夏は他責に身を任せ 【ロッキン2024 8月3日】
日焼け止め、サコッシュ、ハンディファン、モバイルバッテリー、
ウェットティッシュ、ゴミ袋、凍らせたペットボトルにスポーツタオル。
五分袖のシャツにハーフパンツ、履きつぶしたニューバランスを身につけて、今回はこのフェスシーズンに合わせて初めて買ったバケットハットを装備。
昨年から行き始めたフェスも今回で5回目。
だいぶ慣れが出てきたとは思うのだけど、アウトドアな趣味との縁がこれ以外に全くと言っていいほど無い私にはやっぱり真夏の太陽は眩しすぎて、つくづく外気への耐性の無さを思い知らされる。
でもだからこそ、いつまで経っても不慣れな手つきでするパッキングはより一層ワクワクを増幅してくれて、前日早寝しなければと思うのに予習用プレイリストを流しながら行う準備が全く捗らず、結局日をまたいでしまう自分がもはや愛おしい。
初めて複数日参戦するはずだった今年のロッキンも資金不足や自分の不手際など色々あって結局8月3日の1日だけにとどまってしまったのだけれど、音楽好きを一気に加速させてくれたこの蘇我の地にまた来れただけでも感謝しながら、一年で一番楽しみと言っても過言では無いこのイベントのレポートを今度こそ外に出してさらに自分の糧にしてやろう。
と柄にもなく決意表明から入ってしまったのも夏のせいにして、印象深かった場面に絞って当日を振り返り!
(櫻坂パートだけ異様に文量が多いのはご愛嬌。)
SHISHAMO
この日一番のお目当て(櫻坂)が昨年と違ってこの日のトップバッターではないことを確認しつつ、早めの会場入りで予想以上に持て余した時間で呑気にフェス飯を胃に入れていたら『君と夏フェス』を聴き逃してしまった。やらかした。
気を取り直しつつも昨年の反省を活かし、序盤から体力を消耗しないようGLASS STAGE後方でゆるく体を揺らし始める。
大トリのクリープに気を取られすぎて予習があまり追いついてはいなかったが、なぜかリリース直後に耳に入ってやたら聞いていた『最高速度』。スリーピースバンドからしか得られないメンバー1人1人の出力の高さを目にして、久々の早起きでまだ低空飛行していたテンションがグッと上がるのを感じた。SHISHAMOってただでさえボーカルの言葉が聞き取りやすくて素晴らしいのにギターが上手いかっこいい。この夏はギターも頑張ってみようか。
ラストソングは皆が知る『明日も』。この日のトップバッターが歌う、毎日を懸命に生きる中での「僕のヒーロー」は、会場に集った全員にそれぞれ目当てにするアーティストを容易に想像させて、そんな"ヒーローに会いに来た週末"を再認識させてくれた。
2024年のロッキンが日常をも彩る最高の夏フェスになることを確信する、この日だけに限らない、五日間の素晴らしい幕開け。
1. 君と夏フェス
2. 夏恋注意報
3. いっそこの心臓の音が君に聞こえたら
4. ハッピーエンド
5. 最高速度
6. 恋じゃなかったら
7. 明日も
櫻坂46
言わずもがなこの日の大本命。
最近趣味で「フェス好き」を公言するようになったものの、春夏年末と毎シーズンのフェスを私の生活に定着させたのはまぎれもなく櫻坂であり、その引き金を引いたのはちょうど一年前に前から3列目という至近距離で目にしてしまった櫻坂46であり、その名の通り「ロック」を名に打っているフェスでありながらこの日もオタ活の延長であることは認めざるを得ない。
SHISHAMOを見終えて急いで前方エリアへと向かい、なんとかOvertureの大合唱に加勢。太陽が真上にある時間帯ってのもあって熱気が半端じゃ無い。
ステージ脇から出てきたのは黒いTシャツに『Buddies』MVを彷彿とさせる白いオーバーオールを身に纏ったメンバーたち。ジャイガのときとはまた違ったこのフェス衣装、彩度の高い綺麗な青空に映えてめちゃくちゃ良い。Remiさんには毎度頭が上がらない。
