週刊日記：勘違いバレンタインデー

◆勘違い
　先日、知人を呼び出して軽くおしゃべりすることになった。僕も相手も日中は仕事だったので、落ち合うのは夜という約束で。言ってみればごく平凡なイベントだ。しかし、様々な条件が化学反応を起こして思わぬ状況に陥った。

　順を追って説明していこう。まずは僕と親との関係性。
　僕は実家住みだけれど、両親との関係はとても良好と言えたものじゃない。僕の精神が不安定なこともあり、ここ1年くらいまともに会話をしていない。
　とはいえ同じ家に住んでいるので、互いの動向は手に取るように分かる。僕が無言で外出したとしても、家を出る時の服装、家を出てから帰るまでの時間、帰った時に手荷物を持っているかどうか、などを考えれば、出かけた目的はおおよそ見当がつくだろう。

　まったく意識していなかったけれど、僕が知人と会う約束をしたのは2月14日、つまりバレンタインデーなのだ。こんな日に、それも夜遅い時間に出かけるなんて…きっと親から怪しまれているに違いない。しかも、僕は人と会う前は必ず歯磨きをするし、身だしなみも最低限は整えるので、ただ買い物に行っただけだと思われる可能性は低い。近所のコンビニへ行くために歯磨きはしないからね。

　予期せぬ事は連続するものだ。少し前にネットで靴を購入した。積雪の影響でお届け予定日が後ろ倒しになっていたのだけど、これがたまたま2月14日に届いた。なんという間の悪さ…！

　しかし、これだけならまだいい。最悪、「誰かとデートでもするのかな」程度の勘違いで済むだろう。が、運命の悪戯は止まる所を知らない。僕は思い出してしまった。そして自分を呪った。先日、愚かな行動を取っていた自分を。

　むしゃくしゃしていた僕は、衝動的に全身の毛を処理したのだ。特に意味は無い、というか無かった。のだが、14日の夜に出かける予定ができたことで、この全身除毛が意味を持ってしまう！
　バレンタイン前に全身の毛を処理し、当日の夜に誰かと会う…それってつまり？確かに、そのようにストーリーを組み上げるのが自然なのだろうけど、おいおい勘弁してくれよ。僕が会う相手は男性だし、先日の除毛にもまったく意味はない！
　毛の処理に気づかれていない可能性に賭けたかったけれど、風呂場に強烈な除毛クリーム臭を残してしまったので、多分バレてる。

　これで条件はすべて揃った。「2月14日の夜遅くに人と会う。当日にはおニューの靴も届き、めかしこんで外出。しかも事前に全身の毛を処理している。」
　全部、何もかも偶然なんだ！1つ1つの出来事は関連性が無いのに、列挙するだけで物語を捏造できてしまうミラクル。

　まあ、それもこれも僕の妄想の域を出ない。「『親が勘違いをしているかもしれない』という勘違い」を僕がしているだけ、という事も十分にあり得る。勘違いマトリョーシカだ。クリスマスならともかく、バレンタインでここまで考えるのも自意識過剰っぽいし。
　そもそも、この歳になって何を恥ずかしがっているのだ。中高生じゃあるまいし。法を犯しているわけでもないのだから、堂々とすればいい。と言いたいところだが、いくつになっても親との間には謎の羞恥心が発生するものなのですよ。

◆バレンタイン
　そういえば、バレンタインらしい事は何一つ起こらなかった。誰からもチョコを貰っていないのは勿論だが、「今日はバレンタインだな」と意識したのだから、せめて自分でチョコを買うくらいしても良かったな。知人とカフェに入ったけど、僕はクラムチャウダーとチャイを飲んで終わった。来年こそ、チョコを。