Coupang(クーパン)の決算分析。21年度12月期第2四半期。 Coupang, Inc. (NYSE: CPNG). Financial results for its second quarter ended June 30, 2021.
今回はクーパンの決算分析です。
21年12月期第2四半期までの結果です。
■1 なぜ、クーパンを取り上げたか?
ソフトバンク・ビジョン・ファンドにおいて、
クーパンは主要投資先の一角です。
ソフトバンクグループ マニアの私としては、
その業績を左右する、クーパンの業績を理解したいと思いました。
孫さんの高い志と、
それを実現する為の器であるソフトバンクグループが、
どういった企業に成長して行くか、
継続的に観察しています。
クーパンは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド 1において、
最大の時価となる上場企業です。
■2 クーパンの概要
・設立は2010年
・上場は2021年3月
・メイン事業はネットショッピング
・特色は、「ロケット配送」と呼ばれる、物流網
50万個以上の独自のアイテムを最速15分 ~ 翌日までの間に、
配送すると言われています。
出典:Wikipedia
「韓国版Amazon」という表現が適切だと思います。
実際に、クーパンのネットショッピングのページを、
閲覧するのが、
最もイメージしやすいと思います。
ちにみに、クーパンの規模感をイメージしやすくするために、
楽天の国内EC事業と
Zホールディングスのコマース事業、
クーパンの売上合計を、
21年4~6月の3ヶ月間で、
比較してみました。
各社コマースの定義がズレているので、
正確な比較ではないですが、
2倍以上の差を付けており、
クーパンがいかに巨大な売上を上げているかが、
分かると思います。
■3 ビジネスモデルの特徴
◎1 ロケット配送
都心部に小規模物流センター網を張り巡らせて、
日用品が15分以内に届く様になっている様です。
自社専用の物流網を抱えていることで、
迅速な人の手配と豊富な品ぞろえを、
可能にしている様です。
韓国の通販大手クーパン(Coupang)の「路地裏ロケット配送」にコンビニ業界が、動揺している。都心の小規模物流センターである「マイクロフルフィルメントセンター(MFC)」でコンビニやスーパーマーケットに代わって、物品を配達するクーパンイーツ・マートは、7月初めのサービス開始と同時に、業界に旋風を起こしている。15分以内に配送という初めての「クイックコマース」という点だけでなく、1000万点の物品調達能力と強大な資金力を確保した「クーパン発路地裏商圏攻勢」という点で、業界が感じる危機感は以前とは次元が違う。
◎2 製品レビューシステムで、レビューが増える程に信頼感が増す
「韓国版Amazon」ということで、
やはりクーパンでも、
Amazonに似た、ビジネスモデル上の特徴が見受けられました。
5段階の製品レビューシステムを導入しており、
レビューが増える程に、
クーパン自身や製品への、
信頼感が増すようになっています。
◎3 クーパン マーケットプレイス。出品業者が増える程に、利便性が増す
ここもAmazonと同じで、
マーケットプレイス事業を行っている様です。
マーケットプレイス事業のクーパンのメリットは、
・他社の出品により、品揃えを増やす事ができること
・出品業者同士の競争で価格競争力が増すこと
といった所です。
出品業者としてのメリットは、
・クーパンのロケット配送網を利用できること
・多数のユーザーにアクセスできること
となります。
上記①~③のビジネスモデル上の特徴はどれも、
拡大すればする程、強くなる性質を持っています。
物流網も製品レビューも出品業者も、
数が増す程に、競争優位性が増すので、
クーパン一人勝ちの状況を作りやすくなります。
■4 クーパンの決算分析
◎1 損益計算書
四半期ごとの、
売上と純利益、純利益率の推移です。
売上は順調に増加しています。
直近では3ヶ月間で、40億ドル超えです。
この勢いが今後続くとすると、
年間売上160億ドル規模になるでしょう。
日本円に直すと、1ドル110円として、
約1兆7千億円となり、
いかに巨大かが分かります。
しかしながら、利益が追いついていません。
こちらの要因を考えてみます。
売上に対するEBITDAマージンが赤のラインになります。
EBITDAは設備投資等に掛かってくる原価償却費を、