バカみたいな暑さの中、一曲目『承認欲求』、二曲目に『何歳の頃に戻りたいのか』と、LOTUS STAGEのボルテージを一気に引き上げる最高のスタートダッシュ。いくもどのイントロがかかると同時に起こる歓声に掻き消されそうになりながらも、珍しく『隙間風よ』MVのような中性的なメイクを施した山﨑天が放つ魂を削るような煽りがまた痺れた。この系統の天ちゃんマジで好き。
水分補給を促すMCを挟んで披露されたのは『五月雨よ』。真夏の野外での選曲として少し不意を食らったが、この後の流れを鑑みても前後とのギャップを作りながら観客に安らぎを与えてくれる、夏フェスには希少でとてもいい時間だった。ゆるやかに、でもしっかりと伝えられる歌がじわじわと沁みてきて、ラスサビを迎えてメンバーが横一列になると同時に心の中で最高潮に達するあの感覚には毎度浄化されたような気持ちになる。
天ちゃんはもちろん、現役高校生とは思えないほど慈愛に満ちた向井の表情がほんとよかった。
早めにMCを消化して入ったラストスパート。森田の両隣にいのまりを据えた一期二期のみの安定感抜群の『Nobody's fault』を終え、繰り出された村井優センターの『Dead end』は、メンバーも観客も"全員で"アガるという点で夏フェスという現場にぴったりだった。たのしすぎた。
盛り上げ定番曲のデドエンを終えて、その勢いのままに次はそのまま三期生で夏近か?それとも交代で二期生が出てきてドローンか?とワクワクして待っていたらステージ上に揃ったのは9thシングル表題メンバー。
念願の、待望の、待ちに待った、『もう一曲 欲しいのかい?』。
興奮絶叫無我夢中。
村山谷口村井の三人が下手側に乗り出す場面だけ観測しつつ、「瞼焼き付けろ」と言われながらも楽しむことに夢中であまり記憶がない。
「Ride on la la la la ta ta」の合唱、Cメロの「Get down da da da la ta ta」でのクラップくらいはその場のノリで合わせながら、初披露ということであらかた皆が各々のやり方で「態度で示す」ことをしていたのがたまらなかった。たまらなかった。
唯一しっかり記憶に残っているのが曲終盤、ラスサビくらいからメンバーが幅広く横一列になって自由に踊るシーン。上手側にいた私は、スタオバアウトロのように自由に音楽に身を任せる藤吉、半ば挑発的な目で心の底から楽しそうに舞う村山、そしてノリ方が自分の中で定まっていないのかこちらのはしゃぎ方が面白かったのか半笑いで少々ぎこちなく体を揺らす中嶋を観測。同行人にあとから聞いた話だと下手側では森田がヘドバンしていたとか。ステージのどこを見ても自由に音楽を楽しもうとする姿勢が伝わってきて、アイドルを応援していてこんな光景が見られると思わなかった。最高。
自分をワンマンのアリーナから外に出してフェスという新しい世界に誘ってくれたこの蘇我の地で『もう一曲欲しいのかい?』を初披露してくれたということ、そして(先に書いてしまうが)その「もう一曲」に『Start over!』を選択してくれたという事実だけで私はもうこの夏を強く生きていけると思った。
よく考えてみればドローンもマンホールも初披露はJフェスであり、ジャイガでの披露さえも控えてここまで懐に隠しておいたことには、欅坂時代から出続けているJフェスへの強い思いを感じざるを得ない。
たった一曲だけで長々と書いてしまったが、、
そう、その後の「もう一曲」に選ばれたのは、この日のラストソング(だと思うだろ、意味的に"あと一曲"とも言ってるんだから)という意味合いでも最新シングルかと思いきや、もうしばらく披露されないと思っていた『Start over!』だった。
