メルマガを愛しく思った話 CINRAの【Editor's Notes】
メールマガジンというものが嫌いだ。
何かしらのサイトに登録をし、さらにそのサイトで何かしらの動きをすると頼んでもいないのに登録されてしまうメールマガジン。
配信停止を押してすぐ止まるものはまだ愛せる。「開きもしないでごめんな🙏」と供養の気持ちが湧き上がらないこともない。
だが配信停止を押すと、まずマイページにログインしろや、というサイトも多い。そもそもログイン情報を覚えているほど活用しているサイトのメルマガは配信停止をしないのだから、このあたりは潔くユーザーフレンドリーになっていただきたいものだ。
私の元には今日も開かずにゴミ箱へ流れていくメルマガが大量に配信される。
見慣れぬロゴから届いた不思議なメールマガジン
ミーハーでカルチャー好き、来世にPOPEYEのガールフレンド特集に載る人生に夢を見ながら、現実のヒエラルキーはうだつの上がらないその他大勢である私は、長らくCINRAというカルチャーサイトにお世話になっている。
少し前からロゴが変わり、より柔らかで流動的な、まさに時代と共に移りゆくカルチャー感を醸し出しているように見える。
お世話になっているとはいえ、利用頻度はというとSNSで流れてきた情報の中に気になるものがあればタップして流し読みする程度のものだ。
メルマガに至っては開くことすらほとんどなかった。開いたとて、リンクをタップしその先にある情報まで泳いでいくのは難儀であった。便利なものは人を怠惰にしてしまう。
そんな中、ふと不思議なメルマガに目と手が止まった。
情報とリンクだけの温度感のない他のメルマガとは全く何もかもが違う。メールを開いたその画面のまま、スクロールするだけで編集者さんたちのテキストを読むことができる。
どこぞに白々しくリンクが仕込まれているわけでもなく、届けられた私がすることは、ただ読むだけ。
さすが皆さん文章がうまく、1つの記事を読むのに2〜3スクロールで済むので、ちょっと集中力が切れた合間にふとスマホに手が伸びる、そんなときのテンションにとてもマッチする。
なんの特にもならないであろうメールマガジンに、わたしはとても楽しませてもらっている。
それはまるでお茶菓子のように☕️
そもそも必要に迫られたもの以外で文章を読む機会なぞ、恥ずかしながら皆無に等しい。
学生時代はまあまあな読書家だと自覚する程度には小説やエッセイを読み漁っていたが、今は断然漫画ばかり読んでいるし、動画コンテンツの方がエネルギーも時間もかからない。
本を読むのは仕事で必要なときと、電車移動や何かしらで読書スイッチが入ったときだけだ。
これは非常にまずいことである、とは思っている。
行間を読み取る力、文章から景色をイメージする想像力、知らなかった言い回しや真似したい洒脱な会話。
文章を読むことは、学校のお勉強では身につけにくい、人間味的な意味での学習にとても有効的だった。
大人になるにつれ、ただでさえ頭でっかちになりつつあるのに、その学習機会すら自ら放棄しているのだから、そりゃあ危機感はある。でもエネルギーと時間を節約したくて、手を出すことが中々に億劫なのだ。
いざ何かを読もうと思っても、いま自分がなにを読みたいのかを分析し、本屋やネットで数ある作品の海の中から一粒の貝殻を見つけるという作業は、やはり骨が折れる。
【Editor's Notes】と題されたこのメールマガジンは、節約人間となってしまった私に定期的に届くお茶菓子のような存在だ。
自ら考えるでも探すでもなく、定期的に読みやすく短い、しかしきちんとしたテキストが届く。SNSで流れるような息を吐いただけのようなテキストではなく、少し丁寧に書かれた日記のような優しいテキスト。
しかも何かしら気になるコンテンツを運んでくれる。12/21に届いたメルマガはスケボーの話だった。
スケートボードなんて街中で見掛けたことがある程度で、自ら知ろうとは思わなかったであろうコンテンツだ🛹
ドロップインという技があることを知り、彼らの中では暗黙の了解のような一体感が生まれることを知った。
同じメルマガで届いた置き配の話も好きだ。
わたしは配達員さんのことをサンタのように思っている🎅
1人で家で仕事をしており、来客が苦手な私にとって、配達員さんは唯一外の空気を持ってきてくれる人だ。
そして入荷待ちだったお洋服や、実家からの現物支給品(私はMamazon定期便と呼んでいる)、その日のご飯なんかを運んでくれる。
いつだって待ち侘びて、お届け予定日はウキウキしている。
でもそれを伝える術はなかなかにないもので、メルマガで届いたこのテキストには深く共感し、そしてたくさんの配達員さんに届いてほしいと思った。
こういった「読む、知る、共感する」という脳のストレッチ的な、ちょっとしたお茶菓子的なものを届けてくれる存在、それがCINRAのメルマガだ。
なんならこんなふうに、自分もちょっと文章を書こうかな、という気にもさせてくれるのだから、結構ほんとに感謝している。
新しく、そして優しい情報発信の仕方📖
いいところは、自分が何もしなくても定期的に届けてくれるところ。それから、流入を目的としたリンクや商品紹介、おすすめなどのリコメンドは一切なく、ただその画面をスクロールするだけでストレスなくテキストを読むことができるところ。
なんて親切につくられたメルマガなんだろう。メルマガを受け取る人のことをきちんと考えて作られた、シンプルゆえに優しい設計だ。
いつ登録したかも覚えていない、今まで3割も開いていなかったメルマガを、気付けば心待ちにしている自分がいて、そして忘れた頃に届けられる。
内容がニュースではなくて、書いた編集者さんの私的な内容であることも心地良い。まるでコロナで不足しがちな他者とのコミュニケーションのようで。