【思い出語り⑨】夜明け前のスプートニク
ダントツ一番好きなタイトルです。
私の中で、とてもとても大事なお話。
脚本の内容に触れるので、まだの方はこちらからどうぞ↓
5年くらい前かな。
宇宙人が地球に落ちてくるお話が書きたくて考えたタイトルで、ず~っと温めていました。
スプートニクは、スプートニク計画からとっています。ものすごく簡単に言うと、ロケットと同義のつもりです。世界初の人工衛星の名前。
夜明け前、"彼女"を乗せたロケットが飛び立つ姿が、まるでひとつの星のように見えた。そんなタイトル。
誰からも指摘されなかったけれど、星の王子様をモチーフにしたお話です。
自分の中ではメテオラインも星の王子様モチーフ入っているので、星の王子様のことを考えながらお話を書いたのはこれが2回目です。一番好きな童話なのでゆるしてください。多分今後も星の王子様のことを考えながらお話を書くことがあると思う。
初稿では、ユーマが女の子、主人公が男の子で、ボーイミーツガールの様相を呈していました。
主人公の男の子は灰色の青春時代を過ごした大人で、ユーマに出会ったことを切っ掛けに青春時代をやり直す・・・そんなお話でした。
最終的に、初稿からはかけ離れたお話になりましたが、次回作「アオハルにシャッター」で活かされた形になりますので、お楽しみに。
宇宙人、喫茶店、紅茶と、私の好きなモチーフをこれでもかと詰め込みました。
それだけに、かなり思い入れの深い脚本です。
普段から喫茶店に足しげく通っている私ですが、喫茶店の居心地の良さが好きで。行きつけの喫茶店は、食べ物のメニューがたくさんあって、コーヒーや紅茶もたくさんアレンジがあって。もちろんお店で手作りしているケーキも置いていて。お店の中は落ち着いた雰囲気で、店員さんは優しくて。私のために美味しいお茶やケーキを出してくれる。食事や飲み物を提供してもらうことって、私にとっては自己肯定感を高める手段の一つでもあるので、喫茶店にはいつも救われています。
居心地がいいことってつまり、それが自分の居場所なんですよ。
居てもいいって認められること。
そこが、自分にとっての帰る場所であるということ。
団長は、劇団AQUAが団員たちの帰ってくる場所でいられるようにこの先も続けていきたいって、いつか言っていたことがあって。
いつかみんな別の道に進むかもしれないし、遠く離れた場所へ行ってしまうかもしれないけれど、帰る場所があると思えば見知らぬ場所も少しは怖くないかなって。
だからユーマは帰るんです。
喫茶ターミナルがあって、店長が居て、なにより有砂が居るから、地球を遠く離れたとしても、帰る場所があると思えば、今までよりも一歩踏み出すことができるから。
ユーマ 「終わらないよ。なにも終わらない。遠くに居たって、またいつでも帰りたいときには帰ってくることができる。そんなふうに、帰る場所は、きっと、いつまでも、変わらないでいてくれる場所なんだと思うから。」
有砂 「うん。…そうだね。」
ユーマ 「だから、大丈夫だよ。」
有砂役を演じたひーちゃんは、これがAQUA初舞台でした。有砂はどっちかというと干物女みたいなイメージで書いていたんですが、ひーちゃんが演じるとかわいらしくなっていて、これが演じる人による解釈の違いなんだなと興味深く思ったものです。
脚本を提出したときに、有砂はなんで砂が有るって書くんですかって聞かれたんだけど、ひとつは、ひーちゃんのビジュアルから私があなたに名前をつけるなら「ありさ」だったから。ふたつめは、砂はどんな土地にも有る(存在する)ことができるイメージだから。転じて、風に乗ってどこへでも行けるように、それがたとえ宇宙でも、と思ってつけた名前でした。私にとっては希望の名前。砂は砂屑なんかじゃないから。ある種、星のようだとさえ思う。
まだ言葉がまとまらないから、いつかまた追記するかもしれないけれど、ひとまずこれで一旦これまでの脚本公開と付随する思い出話はおしまいになります。
読んでくれてありがとう。
ここまで書いてきた脚本のなかで、最も私のたいせつな気持ちを言葉に出した、次の公演「アオハルにシャッター」を、ぜひ観に来てください。ね。