フリーダンスを終えてメンバーがはけたのちに流れ始めたのはどこか聞き覚えのあるビート。ざわつき始めると同時に少しずつジャンプをする人が増えてゆき、スタオバがくると勘づいた時には全身鳥肌が立っていた。ジャンプし続けることによる疲労などこのときは全く気にしないで、これから見せられるものを"瞼に焼き付ける"ことに夢中になっていた。じゃあこれでよかったんだ。
スタオバを無事終えてそのままアウトロをバックに挨拶かと思いきや、一部メンバーが入れ替わって正真正銘ラスト『自暴自得』。「二曲やるのかよ」と一人ほくそえみながら、最後まで出し切った。揺るぎない安定感のある山下の音ハメワックダンスをこの距離で見ることができて大満足。
以上、2,000字を超えるロッキン櫻坂を受けての感想。
櫻坂46がもっとロック界隈で受け入れられていきますように。
リハ(メンバー登場なし). 摩擦係数
Overture
1. 承認欲求
2. 何歳の頃に戻りたいのか
MC.1
3. 五月雨よ
MC.2
4. Nobody's fault
5. Dead end(三期生)
6. もう一曲 欲しいのかい?
7. Start over!
8. 自業自得
Tele
ポロシャツにスラックスのスタイルで登場した谷口喜多朗は14時台という一日で一番熱い時間帯にもかかわらずどこか涼しげ。音の確認だけでほとんど歌わず、一番だけなど簡易的に行われるリハーサルから合唱が起こるHILSIDE STAGEに喜多朗も冒頭から「素晴らしい!」と観客を讃える。半ば一息つく休憩気分で訪れた自分をいい意味で裏切ってくれる盛り上がり。
そのアーティスト名やヴィジュアルからは想像もつかないほどに力強く、台風の目のように客を次々巻き込んで一体感を作るその人間力はもう笑みがこぼれるほどで、終始最高にかっこよかった。
二ヶ月前の武道館ワンマンは閉じられた空間だからこそ孤独で文学的な意味合いが強かった一方で、野外の開放的な空間でのTeleは初々しくもどこまでも広がっていきそうな圧倒的なスケールが感じられてめちゃくちゃ爽快だった。これからもその名前をタイムテーブルに見つけたら真っ先に行くだろう。Teleのこれからもほんと楽しみ。
リハ1. カルト
リハ2. バースデイ
リハ3. 鯨の子
1. ことほぎ
2. ロックスター
3. カルト
4. 金星
5. 私小説
6. バースデイ
7. 花瓶
クリープハイプ
昨年のラブシャで初めてクリープハイプのライブを見て、尾崎のもてはやされる感じなど、嫌いなわけでもないけど特段好きにもなれず、でも曲は良いから、今回も序盤はなんとなく一歩引いた感じで見ていた。
クリープハイプ、ロッキン初参加から12年にして初の大トリらしく、その嬉しさが尾崎の顔や言葉にも表れているようで、観客とのコミュニケーションでなおさら見える人間性にどうも惹かれてしまう自分がいる。
裏で鳴るFRUITS GIPPERのポップなメロディが曲の合間に聞こえる状況があまりにもシュールで客もかすかに笑う中、それをMCで見事に取り込んで「わたしの一番可愛いところを見せてあげる」と言った挙句、手でハートを作る尾崎。
「夏のせいにしたらいい それでもダメなら君のせいにしてもいい」の『ラブホテル』から『オレンジ』、『ナイトオンザプラネット』を経て歌われたラスト二曲はその大トリに至るまでの過程みたいなものを勝手に想像させて、自分のミーハー気質に身を任せて楽しみながらもなんだか心にくるものがあった。良かった。ほんと良かった。
