生みの苦しみを知る全てのクリエイターたちへ「ボレロ 永遠の旋律」

1928年<狂乱の時代>のパリ。深刻なスランプに苦しむモーリス・ラヴェルは、ダンサーのイダ・ルビンシュタインからバレエの音楽を依頼されたが、一音もかけずにいた。失った閃きを追い求めるかのように、過ぎ去った人生のページをめくる。戦争の痛み、叶わない美しい愛、最愛の母との別れ。引き裂かれた魂に深く潜り、すべてを注ぎ込んで傑作「ボレロ」を作り上げるが…

ボレロパンフレットより

15分に一度、世界中の誰かが演奏しているという「ボレロ」。映画パンフレットによると、作曲したラヴェルが最も成功し最も憎んだ曲だったそう。

私もちょっとしたクリエイターである。演技をしたり、TV番組やライブ配信の台本を書いたり、動画を作ったり、こうやって文章を書いたり…。バレエもやってたりする(ボレロだけに)。

と言っても、そんな大したことはできない。私は凡人だからね。

やってみたらイメージと全然違ったり、笑っちゃうほどダサかったり、イメージすら浮かばなくてどうしようってなったり。その度に「才能ない」とか「向いてない」とか「もうやりたくない」と思えて苦しくなる。

なのに懲りもせずまた何かを生み出そうと奮闘してしまう私は変な人なのか?だとすれば、天才作曲家であるラヴェルも割と変な人かも。いや、結構変な人かも。

天才と呼ばれる人であっても、同じように苦しんで辛い経験をして、傑作が生まれたにも関わらず心から喜べない。この映画はラヴェルの栄光ではなく人間臭さがとても美しく描かれている。

もしもラヴェルが友達だとして、過去に行って会うことができたなら、こう言ってあげたい。

「あんたの曲、その後100年以上世界中の人に愛されるんだよ。ちょっとは喜びなよ!」

ってね。でも本人は「ムリー」って言いそう。

まあ、それはさておき。

閃きが乏しい私。才能のなさに嘆いている私。自己肯定感が落ちまくっている私。そんな私に「みんな同じだよ」って言ってくれているような作品でした。ラストシーンは感動です。


ボレロ 永遠の旋律
監督:アンヌ・フォンティーヌ
出演:ラファエル・ペルソナ、ドリヤ・ティリエ
フランス


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