足し戻した利益なので、
これがマイナスということは、
設備投資が関係なく、利益が出ていないということです。
そのため、クーパンは、
販売の為に、多額の広告宣伝費や人件費が、
必要とされるのではないかと推測しました。
また、粗利率の低さからも、
価格勝負に出ていることが見て取れます。
クーパンの決算資料でこれ以上詳しい、
説明が無いのが、残念です。
今後の設備投資計画も気になる所です。
◎2 貸借対照表
・自己資本比率
クーパンの自己資本比率を算出する為に、
データを集めていたのですが、
データ参照元の20年度以前のデータが、
おかしなデータだったので、
省いています。
直近ではIPOによる資金調達で、
健全な水準を確保しています。
ですが、クーパンは赤字決算の企業なので、
純資産が削られて、
いずれ30%を下回ってしまうでしょう。
・21年6月末の貸借対照表の内訳
貸借対照表の中身をもう1段階深堀りしてみます。
21年6月末の状態です。
1年以内に現金化できる事が見込まれる流動資産が、
長期負債も含んだ、負債の総額を上回っています。
このことから、
純資産が減っても、負債は継続して返済可能と判断しました。
・流動比率
更に細かく、流動比率の推移です。
こちらは、直近では、
一般的な健全性の目安と言われている、
120%を超える水準です。
1年以内の支払い義務に対する準備も、
できていることが分かりました。
◎3 キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フロー計算書で、純粋な現金収支を見てみます。
・現金残高
IPOのお陰で、設備投資等の投資活動に必要なお金である、
投資キャッシュフローの何倍もの資金調達ができた、
ことが分かります。
・現金残高の予測
現金残高の予測です。
大雑把ですが、仮に21年上期のフリーキャッシュフローが、
4年続いても、
資金ショートは発生しないということになります。
もちろん、
その間に、金利支払いや新たな借入も発生するはずなので、
あくまでも参考程度です。
■5 クーパンのKPI Active Customers と Total Net Revenues per Active Customer
クーパンのKPIに関してです。
この画像はクーパンの決算資料の2ページ目の抜粋です。
「Active Customers 」と「Total Net Revenues per Active Customer」ですが、
目立つ部分に、記載されていたので、
クーパン自身も、KPIとして設定しているのだと思います。
グラフの青が購入者数で、
3ヶ月のうちに15百万人が利用しているとの事です。
韓国の人口が2020年時点で5178万人です。
人口のおよそ3割が使用したことになります。
国別のユーザー数も開示してくれると、
より詳細な分析が可能になります。
赤が一人あたり売上です。
3ヶ月間に、一人あたりで購入した金額も、
増加しているということで、
クーパンが人々の生活に定着しつつある姿が、
思い浮かびます。
■6 クーパンまとめ
◎1 ビジネスモデル
強いです。
・ロケット配送
・レビューシステム
・マーケットプレイス
どれをとっても、規模が大きい所がより優位になりやすい性質があり、
一人勝ちの状況を生みやすいです。
◎2 売上の伸びは堅調
・マクロ経済の追い風
もちろん、コロナ禍の恩恵もありますが、
根本的にEC化が進む市場の恩恵を、受けています。
・個別要因
潤沢なリスクマネーを存分に活かした、
広告宣伝費や人件費、物流施設への大規模な投資により、
顧客満足度を向上させられ続けています。
◎3 赤字体質
現在は赤字体質ですが、
今後の収益化施策が楽しみです。
現代のECの巨人達も、
当初はECだけで稼いでいましたが、
現在は、金融やクラウド、動画サービスなどにも展開し、
安定した利益と売上成長を両立しています。
今後の発展の進捗に、
投資家としては興味をそそられます。
◎4 財務健全性
財務健全性に関しては、
IPOで調達した潤沢な資金があります。
経営陣も優秀だと思いますので、
少なくとも1,2年は問題ないと思います。
手元資金と相談しながら、
設備投資や広告宣伝費を、
いかに有効活用するのかが、気になるため、
利益率の推移を今後も注視したいです。
以上が、クーパンの決算分析でした。
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