自分がライブ音楽に求めているものとはどうしてもずれを感じてしまうから、アーティスト単位で丸ごと愛せるかというとやっぱりちょっと怪しくて、馬鹿みたいに真面目な性格がフェスという一大イベントでも作用してしまって『HE IS MINE』で合唱する恒例のセリフを全力で叫べたかというとそれも怪しいのだけれども、やっぱり、生で見てしまうとなおさら、クリープハイプというバンドが、尾崎世界観という人間がどうも嫌いになれないし、多分自分にはときにこういう音楽も必要なのだと確信した。
実際この一週間でアーティストとして多分一番聴いている。聴いてしまっている。
これからも適度な距離感でどうぞよろしくお願いします。の気持ち。
リハ1. 愛の標識
リハ2. 一生に一度愛してるよ
1. キケンナアソビ
2. 火まつり
3. 身も蓋も無い水槽
4. 社会の窓
5. 社会の窓と同じ構成
6. HE IS MINE
7. ラブホテル
8. オレンジ
9. ナイトオンザプラネット
10. イト
11. 栞
DJ 和
「ディージェーなぎ」
そう勝手に呼ぶノリは、坂道オタクな僕らの内輪で一年前から変わらず健在。
成人にもなってラジオ体操を愚直にこなすのも、未だ振りがさっぱりわからないジャンボリミッキーを恥ずかしげもなく、いやそれはウソ、その恥ずかしささえも気持ちよくなってしまって見よう見まねで踊り狂うのも、この蘇我の地だけ。
ミーハーでもノリやすい曲を疲れ切った体に一気に注入する30分間はその曲数にも関わらずあまりにあっという間で、安直すぎるけど「音楽っていいな」と思わせてくれるし、おかげで時たま流れる(多分)初見の曲も帰る頃には知れた喜びと、でもどこかで聞いたことがあるような懐かしさが合わさって脳内を反芻していて、プレイリスト入りが確定している。
生で数多の音楽を浴びたのち、佳境を超えてもうネジの外れてしまった皆が人目はばからず体を揺らすこの時間が最高に心地いい。これだからJAPAN JAMもロッキンもやめられないし、おかげでJフェスとはこれからも長い付き合いになりそうだ。
1. ラジオ体操
2. サママ・フェスティバル - Mrs. GREEN APPLE
3. 夏恋センセイション - マカロニえんぴつ
4. 夏の迷惑 - bokula.
5. あいつら全員同窓会 - ずっと真夜中でいいのに。
6. ray - BUMP OF CHICKEN
7. ムーンソング - [Alexandros]
8. 夜の踊り子 - サカナクション
9. 踊り子 - Vaundy
10. 水平線 - back number
11. ズッコケ男道 - SUPER EIGHT
12. ジャンボリミッキー
13. はいよろこんで - こっちのけんと
14. 不革命前夜 - NEE
15. swim - 04 Limited Sazabys
(序盤怪しい)
あとがき
今回は櫻坂の例の曲への期待が凄すぎてボリュームのバランス的にもオタク目線のレポートのようになってしまったが、フェスというイベントは、好きなアーティストのワンマンと比べてそのパフォーマンスや歌唱に対する期待感なんかよりも、開放的な非日常に自分の身を投じて低くなったアーティスト間の垣根を自由に超えて踊る楽しみの方が断然強い。
おかげで毎回参加するたびに新しい発見があって、自分の音楽の受け皿が広くなっていくのを実感する。
その感覚が好きでたまらないし、それを繰り返していくほど多く知れるたくさんのアーティストが違ったアプローチで音楽で満たしてくれるから、もうびっくりするくらい生きる力が湧いてきて前に進んでゆける。
「今好きで仕方がないアーティストも、これからライブを知るアーティストも、生きていけるのはぜんぶ、フェスで音楽を届けてくれる君たちのせいなんだよ!」と感謝のような嬉しい叫びを心の中にしまいながら、与えてもらったものを糧に次のフェスまで精一杯生きる。
(星野源を野外で全身で浴びるまでは少なくとも死ねない。)