/1738739064-wm8dZ56O7rpzecBaqF1VKNYf.jpg?width=1200)
国民民主党は「行き過ぎた格差を是正」「所得再配分機能を回復させる」という観点から、金融所得は課税を強化するという方針。
政府の財源確保の為というより、行き過ぎた格差の是正、格差の固定化を防ぐ為といった性格が強い印象です。
つまり、株の売買や配当で所得を得ること自体は否定しないが、労働よりも株を転がしてるだけでの方が、効率良く加速度的に富を蓄えられるという状況は、好ましくないと考えているようです。
最近はNISAブームなどで、一般の労働者層でも株式投資する人が増えたので、資本家や投資家と、労働者の利害が一致したかのような雰囲気となり、労働者であっても、株価の上昇や、配当の上昇を望むようになりました。
しかし、資本家・投資家と労働者は基本的には利益相反の関係にあります。
人々が株価や配当の数字だけで一喜一憂するのでなく、株式や経済の仕組みを構造的に理解し、本当の意味で金融リテラシーが高まってくると、現在の株式市場主義の世論も、風向きが少し変わってくるかもしれません。
とはいえ、日本円だろうと、米ドルだろうと、通貨価値というのは時間と共に減価していきます。
なので、労働で法定通貨を稼ぐしかない労働者を豊かにするには、各税金の減税や、社会保険料の引き下げなどにより手取りを増やすことや、法人税の累進課税化などにより、労働分配率を上げるといった対策が必要になってきます。
しかし、法人税の引き上げは税引き後の企業利益を圧迫するので、株価や配当にはマイナスの影響があり、投資家や資本家とは利益相反の関係となっています。
このあたりのバランスの舵取りをどうするか。資本家、投資家、労働者層の全員が納得する案というのは構造上不可能に近いので、難しいところですね。
新NISAの内容変更を主張
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国民民主のNISAに対する考え方として「勤労者の安定的な将来設計のため」「長期投資による産業育成」というのが、NISAという制度に求めているものと思われます。
一方、高所得者層がNISA制度によって過剰な恩恵を受けてしまうことは良しとしておらず「金融所得によって格差が広がりすぎないこと」「広がった格差が固定化しないこと」を非常に重視しているように見受けられます。
そして、長期投資の観点から頻繁に売買を行ったり、資金が豊富にある高所得者層が一括投資などで優位に立てることを防ぐよう、成長投資枠の上限は引き下げるべきと考えているようです。
現行の新NISA制度の設計時も「成長投資枠」と「つみたて投資枠」を同額にするか、積立型の方が上限額を高く設定することが望ましいと訴えていたとのこと。
このことから、NISA制度を強欲的な利益追求の手段には使えないようにすべきと考えているように思います。
NISAの投資額を所得控除の対象に
NISAへの投資額は所得控除の対象にすべきという案も出しています。
現状、iDeCo(イデコ)などは、投資金額が所得控除として認められます。しかし、新NISAの場合は、税引き後の金額で行う必要があり、所得控除の対象となりません。
なので、現行の新NISA制度は、そもそもの投資をする余裕資金がある人でないと制度の恩恵を受けにくい構造になっています。
iDeCoのように、投資額が所得控除の対象になれば、NISAで投資をすることで所得税が控除対象になるので、税引き後の余剰資金が少ない人でも制度を活用し、恩恵を受けやすくなります。
もちろん、控除があろうとなかろうと、投資は余剰資金の範囲内でやるべきなので、控除があるからリスク許容度を高めても良いというわけではありません。
しかし、控除対象になった方が、現行制度よりはNISA制度を活用したり、恩恵を受けられる人は増えるので、良い改善案だと思います。
金融所得課税の強化
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金融所得の申告分離課税については、現在の20%から30%への引き上げを目指すとはっきり明記されています。
党の代表である玉木氏が、自党の方針を把握していなかったというのが事実であれば、党の運営体制に若干の不安が募りますが、一旦それは置いておきます。
