第71話「ワインサービストレーニング」
5週間のCAトレーニングも終盤に入り、残すところ10日余りとなっていた。いつものように8時25分頃に教室に行くと先輩CAのリチャードがワインを並べていた。
「あっそっか。今日はワインサービスの練習とワインテースティングの日だったな」
定刻の8:30になり、インストラクターのミッシェルが本日のトレーニングについて説明を始めた。
「皆、おはよう。今日はお待ちかねのワイントレーニングの日です。皆、ワインは好き?」
「はい。もちろん。」
ミッシェルの問いかけに、トレーニング生達は即座にそう答えた。
「皆、ワインが好きそうなので良かったわ。さて、今日は特別講師を招いているので、今から紹介させてもらいますね。先輩クルーのリチャードです。」
リチャードは大体40前後の白人男性だが、髪の毛の色は黒っぽい。現役スチュワードでソムリエの資格を持ち、年に1回行われる、機内搭載ワインの選考委員としても活躍しているそうだ。
「皆さん、はじめまして。私は乗務歴15年目のリチャードです。今日はワインサービスのトレーニングという事で、ミッシェルと一緒に一日担当させて頂きます。」
シンプルな挨拶がおわると、ホワイトボードに講義の予定を書きだした。
「それでは、本日の内容を始めに説明します。午前中はニュージーランド産のワインで使われているブドウの知識、主にブドウの銘柄についてと北島のギスボンや南島のマルボローと言った有名産地、そして実際に機内でサービスしているワインメーカーとワイナリーについても学んで行きます。」
どうらや、午前中は座学が中心のようだ。
「午後は、実際にエプロンを身に付けワインナイフでコルクを抜く練習をします。それと合わせて、ワインをグラスに注ぐ練習。そして最後にお楽しみのテースティングを行います。」
「リチャード、テースティングの際は、チーズとクラッカーもあるんですか?私はクリーミーなチーズが大好きなんです。」
キャシーが質問した。
「もちろん用意していますよ。今回はキウイエアラインがビジネスクラスでサービスしているカピテイ社のブルーチーズとゴーダ―チーズ、カマンベールにパルメザン、チューダーチーズの5種類に加えて、プルーンやイチジクなどの付け合わせのベリー類。そして、クラッカーも3種類用意しているから、お楽しみに。」
「うわー、嬉しい。とっても楽しい一日になりそうですね。」
・・・。
リチャードの講義はとても愉快で、あっと言う間に午前中が終了した。さすが、現役CAだけあって、フライト中のこぼれ話を含めた講義は面白かった。
今度リチャードが進めていた割安なワインを今度スーパーで買ってみよう。今まで、ワインコンクールでゴールドやシルバー等の賞を取った物ばかり、買っていたけど、案外、安くて無名のワイナリーでお得なワインもあるんだ。
カツヒロはそんな風に講義中、考えていた。
ニュージーランドは羊毛や乳製品、キウイフルーツを代表とするフルーツや野菜の輸出国家として有名な農業国家だが、ワインの生産も非常に盛んだ。
白ワインのシャルドネ、ソヴィニヨンブランク、赤ワインのピノノワール、メルロー、カルベネ・ソヴィニヨン等の評価が高い。それらの人気ワインを海外の人々に知ってもらいたいと、キウイエアラインを通して積極的にプロモーションしている。
2001年9月11日に起きた米国同時多発テロ以前はワインナイフを機内に持ち込む事は全く問題なかった。だから、キウイエアラインでもCAはそれぞれ、自前のワインナイフを持参し、ギャレーや顧客の前で赤や白ワインのカバーを外し、コルクを抜いてサービスをしていました。
※国際線のフライトアテンダントにとって、手早くワインナイフでコルク抜きをする技術は必須のスキルだったから、新人CAトレーニングの中にも組み込まれていた。
元バーテンダーのジェームズやホテルのバンクエットで鍛えられたスーザンとアンディは流石にワインナイフの取り扱いが上手い。
それ以外の9人は、ワインナイフの扱い方から、ワインのグラスへの注ぎ方も練習する必要があるようだ。
午後になり、ワインナイフでワインボトルのトップの部分を上手にはがし、コルクを抜く練習をしました。12人が5本ずつ練習できるよう、60本の練習用ワインが用意されていた。
「さすが、キウイエアラインだね。ボトルを開ける練習用のワインがあるだね。でも、中味はお水だから、ワインを無駄にしなくて済むからね。」とジェーンが言うとおり、ワインボトルの中味は全てお水だった。
「皆、満席の747とかに乗務すれば、一人、最低4-5本はワインを開ける事になるから直ぐに上手になるよ。まあ、エコノミーのギャレー担当になったら、1フライトで10本は開けるだろうから、ワインナイフは自分が使いやすい物を用意すると良いよ。」
リチャードはそうアドバイスしながら、上手にワインナイフを使って、あっという間にコルクを抜きました。
リチャードの説明によると、カバーを取るには、少しギザギザの入ったナイフの方がカバーを切りやすい。キレイに丸くカバーを外した後はコルクの真ん中にスクリューを差し込む。
しっかり奥深くまでスクリューをねじ込んだら、しっかり親指でワインオープナーのひっかけの部分を抑え、テコの原理でワインオープナーの背中の部分を握るようにすると、きれいにコルクが抜ける。
皆、はじめは苦戦していましたが、3本目ぐらいからは結構、スムーズに抜けるようになった。カツヒロも見よう真似ようで練習していたら3本目から上手に抜けるようになった。
その後、行われたテースティングのレッスンは味覚をきちんと知ると言う意味で、非常に薄い紅茶、濃すぎて苦い紅茶、砂糖水、塩水、レモン水、普通の水が用意された。
それらを一口ずつ味見して"甘さ、辛さ、酸っぱさ、苦みと言った味”を確認した。リチャードが言うには良いワインはこれらの味の要素がバランスよく含まれているとの事だ。
お楽しみのテースティングは、実際に機内でサービスしている白、赤、スパークリング、ポートワインと共に、ビジネスクラスでサービスするチーズとクラッカーを味わった。
つづく。
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