
三井住友銀行の初任給30万円は高いのか
三井住友銀行の大卒初任給が30万円、第一生命ホールディングスの初任給が32万円、東京海上の初任給が転居を伴う転勤付きを条件に初任給が最大41万円。
2025年は年初から、大手金融機関を中心に大卒初任給の引き上げに関するニュースが目立っています。
日本の労働者の給料は30年近く上がっておらず、父親が就職した時の初任給と子供が就職した時の初任給の額が同じというのも珍しくない時代が続いていました。
こうした時代が長く続いたことを考えると、昨今の新卒初任給の引き上げは、非常にポジティブなニュースだと思います。
しかし、こういった話の時には、常に基軸通貨の米ドルベースで考えるくせを持っておいた方がいいでしょう。
2025年1月14日時点のドル円の為替レートは157円なので、
月収30万は米ドルに換算すると1,910ドルです。
月収1,910ドルとは、
1ドル=100円で換算すると月収19万1,000円。
1ドル=120円で換算しても月収22万9,200円しかありません。
なお、2019年の三井住友銀行の総合職の初任給は20万5,000円でした。
2019年の平均為替レートは1ドル110円ぐらいだったので、1,910ドルを円換算すると21万100円ということになります。
つまり、昨今の初任給の引き上げは、円安により自国通貨の価格が下がったことで、円ベースでは上がっているように見えますが、ドルベースではほぼ上がってないと言えます。
これは日経平均も同様です。
去年の日経平均はバブル期以来の高値を付けたと話題になりましたが、ドル建の日経平均で直近の最高値を付けたのは、2021年2月の279.6ドル(105.36円 = 29,459円)でした。
一方、30年ぶりの高値更新と日経平均4万円超に湧いた2024年7月8日のドル建の日経平均は258.31ドル(160.74円 = 41,552円)です。
つまり、30年ぶりの日経平均の高値更新は、円安の影響により円ベースで高値を更新しただけで、ドルベースでは3年以上高値を更新していません。
日経平均は中身も変わっているので単純比較できるものではありませんが…。
とはいえ、日本で暮らしている以上、日常生活は円でしか決済できませんし、税金も円でしか払えないので、円ベースで利益が増えること、収入が増えること自体は良いことです。
しかし、それとは別に、給与、株価、金、不動産などの価格上昇は、円の価格下落によるものなのか、基軸通貨のドルベースでも上がっているのかは、目先の利益とは別軸で見るくせをつけておくのが良いと思います。
為替は投機と政治的要因であっけないほど簡単に無情に動くので。