現在、総合課税を選択できるのは配当所得だけですが、株式の売買等による譲渡益も総合課税を選択できるよう目指していくとのこと。
また、各所得との損益通算を認めることや、所得税の累進度も見直し等も検討しているようです。
玉木氏のポストでは、課税所得が30%未満であれば、30%の分離課税を選択するより、総合課税を選択した方が税制上は有利になると主張しています。
所得税単独で見るとそのとおりですが、総合課税にすることで、住民税や社会保険料等も変わってくるので、詳しい計算は省きますが、トータルで見ると結局は負担増になる可能性が高いと思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1738739131-Ez6bDPTVAKkaGU5Je1CioNWt.jpg?width=1200)
暗号資産の税制変更
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現在は「雑所得」扱いとなっている暗号資産は「申告分離課税」に移行すると明記しています。
注目すべきは暗号資産の分離課税は20%としていること。株式など金融所得の分離課税は30%に引き上げるといっているので、株式より低い税率となっています。
「株式等の金融所得」と「暗号資産」は明確に区別していると見てとれます。
暗号資産の税制を区別する意味
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現時点では具体的な詳細には触れられていないので、私の考察となります。
そもそも、国民民主の主張として「格差の拡大」や「格差の固定化」を防ぐ為や、高所得者の優遇を防ぐ為というのが、金融所得の分離課税を20%から30%に引き上げる理由でした。
にもかかわらず、株式よりも投機性の高い暗号資産を20%の分離課税にするのは矛盾しているように感じます。
一般論として、
減税は「対象の取引を活性化させたい時」に行うもの。
わかりやすいところで言えば「住宅ローン減税」などです。
増税は「対象の取引を抑制したい時」に行うもの。
たとえば、最近話題の「関税」は、海外からの輸入品を抑制する為に課しますし、「たばこ税」は喫煙を抑制する為に課します。
この理論からいくと「消費税」は消費を抑制・・「所得税」は労働の抑制・・ということになるのですが、話が長くなるので今回は割愛します。
話を戻しますが「税金を上げる=その取引を抑制したい」「税金を下げる=その取引を活性化させたい」ということであれば、国民民主の考えとしては「株式などの伝統的な金融資産の取引を抑制し、暗号資産の取引を推進したい」という風に見ることもできます。
先ほども言ったとおり、投資家と労働者は利益相反の関係にある部分も大きいので、株式市場が活性化することで、株主利益を優先する株主の力が強くなり、結果として労働者の雇用や給与が、株主利益の為に抑制されるといった構造になってしまいます。
差の是正や労働者保護を優先するという国民民主の方針と照らし合わせるのであれば、労働者の雇用や給与を守るために、法定通貨の奪い合いである投機的なマネーゲームは、企業の所有権である株式ではなく、本質的な価値のない暗号資産で好きなだけやってください。という考えであれば、ある程度の整合性が取れるように思います。
まとめ
国民民主は投資家より労働者を優先する政党
党の成り立ちからしても当然といえば当然の考え方。新NISAブーム等で労働者層も投資をするようになり、労働者と投資家の利害構造が一致したかのような社会的雰囲気になっている昨今ではポジションの取り方が難しいと思う。
労働者寄りの政策をしようとすると株主利益(株価や配当)の圧迫となり、庶民のための政策をしようとすると、庶民から批判されるという構造になっている。金融所得は生活の補助的な範囲なら許容
金融所得課税という言葉への拒否反応から少々ヒステリックに過熱してる感はありますが、国民民主は庶民が投資すること自体は否定していません。
一定の所得以下という制限はありますが、NISAへの投資額を所得控除の対象にするなどの案も提案しています。
ただし、金融所得だけで生活するような人が増えることは良しとしていないという印象は受けます。まぁこれは国家を運営する側としては合理性のある考えなので、国民民主に限らないと思いますが。マネーゲームの舞台を株式から暗号資産に?
