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リバランス - 資産運用サービス ラップとシステム ⑤

初めに

 ラップに関する4回目の投稿(前回)ではポートフォリオの乖離検知について記載しました。今回はポートフォリオのリバランスについて記載したいと思います。ポートフォリオのリバランスですから、乖離検知同様ポートフォリオ管理の一部と理解してください。

リバランスって何?

 英辞郎では rebalance について、

再びバランスを取る、バランスを取り戻す

と書いてあります。re(再び) + balance(バランス)なので、そのままですね。

 ポートフォリオ管理におけるリバランスとは、ポートフォリオをモデルポートフォリオに極力近づけることをいいます。

リバランスはどんな時に実施するのか?

 ラップサービスでは一般的に、下記のような時にリバランスが実施されます。他にもありますが、代表的なものだけにしておきます。

・ 増額(追加入金)
・ 減額(一部出金)
・ キャッシュ性資産額が報酬徴収予定額に満たない場合
・乖離検知

 新たなに資金が投入されれば、その資金を運用に回す必要があります。減額するには、その減額分のキャッシュ性資産を用意する必要があります。報酬徴収するだけのキャッシュ性資産がなければ、徴収できるだけのキャッシュ性資産を用意する必要があります。
 キャッシュ性資産を増減させる・した場合に売却や買付だけを行うのではなく、モデルポートフォリオに近づけるための売買を行います。もちろん、結果的に買付しか発生しない、売却しか発生しないことはあります。
 乖離検知したので、モデルポートフォリオに近づけるだけでなく、上記のようにキャッシュ性資産の増減時にもリバランスが行われます。

シンプルなリバランス

実測・モデル

 実測ポートフォリオとモデルポートフォリオが上記のような状態になっているとしましょう。
 全ての構成要素がモデルポートフォリオと10%ずれてしまっています。当然、モデルポートフォリオの構成比より多く保有しているものは売却し、少ない保有の要素は買付となります。

 リバランスは以下の2段階で行われます。上記の実測ポートフォリオとモデルポートフォリオの例を用いて、下記に実施してみます。 ​

1) モデルポートフォリオの構成通りの場合に、各構成要素の評価額がどうあるべきかの算出
2) 上記算出値と実測の評価額を比較し、売買額を決定

総資産評価額 = 3百万円 + 4百万円 + 1百万円 + 2百万円
       = 10百万円

各構成要素の目標評価額 = 総資産評価額 x その構成要素のモデルポートフォリオ上の構成比 / 100

実測・モデル評価額付き

 上図の赤枠の部分が、各構成要素の目標評価額の算出値です。
 算出された目標評価額から実測ポートフォリオ上の評価額を引いた値が、正の値の場合は買付、負の値の場合は売却を行います。結果は下記のようになります。

取引内容の決定

キャッシュ性資産を確保する必要がある場合のリバランス

 一部出金や報酬の徴収などのためにキャッシュ性資産を確保しつつリバランスを行う場合でも、それほど大きな差はありません。実測ポートフォリオの総資産評価額から確保すべきキャッシュ性資産額を引いた値を目標総資産額とし、その額にモデルポートフォリオの構成比を掛け合わせて、目標評価額を算出します。その後の、取引内容の決定はシンプルな場合と同じになります。

キャッシュ確保リバ

実際の発注

 最近は組み入れ資産を投資信託に限定したファンドラップがほとんどです。投資信託では、金額指定売買が可能な場合が多く、上記のように決定した取引内容をそのまま利用できるケースがほとんどです。つまり、投信A 1百万円分売却といった発注が可能です。これは、システムを作成する側にとってはすごくありがたいことで、当然システム開発費の抑制が可能となります。
 一方、現物株式の場合では、単元株数単位での株数指定での発注を行う必要があるため、複雑になります。目標評価額を「単元株数に時価を掛けたもの」で割り、整数値に丸めた上で単元株数を掛けて発注数量を決定したりします。丸め方をどうするかなども設計者泣かせの部分です。かなり複雑な話になるため、ここでの言及は避けたいと思います。

売却手取額未達問題

 実は厄介な問題が存在します。売却による受渡額が想定以下となってしまうケースです。買い付ける方は、売却による受渡額を元手に買い付ける訳ですから、想定した受渡額が得られない場合、買付ができなくなってしまいます。その場合には、買付数量を減少させるかリバランスのやり直しをするなどの対処が必要です。設計者の腕の見せ所となる部分です。
 このような問題が発生するのは以下のようなケースです。

・急激な価格下落により特定の商品を全て売却しても当初想定の額に届かない場合
・特定口座開設者で源泉徴収ありの設定になっており、含み益のある銘柄を売却した場合(注: 同日約定日、同一受渡日でそれ以上の損失がある場合は除く)

発注日調整

 売却による受渡額を元手に買付を行う場合、少なくとも売却の受渡日は買付の受渡日以前でなければ、起こしてはならない資金ショートを起こしてしまいます。そのため、予定される売買取引で資金ショートを起こさないよう発注日を調整する必要がでます。この方式についても設計者の腕の見せ所となります。
 また、投資信託の売買申込が当日急遽中止されるようなこともありますし、証券取引所が急遽売買を停止したり、株式だと市場で取引が成立しないこともあります。このような事態にも、適切に後続の発注日を調整する必要が出てきます。
 このあたり、完全自動化できるシステムは少ないと思います。我々が作ったシステムでは、この部分まで完全自動化してあります。

最後に

 リバランス自体の概念はそれほど難しくないです。組み入れ資産ごとに目標とする資産額と現在の資産額の差を埋める取引を行うだけです。ところが、譲渡益税の源泉徴収、相場変動、受渡日数の違いなどシステムを設計し製造する側にとってはいろいろと検討しなければならない部分のある業務です。
 第3回目の記事から、ポートフォリオ管理に関連する内容を記述してきました。ポートフォリオ管理はここで終わらせて、別のことに移ろうかと思っています。知り合いから報酬管理を取り上げて欲しいという話をいただいたので、次回の執筆までに気が変わらなければ、報酬管理を取り上げていこうと思います。

関連ノート

資産運用サービス ラップとシステム①
残高管理 - 資産運用サービス ラップとシステム ②
ポートフォリオ管理 - 資産運用サービス ラップとシステム ③
乖離検知 - 資産運用サービス ラップとシステム ④
リバランス - 資産運用サービス ラップとシステム ⑤(本記事)
報酬(概要) - 資産運用サービス ラップとシステム ⑥
残高報酬- 資産運用サービス ラップとシステム ⑦
成功報酬- 資産運用サービス ラップとシステム ⑧

適宜関連ノートは追加していきます。

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