「増税は対象取引の抑制」「減税は対象取引の活性化」という税の原理からいけば、株の取引は抑制する方向で動いているように思います。
現在のNISA制度の設計時においても「成長投資枠」の上限額を引き下げるべき、一方で「つみたて投資枠」の割合は増やすまたは一律にすべきと考えているあたりから、株式投資自体は否定しておらず、キャピタルゲインや売買などを繰り返す、投機的なマネーゲームで富を得ようとすることを抑制しているように思います。
しかし、それが理由なのであれば、株式より投機性の高い暗号資産の税率を現在より軽減(最高税率55%→分離課税20%)にする理由がありません。
むしろ、株式の分離課税が20%→30%に上がり、暗号資産の税率が最大税率55%の雑所得から一律20%の分離課税になるのであれば、株式より暗号資産の方が税制的に優遇されることになります。
増税は取引の抑制、減税は取引の活性化の原理に則れば、現在のマネーゲームの舞台、法定通貨の奪い合いの舞台を、企業の所有権である株式市場から、暗号資産に移行させたいのではないかと考えることもできます。
株式(企業の所有権)が、法定通貨の奪い合いの投機対象になると、どうしても労働者の保護は難しくなりますし、場合によっては国家の安全保障にもかかわります。
なので、そういった法定通貨の奪い合いというマネーゲームは、企業の所有権である株式で行うのではなく、無価値な暗号資産でカジノ的に楽しんでくれたら良い。暗号資産業界を規制緩和することで、マネーゲームをしたい人は暗号資産市場で遊んでくれたら良い。そういう考えなのかもしれません。
暗号資産による法定通貨の奪い合いの促進は、米国のトランプ政権でも推進される可能性が高まっているので、国民民主だけの話ではなく、世界的な流れなのかもしれません。
投資を全否定しているわけではないですが、金融資産の売買だけで高所得を得ることに対しては否定的な姿勢を見せていることは確かです。
国民民主党は増税一辺倒の政府与党に対して、減税を主張してくれる政党ということで近年急速に支持を拡大しています。
一方で、労働者寄りの政党であるが故に資本家や投資家とは相性が悪い点も考慮しておく必要があります。玉木氏は国民との対話を重視している
私の印象ですが、国民民主党の玉木氏はSNS等を通じて国民との対話を重視している印象を受けます。
なので、SNSで声をあげることは、国民の意見を反映させるという点で、非常に有効だと思います。
もちろん、ここで言う国民には様々な立ち位置の方がおり、国民=株式投資をしている人でありませんし、株取引でお金を稼ぎたい人たちの意見を優先して聞くとは限りません。政治家は全員が納得する結論を出すのはそもそも不可能という前提のもと、落とし所を決めて実行します。
とはいえ、投資家が不利になる状況は避けたいというのも、国民の意見の1つです。
もし、思うことがあるのであれば「ふざけるな」といった感情的な罵詈雑言や自分の利益や都合だけを押し付けるのではなく、自身の生活環境、投資に対する向き合い方、税制、財政金融、経済や社会全体に対する考え方などをしっかりまとめた上で意見を送ることで、説得力が増しますし、建設的な国民との議論の場となり、それが国政や法律に反映されていくことになると思います。
その上で、各政党が出した結論に賛成するのか、反対するのかは、有権者1人1人に委ねられています。
株式投資を始めると、経済、金融、税制、政治等にも関心を持てるようになることは大きなメリットだと思います。
政治的なことは気にしても意味ないという意見もありますが、政治で決まった法律や税制は、あとからいくら文句を言っても従うしかありません。政治に無関心でいることが道徳的であり利口であるという思考は、非常に危険な考え方です。
イデオロギーの違いなどで揉めやすいテーマではありますが、普段の日常生活から株式市場や資産形成においても非常に大きな影響力を持つので、ぜひもっと多くの人が関心を持って参加して欲しいと思います。